業種や業界に関係なく「最低でも自分の給料の3倍は稼ぎなさい」というフレーズを、社員に伝えたことがある経営者は多いのではないでしょうか。勿論3倍とは言わず5倍、10倍と欲を出したくなるものですが、その一方で中々思ったような成果をあげてくれない社員がいるのも事実です。そんなときには教育研修を重ねて、何とかその社員を伸ばそうとするのですが、もしも伸びなかったら、さて経営者としてどう判断するべきでしょうか。
今回はそんな従業員を辞めさせる場合、どんなケースであれば違法にならないかを岡村茂樹弁護士に聞いてみました。
■そもそも一定の要件を満たさないと解雇はできないのでご注意を!
そもそも従業員をやめさせる場合、どんな要件が必要か教えてください。
『解雇には法的な規制があります。この規制について、労働契約法16条は次のように定めています。「第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする』(岡村茂樹弁護士)
つまり経営者に解雇する権利はあっても、正当な理由と、その説得行為が常識の範囲内でないと無効という意味ですね。
正当な理由とは、例えば売上が下がり、巻き返しを図るために人員を整理するといった解雇は、正当な理由として成立するのでしょうか?
『被用者たる従業員は使用者たる企業に比較すると、相対的に弱い立場にあるので、客観的に合理的な理由の有無は厳格に解釈されています。企業の利益がマイナス傾向になった、利益を上げるために人員を整理したいなどと使用者が考えたとしても、客観的に合理的な解雇事由にはなり得ないわけです』(岡村茂樹弁護士)
■日本IBM事件から考える適法な退職勧奨とは?
ここで1つの具体例として日本IBM事件を取り上げます。
日本IBM事件とは、会社がリーマン・ショック後の対応策として導入したリストラプログラムについて、違法な退職勧奨であるとし、従業員が慰謝料を求めた事件です。結果的には、日本IBMの退職勧奨に違法性はないとし、従業員の主張は認められませんでしたが、裁判所がどう判断したのかをまとめました。
■従業員が退職に消極的でも、退職勧奨を終了しなければならないことはない。
■従業員に対して、在籍し続けるデメリットと退職するメリットを具体的かつ丁寧に説明した。
■消極的な従業員に対して、その後再検討を促した行為は、社会通念上相当であった。
■従業員が退職勧奨によって衝撃を受けたり、不快感や苛立ちを感じても、それは直ちに違法というわけではない。
日本IBM事件で、退職勧奨が違法にならないと判断されたポイントはどの当りにあったのか岡村茂樹弁護士に再度聞いてみました。
『裁判所が把握した事実関係のもとでは、「退職勧奨に応じない意思は堅固であり、この方針に変更の余地のないこと、したがって、退職勧奨のための面談には応じられないことをはっきりと明確に表明し、かつ、被告に対してその旨確実に認識させた段階で、初めて、被告によるそれ以降の退職勧奨のための説明ないし説得活動について、任意の退職意思を形成させるための手段として、社会通念上相当な範囲を逸脱した違法なものと評価されることがあり得る」としました』(岡村茂樹弁護士)
つまり明確に「退職しない」という意思表示をしているにもかかわらず、それ以降も退職勧奨が継続され、その説得が常軌を逸している場合に違法ということですね。
■退職勧奨において、絶対にやってはならないこととは?!
最後に経営者として、従業員を解雇する場合にどんな点に気をつけるべきかを聞いてみました。
『ひとくちに社会通念上相当とされる範囲といっても具体的事案により、その評価が異なることに注意しなければなりません。客観的合理性を有しない場合の退職勧奨においても,被用者たる従業員の明確な拒絶の意思表示がなされているのかどうか,被用者たる従業員が退職する場合としない場合の利益考量をした上で退職を拒絶したのかどうかなどにより,違法性の判断が異なり,慰謝料請求の可否が決定されるということになります』
ブラック企業の問題が度々ニュースで取り上げられていますが、今回は経営者のみならず、従業員としても、退職勧奨に対してどう対応するべきかということが明確になったのではないでしょうか。退職勧奨を考えている経営者は気をつけて行って下さい。
今回はそんな従業員を辞めさせる場合、どんなケースであれば違法にならないかを岡村茂樹弁護士に聞いてみました。
■そもそも一定の要件を満たさないと解雇はできないのでご注意を!
そもそも従業員をやめさせる場合、どんな要件が必要か教えてください。
『解雇には法的な規制があります。この規制について、労働契約法16条は次のように定めています。「第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする』(岡村茂樹弁護士)
つまり経営者に解雇する権利はあっても、正当な理由と、その説得行為が常識の範囲内でないと無効という意味ですね。
正当な理由とは、例えば売上が下がり、巻き返しを図るために人員を整理するといった解雇は、正当な理由として成立するのでしょうか?
『被用者たる従業員は使用者たる企業に比較すると、相対的に弱い立場にあるので、客観的に合理的な理由の有無は厳格に解釈されています。企業の利益がマイナス傾向になった、利益を上げるために人員を整理したいなどと使用者が考えたとしても、客観的に合理的な解雇事由にはなり得ないわけです』(岡村茂樹弁護士)
■日本IBM事件から考える適法な退職勧奨とは?
ここで1つの具体例として日本IBM事件を取り上げます。
日本IBM事件とは、会社がリーマン・ショック後の対応策として導入したリストラプログラムについて、違法な退職勧奨であるとし、従業員が慰謝料を求めた事件です。結果的には、日本IBMの退職勧奨に違法性はないとし、従業員の主張は認められませんでしたが、裁判所がどう判断したのかをまとめました。
■従業員が退職に消極的でも、退職勧奨を終了しなければならないことはない。
■従業員に対して、在籍し続けるデメリットと退職するメリットを具体的かつ丁寧に説明した。
■消極的な従業員に対して、その後再検討を促した行為は、社会通念上相当であった。
■従業員が退職勧奨によって衝撃を受けたり、不快感や苛立ちを感じても、それは直ちに違法というわけではない。
日本IBM事件で、退職勧奨が違法にならないと判断されたポイントはどの当りにあったのか岡村茂樹弁護士に再度聞いてみました。
『裁判所が把握した事実関係のもとでは、「退職勧奨に応じない意思は堅固であり、この方針に変更の余地のないこと、したがって、退職勧奨のための面談には応じられないことをはっきりと明確に表明し、かつ、被告に対してその旨確実に認識させた段階で、初めて、被告によるそれ以降の退職勧奨のための説明ないし説得活動について、任意の退職意思を形成させるための手段として、社会通念上相当な範囲を逸脱した違法なものと評価されることがあり得る」としました』(岡村茂樹弁護士)
つまり明確に「退職しない」という意思表示をしているにもかかわらず、それ以降も退職勧奨が継続され、その説得が常軌を逸している場合に違法ということですね。
■退職勧奨において、絶対にやってはならないこととは?!
最後に経営者として、従業員を解雇する場合にどんな点に気をつけるべきかを聞いてみました。
『ひとくちに社会通念上相当とされる範囲といっても具体的事案により、その評価が異なることに注意しなければなりません。客観的合理性を有しない場合の退職勧奨においても,被用者たる従業員の明確な拒絶の意思表示がなされているのかどうか,被用者たる従業員が退職する場合としない場合の利益考量をした上で退職を拒絶したのかどうかなどにより,違法性の判断が異なり,慰謝料請求の可否が決定されるということになります』
ブラック企業の問題が度々ニュースで取り上げられていますが、今回は経営者のみならず、従業員としても、退職勧奨に対してどう対応するべきかということが明確になったのではないでしょうか。退職勧奨を考えている経営者は気をつけて行って下さい。