モントリオール大学のCharles Cadieuxさんを筆頭とする研究チームは、地球よりも一回り大きく、表面が広大な海に覆われている可能性がある太陽系外惑星を発見したとする研究成果を発表しました。研究チームはこの系外惑星の性質をより詳しく理解するために、「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡による観測に期待を寄せています。
■地球から比較的近い海洋惑星の有力な候補今回発見が報告されたのは、「りゅう座」の方向約100光年先にある赤色矮星「TOI-1452」を公転する系外惑星「TOI-1452 b」です。研究チームによると、TOI-1452 bはいわゆるスーパーアース(質量が地球の数倍程度で岩石質の系外惑星)で、直径は地球の約1.67倍、質量は地球の約4.82倍と推定。公転周期は11.1日で、平衡温度は摂氏約53度と算出されています。
系外惑星TOI-1452 bが公転している赤色矮星TOI-1452は、もう1つの赤色矮星「TIC 420112587」とともに連星をなしています。直径と質量はどちらも太陽の4分の1程度で、約97天文単位(※)の距離を隔てて公転しており、表面温度はTOI-1452が摂氏約2900度、TIC 420112587が摂氏約2800度とされています。
※…1天文単位(au)=約1億5000万km、太陽から地球までの平均距離に由来。97天文単位は太陽から冥王星までの平均距離(約40天文単位)の2.5倍程度。
分析の結果、TOI-1452 bは質量のうち約30パーセントを水が占めている可能性が示されました。これは、木星の衛星ガニメデやカリスト、土星の衛星タイタンやエンケラドゥスといった、太陽系の氷衛星における水の割合と同じくらいだといいます。ちなみに、地球の表面は約70パーセントが海に覆われていますが、地球全体の質量のうち水が占める割合は1パーセント未満とされています。
研究チームによると、TOI-1452 bは惑星の表面で液体の水が維持されるのに適度な距離だけ親星(主星)から離れている(約0.06天文単位)ことから、表面全体が深く広大な海に覆われている「海洋惑星」の可能性があるようです。「TOI-1452 bは、既知の系外惑星のなかでも最も有力な海洋惑星候補の一つです」(Cadieuxさん)
結果を受けて、研究チームはウェッブ宇宙望遠鏡によるTOI-1452 bの観測に期待を寄せています。TOI-1452 bは地球からの距離が約100光年と比較的近く、大気の観測や海洋世界の仮説検証を行うことが期待できるからです。そのうえ、TOI-1452はウェッブ宇宙望遠鏡が1年を通して観測できる領域に位置しているという幸運にも恵まれています。
ウェッブ宇宙望遠鏡に搭載されている近赤外線撮像・スリットレス分光器「NIRISS」の主任研究員を務め、今回の研究にも参加したモントリオール大学のRené Doyon教授は「TOI-1452 bをより良く理解する上で、ウェッブ宇宙望遠鏡による観測は欠かせません。この不思議で素晴らしい世界を観測するために、できる限り早く観測を予約します」とコメントしています。
なお、TOI-1452 bはアメリカ航空宇宙局(NASA)の系外惑星探査衛星「TESS」による観測で最初に検出され、カナダのモンメガンティク天文台にある1.6m望遠鏡や、ハワイのマウナケア山にある「すばる望遠鏡」「カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡(CFHT)」など、地上の望遠鏡による観測を通して確認されました。
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Image Credit: Benoit Gougeon, Université de Montréal. モントリオール大学 - An extrasolar world covered in water? CFHT - An Extrasolar World Covered in Water? Cadieux et al. - TOI-1452 b: SPIRou and TESS Reveal a Super-Earth in a Temperate Orbit Transiting an M4 Dwarf文/松村武宏