こちらは、アメリカ航空宇宙局(NASA)の木星探査機「Juno(ジュノー)」に搭載されている可視光カメラ「JunoCam(ジュノーカム)」を使って撮影された、木星の衛星エウロパです。地形の特徴をわかりやすくするため、画像の色は強調されています。表面を無数の線条が走るその姿は、クレーターに覆われている地球の月とは印象が大きく異なります。
この画像は、ジュノーによる45回目の木星フライバイ(近接通過)「PJ45」が実施された2022年9月29日に撮影されました。この時、ジュノーは木星だけでなく、エウロパもフライバイして観測を行っています。NASAによると、ジュノーのエウロパ最接近時の高度は352kmでした。エウロパの高度500km以下を探査機が通過したのは史上3回目であり、木星探査機「Galileo(ガリレオ)」が2000年1月3日に高度351km以下を通過して以来、実に22年ぶりのフライバイとなりました。
ジュノーはエウロパに対して毎秒23.6km(毎時約8万5000km)の相対速度で飛行していたため、データを収集できたのは2時間だけだったといいます。時間は限られていましたが、ジュノーはエウロパ表面の高解像度撮影(1ピクセルあたり1km)を行い、表面を覆う氷殻の構造、エウロパの内部、表面の組成、電離層、木星の磁気圏との相互作用についての貴重なデータも集めることができました。ジュノーの主任研究員を務めるサウスウエスト研究所(SwRI)のScott Boltonさんは「(データ分析の)プロセスはまだ始まったばかりですが、ジュノーのエウロパフライバイは大成功でした」とコメントしています。
エウロパの氷殻の下には液体の水をたたえた内部海が存在すると考えられていて、表面から間欠泉として水が噴出したり、表面の物質が内部海へ運ばれたりしている可能性が指摘されています。科学チームは今回ジュノーによって取得されたエウロパの画像を過去のミッションで取得されたものと比較して、表面の特徴が過去20年間でどのように変化したのかを調べる予定です。
また、画像とマイクロ波放射計(MWR)のデータから得られる表面下の氷の構造に関する情報をもとに、表面から比較的浅いところに存在が予想されている貯水槽の探査に役立つデータなど、新たな知見が得られると期待されています。ジュノーが集めたこれらのデータは、2024年の打ち上げ・2030年の木星到着が計画されているNASAの無人探査機「Europa Clipper(エウロパ・クリッパー)」によるエウロパの探査でも役立てられます。
なお、冒頭の画像は惑星科学の博士号を持つフランスの高校教師Thomas Appéréさんが作成しました。JunoCamで取得された画像は一般の人々が利用できるように順次公開されており、これまでにも数多くの市民科学者の手によってさまざまな画像が作成されています。
関連:NASAの探査機ジュノーが撮影した木星のクローズアップ、異なる色調の画像を公開
Source
Image Credit: NASA/SwRI/MSSS/Thomas Appéré NASA/JPL - NASA’s Juno Shares First Image From Flyby of Jupiter’s Moon EuropaSept. 29, 2022 NASA/SwRI - Europa - Perijove 45
文/松村武宏