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役員報酬の定期同額給与で未払経理は認められるか税理士が解説

相談LINE 2020年12月11日 19時0分

支出する役員報酬の金額は、原則として毎月同額でなければ経費にならないとされています。このような、毎月同額の報酬を定期同額給与と言いますが、これに関連して、実務上よく問題になるのは、未払経理は認められるか、ということです。
未払経理とは文字通り、報酬を支給日に現金で支払わず、(将来払うべき)債務として経理することを言います。法人税の取扱いとして、サービスの提供を受ければ、実際にお金を払わなくても未払経理して経費計上が認められるとされていますが、同じような取扱いがこの定期同額給与にも認められるのか、疑義があります。

■疑問が生じる理由

このような疑問が生じるのは、仮に毎月の報酬を未払にして、後日数か月分を一括して支払う場合、現金の支出状況だけを見れば、未払の月はゼロで実際に払った月に数か月分が計上されますので、毎月同額の役員報酬を支払っているとは言えないからです。

役員報酬が経費にならないと大変な事態になりますので、本当に問題ないのかよく質問を受けますが、国税の内規などを見ますと、一時的な資金繰りの問題などでお金を払えないような場合には、未払経理しても定期同額給与になる、とされています。この点、法人税の経費の大前提である債務確定基準から判断することになります。

債務確定基準とは、債務が確定した費用だけを経費にできる、という考え方です。このため、役員報酬に関しても、お金を払えなかった未払の各月において、役員に報酬を支払うべき義務が発生していれば、毎月支給しなければならない役員報酬の金額も確定している訳で、原則として定期同額給与に当たり経費と見ていい、という結論になります。

■その一方で…

このような取扱いが原則なのですが、とある権威ある税務雑誌などを見ると、未払経理にはリスクがあると解説されていました。具体的に申し上げると、未払にした数か月分の役員報酬について、従業員に対する賞与と同じタイミングで支給した会社に対し、その未払の役員報酬は役員賞与のための積立に過ぎず、経費にならないとされた事例があるようです。

理論的には、上記の通り未払であっても原則として定期同額給与の経費性に問題はないはずですが、従業員の賞与の支給時期と同じタイミングで支給するような場合には、国税が「実態は定期同額給与でない」として否認する場合もあるので要注意です。

未払の場合には、顧問税理士の意見も必ず聞くようにしましょう。

■専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在の専門は元国税調査官の税理士として税務調査のピンチヒッターと税務訴訟の補佐。税法に関する著書、講演、取材実績多数。税務調査対策術を無料で公開中。

※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。

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