民間宇宙企業ファイアフライ・エアロスペース(Firefly Aerospace)は、現地時間10月1日、同社にとって2回目の試験飛行「To The Black」ミッションを実施し、衛星の軌道投入に成功しました。同社が打ち上げから軌道投入、衛星分離までの全てに成功したのは、今回が初めてです。
3つのペイロードを搭載した「アルファ(Alpha)」ロケットは、米国太平洋夏時間2022年10月1日0時1分、米国カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地から打ち上げられました。打ち上げから約160秒後、ロケットの第1段と第2段を分離し、2段目のエンジンの噴射を開始しました。その後、約205秒後にフェアリング(衛星を保護するためのカバー)の分離を行いました。同社によると、搭載されていた衛星を予定していた軌道へ投入することに無事成功したということです。打ち上げから約1時間45分後、同社は「100% Mission Success」とツイートし、打ち上げの成功を祝しました。
ファイアフライは「今回のミッションの成功により、米国本土からのわずか2回の打ち上げで軌道へ到達した最初の企業になりました」と述べています。同社のCEOであるビル・ウェイバー(Bill Weber)氏は「商業および政府機関にとって重要な役割を持った、新しい軌道ロケットが利用可能であることを世界に発表しました」とコメント。近年注目が高まる民間宇宙輸送サービス分野への参入を述べ、開発や打ち上げに携わったチームへ感謝の言葉を発表しました。
アルファに搭載された超小型衛星は、高度300km・軌道傾斜角137度の軌道に投入されました。ペイロードの合計は約35kgです。搭載されていたのは教育団体Teachers in Spaceが開発した3Uサイズの超小型衛星「Serenity」、アメリカ航空宇宙局(NASA)のエイムズ研究所が開発した3Uサイズの超小型衛星「TechEdSat-15」、Libre Spaceが開発した超小型衛星放出装置「PicoBus」です。
Serenityは、ミッション中に飛行データを取得し、教育目的で使用します。TechEdSat-15は、パラシュートのようなデバイスを展開・制御する「Exo-Brake」と呼ばれるシステムの実験を行います。Exo-Brakeを搭載した超小型衛星は、地球の大気を利用して衛星の降下速度を落としたり飛行方向を変えたりすることで任意のポイントで大気圏に再突入できる他に、スペースデブリに関する懸念を減らすこともできます。PicoBusは最大8機の「ピコサテライト」(超小型衛星のなかでも特に小さなタイプ)を搭載・放出できる装置で、今回は6機のポケットキューブ(PocketQube、5×5×5cmサイズ)が放出されました。
なお、ファイアフライは次の打ち上げに向けて既に準備を進めており、2023年に6回、2024年に12回以上の打ち上げを目指しているということです。
参考記事:ファイアフライ、初のロケット打ち上げ エンジンに異常が生じ指令破壊(2020.9.6)
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Image credit: Firefly Aerospace, EVERYDAY ASTRONAUT Firefly Aerospace - Firefly Aerospace Successfully Reaches Orbit and Deploys Customer Payloads with its Alpha Rocket Firefly Aerospace - Alpha Flight 2 - To The Black文/出口隼詩