地球に似た太陽系外惑星を探す場合、かつて天文学者のカール・セーガンが表現した「ペイル・ブルー・ドット(pale blue dot:淡い青色の点)」を探すよりも、乾燥し、冷たい「ペイル・イエロー・ドット(pale yellow dot:淡い黄色の点)」を探した方が成功する可能性が高いかもしれません。
2022年9月、スペインのグラナダで開催された「Europlanet Science Congress 2022」で発表されたスイスとドイツの研究によると、地球で生命が繁栄するのに役立ってきた海洋と陸地の比率の取れたバランスは非常に珍しい可能性があるとのこと。ちなみに、現在の地球における海洋と陸地の面積比は7:3と言われています。
研究チームは、大陸と水の進化と循環が、地球型系外惑星をどのように形成するかを3つのシナリオにモデル化しました。その結果、惑星は80%の確率でほとんどが陸地に覆われ、19%は主に海洋で覆われた世界であることが示されたといいます。地球のような海洋と陸地の分布を持つ惑星は1%未満に過ぎませんでした。
数値モデルによると、地表の平均気温は5℃程度の差であまり変わりませんが、海洋と陸地の分布が惑星の気候に影響を与えることが示唆されています。
陸地が10%以下で海洋がまさっている世界は、小惑星の衝突により恐竜などが絶滅した寒冷期の後におとずれた、熱帯や亜熱帯のような湿潤かつ温暖な時代の地球に似た気候になる可能性が高いということです。
一方で、海洋が30%以下で陸地がまさっている世界は、より寒く、より乾燥した厳しい気候を特徴としています。全体としては、氷河や氷床が発達した最後の氷河期の地球と同じようなものになるだろうということです。このような惑星を遥か彼方から撮影すれば「ペイル・イエロー・ドット」に見えるかもしれません。
地球上では、火山活動による大陸の成長と、風化による大陸の侵食がほぼバランスよく行われています。光合成を行う生命は、太陽エネルギーを直接受けられる陸上で繁栄し、海は巨大な貯水池として降雨量を増やし、気候の過度な乾燥化を防いでいます。
「地球はプレートテクトニクスという原動力により、地球内部の熱が地震、火山、造山などの地質活動を促進し、大陸の成長をもたらします。大地の侵食は、大気と地球内部との間で水を交換するサイクルの一部をなしています。これらのサイクルの相互作用について数値モデルで解析した結果、現在の地球が例外的な惑星であり、陸塊の均衡が数十億年かけて不安定になる可能性があることがわかりました」と、研究発表した一人であるティルマン・スポーン(Tilman Spohn)氏は語っています。「モデル化された惑星はすべて居住可能であると考えられますが、その動物相や植物相はかなり異なっているかもしれません」
「ペイル・ブルー・ドット」は、カール・セーガンの依頼により、1990年に約60億キロメートルの彼方からボイジャー1号によって撮影された地球の写真を指しています。地球のサイズが1画素にも満たないこの画像は、人間の謙虚さと地球を慈しむ気持ちを象徴的に表現したものとして現在まで受け継がれています。
関連:宇宙に浮かぶ”点”の様な地球。ボイジャーが60億km先から撮影した「ペイル・ブルー・ドット」
Source
Image Credit: Europlanet 2024 RI/T Roger, NASA/JPL-Caltech Phys.org / European Astrobiology Network Association - Earth-like exoplanets unlikely to be another 'pale blue dot' Europlanet Science Congress 2022 - Land/Ocean Surface Diversity on Earth-like (Exo)planets: Implications for Habitability文/吉田哲郎