こちらは「おおぐま座」の方向10億光年以上先にある2つの渦巻銀河を捉えた画像です。左の銀河は「SDSS J115331.86+360024.2(以下SDSS J115331)」、右の銀河は「LEDA 2073461」と呼ばれています(※)。
複数の銀河が重力を介して相互作用する「相互作用銀河」は、接近時に引き伸ばされて形が大きく歪んだり、衝突を繰り返して最終的に合体したりすると考えられています。SDSS J115331とLEDA 2073461も一見すると互いに引き寄せあって衝突している相互作用銀河のように思えますが、欧州宇宙機関(ESA)によると実際には偶然重なり合って見えているだけで、相互作用しているのではないといいます。
この画像に写っている銀河は、市民参加型の天文学プロジェクト「Galaxy Zoo(ギャラクシー・ズー)」で実施された投票で選ばれた銀河の一部です。10万人以上のボランティアが参加したGalaxy Zooでは、未調査の銀河90万個が分類されました。プロの天文学者が何年も費やした可能性がある作業を、ボランティアたちはわずか175日間で達成したといいます。
ESAによれば、Galaxy Zooプロジェクトでは相互作用銀河をはじめ、3本腕の渦巻銀河や衝突する環状銀河など風変わりで素晴らしいタイプの銀河が幾つも見つかっており、その一部はこれまで研究されたことがなかったといいます。そこで、Galaxy Zooは「ハッブル」宇宙望遠鏡による追加観測の対象を選ぶための投票を2018年に実施。一般市民から約1万8000票が投じられた結果、地球からは重なり合って見えるSDSS J115331とLEDA 2073461をはじめ、合体銀河やリング状構造を持つ銀河など、全部で300個の銀河が観測対象に選ばれました。
冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として、ESAから2022年9月5日付で公開されています。
※…SDSSは掃天観測プロジェクト「スローンデジタルスカイサーベイ(SDSS)」のカタログに、LEDAはリヨン天文台が作成した「リヨン-ムードン銀河系外データベース(Lyon-Meudon Extragalactic Database)」に収録されていることを示しています。
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Source
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, W. Keel ESA/Hubble - Galactic Overlap文/松村武宏