相続税の対象になる家屋について、その評価方法は非常にシンプルで、家屋に対して課される固定資産税評価額に1.0を乗じて計算した金額とされています。このため、相続税の評価で家屋が問題になることは基本的にはありませんが、建設中の家屋を評価する場合、その評価額が問題になります。なぜなら、建設中の家屋については、まだ家屋が出来ていないため当然ながら固定資産税評価額は存在しないからです。
■建設中の家屋の評価
この建設中の家屋は、以下の計算式で評価することとなっています。
費用現価の額×70%
ここでいう「費用現価の額」については、相続開始日等の、相続税が課税されるタイミング(「課税時期」といいます)までに建物に投下された建築費用の額を、その課税時期までの価額として引き直した額の合計額のことをいいます。
具体的には、工事請負代金に対し、課税時期までの進捗割合を乗じて計算することになります。例えば、建築費が4千万円で、進捗割合が60%であれば、費用現価の額は2400万円とされます。
なお、ここでいう進捗割合ですが、実務上は業者から「進捗率証明書」のような書類をもらうことで、算定することが多いようです。
■前払金等がある場合の注意点
ところで、この建設中の家屋について、よく失念することの一つに前払金等の取扱いがあります。上記の例で、仮に4千万円を業者に前払していたとします。この場合、費用現価の額は2400万円で、その分前払金が建設中の家屋に振り替わっていますが、差額の1600万円は未だに前払金のままです。前払金のような金銭債権は相続税の対象になる相続財産ですので、その分相続財産にあたる「前払金」として申告する必要があります。
その逆で、2千万円だけ前払いしていたとします。この場合、費用現価は2400万円ですので、建設中の家屋に振り替わる金額が前払金を超えていることになります。この場合の差額400万円については、業者に支払うべきお金が不足しているとして、その分相続財産のマイナスとして相続税を計算することとされています。
建設中の家屋と聞くと、上記の計算例ばかりに頭が行ってしまいがちですが、それに伴う金銭債権や金銭債務の問題も生じますので、注意が必要です。
■専門家プロフィール
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。
■建設中の家屋の評価
この建設中の家屋は、以下の計算式で評価することとなっています。
費用現価の額×70%
ここでいう「費用現価の額」については、相続開始日等の、相続税が課税されるタイミング(「課税時期」といいます)までに建物に投下された建築費用の額を、その課税時期までの価額として引き直した額の合計額のことをいいます。
具体的には、工事請負代金に対し、課税時期までの進捗割合を乗じて計算することになります。例えば、建築費が4千万円で、進捗割合が60%であれば、費用現価の額は2400万円とされます。
なお、ここでいう進捗割合ですが、実務上は業者から「進捗率証明書」のような書類をもらうことで、算定することが多いようです。
■前払金等がある場合の注意点
ところで、この建設中の家屋について、よく失念することの一つに前払金等の取扱いがあります。上記の例で、仮に4千万円を業者に前払していたとします。この場合、費用現価の額は2400万円で、その分前払金が建設中の家屋に振り替わっていますが、差額の1600万円は未だに前払金のままです。前払金のような金銭債権は相続税の対象になる相続財産ですので、その分相続財産にあたる「前払金」として申告する必要があります。
その逆で、2千万円だけ前払いしていたとします。この場合、費用現価は2400万円ですので、建設中の家屋に振り替わる金額が前払金を超えていることになります。この場合の差額400万円については、業者に支払うべきお金が不足しているとして、その分相続財産のマイナスとして相続税を計算することとされています。
建設中の家屋と聞くと、上記の計算例ばかりに頭が行ってしまいがちですが、それに伴う金銭債権や金銭債務の問題も生じますので、注意が必要です。
■専門家プロフィール
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。