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金銭債権の譲渡に対する課税関係や実務で多く取り扱うケースを税理士が解説

相談LINE 2021年3月16日 19時0分

貸付金などの金銭債権を譲渡した場合、消費税は課税されません。消費税は資産の譲渡に対して課税されますが、金銭債権の譲渡については非課税とされているからです。しかし、非課税となると消費税の経費の控除について影響を与えますので、全く無視していいという訳ではありません。

■課税売上割合と仕入税額控除

経費に対する消費税は、売上に対する消費税から控除できますが、この控除を「仕入税額控除」といいます。仕入税額控除については、「課税売上割合」という制度の制限を受ける場合があります。

まず、課税売上割合の意義から申し上げますと、消費税が課税される売上(課税売上)と消費税が非課税の売上(非課税売上)の合計額のうちに、課税売上が占める割合を言います。このため、非課税売上が多い会社は、課税売上割合が小さくなります。

仕入税額控除の適用上、課税売上割合が95%未満となると、控除税額が制限されるという仕組みがあります。このため、非課税売上がある場合には、課税売上割合の制限の対象にならないか、検討が必要なのです。

■売掛債権などの取扱い

この点、金銭債権の譲渡は課税売上割合の計算上、特別な取扱いが設けられています。その取扱いは、売掛債権とそれ以外の金銭債権で大きく分かれます。

売掛債権については、それを譲渡しても、課税売上割合の計算上非課税売上としてカウントする必要はないとされています。売掛債権は元々、会社の本業の売上から発生するもので、その本業の売上は原則課税売上として消費税を納めていますから、課税売上割合の計算に売掛債権の譲渡を影響させ、仕入税額控除を制限するのは酷という考え方からです。

それ以外の金銭債権の取扱い

それ以外の金銭債権、具体的には貸付金等についてですが、これについては課税売上割合の計算上5%だけ非課税売上としてカウントすることとされています。これは、同じ非課税売上の有価証券の譲渡と同じ扱いとして、課税売上割合を大きくしないための特例です。

■実務で多い事例

金銭債権の譲渡について、実務上多いのはリサイクル預託金です。中古自動車を売却する場合、預託金も一緒に売却しますが、その預託金は金銭債権に該当しますので、上記のような処理を行うことになります。

■専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。

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