アメリカ航空宇宙局(NASA)は日本時間9月9日未明、打ち上げが延期されている「アルテミス1」ミッションについて、新たな打ち上げ予定日を発表しました。新型ロケット「SLS(スペース・ローンチ・システム)」初号機は、早ければ9月23日に打ち上げられます。
アルテミス1は、NASAが開発したSLSおよび新型有人宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」の無人飛行試験にあたるミッションです。SLS初号機で打ち上げられたオリオンは月周辺を飛行した後、打ち上げから4~6週間ほど後に地球へ帰還する予定です。なお、SLS初号機には日本の「OMOTENASHI」と「EQUULEUS」など10機の小型探査機も相乗りしています。
当初、SLS初号機は米国東部夏時間2022年8月29日(日本時間同日)に打ち上げられる予定でしたが、SLSのコアステージ(第1段)に4基搭載されている液体燃料ロケットエンジン「RS-25」の1基を始動前の目標温度まで冷却できなかったために延期。5日後の米国東部夏時間2022年9月3日(日本時間9月4日)にも打ち上げが試みられたものの、一部の配管で断続的に発生した液体水素漏れを止めることができず、再び延期されていました。
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新たに設定されたアルテミス1ミッションの打ち上げウィンドウは、米国東部夏時間2022年9月23日6時47分(日本時間同日19時47分)からの2時間と、米国東部夏時間2022年9月27日11時37分(日本時間9月28日0時37分)からの70分間です。オリオンの帰還予定日は、9月23日打ち上げの場合は10月18日、9月27日打ち上げの場合は11月5日となります。
なお、追加の打ち上げウィンドウが設定される可能性もあるものの、その場合は国際宇宙ステーション(ISS)へ4名の宇宙飛行士を運ぶ「Crew-5」ミッションの打ち上げ(日本時間10月4日未明に予定)などを考慮した調整が必要とされています。
NASAによると、水素漏れは発射台基部の「テールサービスマストアンビリカル」(TSMU:Tail Service Mast Umbilicals)とコアステージのエンジンセクションをつなぐ「クイックディスコネクト」(Quick Disconnect)と呼ばれるインターフェースで発生しました。TSMUは打ち上げ前のエンジンセクションに推進剤の配管や電気配線を接続するためのもので、液体酸素用と液体水素用の合計2基が並んで設置されています。
現在ケネディ宇宙センターの39B射点では、技術者がクイックディスコネクトを切り離して検査を行うとともに、シール(密封装置)の交換作業が進められています。新たな打ち上げ予定日に先立ち、コアステージとSLS第2段の「ICPS(Interim Cryogenic Propulsion Stage)」へ極低温の推進剤を充填するテストが9月17日以降に実施される予定です。
TSMUからの水素漏れは2022年4月と6月に実施された打ち上げリハーサルでも確認されていて、リハーサル後にSLSと移動式発射台がロケット組立棟(VAB)へ戻された時にクイックディスコネクトのシール交換も行われています。しかし、エンジンの問題で中止・延期された8月29日の打ち上げカウントダウンの際にも、一時クイックディスコネクトからの水素漏れが発生していました。
NASAによれば、発射台上のSLSとオリオンの状態は良好とされています。スペースシャトルの技術が転用されているとはいえ、SLSの打ち上げは今回が初めて。2025年に予定されている53年ぶりの有人月面探査ミッション「アルテミス3」に向けた重要なミッションとして、アルテミス1の成功が期待されています。
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Image Credit: NASA/Chad Siwik NASA - Artemis (NASA Blogs)文/松村武宏