こちらは「おうし座」にある約9000光年以上先の天体「IRAS 05506+2414」です。人の目が捉えられない赤外線の波長(1.1~1.67μm)を使って撮影されたため、画像の色は赤外線の波長に応じて着色されています(青・緑・オレンジ・赤の4色)。
画像を公開した欧州宇宙機関(ESA)によると、IRAS 05506+2414ではガスと塵の厚い雲が若く明るい星を取り囲んでいます。一般的な若い星では、星の周囲にあるガスや塵でできた円盤から流れ込んできた物質の一部が、細いジェットとして双方向に放出されます。しかし、IRAS 05506+2414では様子が異なり、画像の中心から外側へと向かって広い角度で扇状に放出された物質が、最大で秒速350kmの速さで広がっているといいます。
IRAS 05506+2414における爆発的な現象は、若い大質量連星系の崩壊などで引き起こされた可能性があるようです。同様の現象は「オリオン大星雲(M42)」の中心付近にある星雲「オリオンKL」でしか知られていないといい、IRAS 05506+2414が2例目となるかもしれません。ESAによれば、放出された物質の速度を割り出し、地球からIRAS 05506+2414までの距離を測定する上で、「ハッブル」宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」が用いられたとのことです。
冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡のWFC3を使って取得された画像(赤外線のフィルター4種類を使用)をもとに作成されたもので、ESAからハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として2022年9月19日付で公開されています。
関連:ハッブル宇宙望遠鏡が撮影、オリオン大星雲のハービッグ・ハロー天体
Source
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, R. Sahai ESA/Hubble - An Enigmatic Astronomical Explosion Sahai et al. - A Molecular-line Study of the Interstellar Bullet Engine IRAS05506+2414文/松村武宏