2016年1月から開始する「全国がん登録」。国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターが運営する「がん情報サービス」のホームページによると『「全国がん登録」制度がスタートすると、居住地域にかかわらず全国どこの医療機関で診断を受けても、がんと診断された人のデータは都道府県に設置された「がん登録室」を通じて集められ、国のデータベースで一元管理されるようになります』と明記されています。
今回はその目的や、個人情報が漏洩した場合の賠償について木川雅博弁護士に話を聞いてみました。
■がん登録の目的とは?!
まずは全国がん登録の目的と、そのデータが何に使われるのかを教えて下さい。
『全国がん登録を行うことによって、国民のがんの罹患数、がんの進行度、生存率を正確に把握して、地域に合った医療計画を立てたり、地域でがん検診が効果的に実施されているかを検証したり、医師と患者が治療方針を決定するために生かしたりすることができると説明されています』(木川雅博弁護士)
『がん登録のデータは主に国や都道府県のがん対策、がん検診・がん治療の効率化、がん治療の研究のために用いられます』(木川雅博弁護士)
実はがん登録自体は今に始まったことではなく、以前から各地域で行われていました。しかし今回の全国がん登録とは違い、全ての医療機関が協力していたわけではありませんでした。また情報管理が正常に機能せず、データの重複登録などもあったようです。そういった背景を元に、日本医学会が主導となって全国がん登録の成立に向けて働きかけました。
■どの時点で漏洩したかがポイント!
ここまでは全国がん登録の概要について説明しました。ここからはそのデータが漏洩となった場合、どこが責任を負うか教えてください。
『データが漏えいした場合は、情報収集のどこの過程で漏えいしたかや漏えいさせた人がどこの職員かによって責任の所在が変わってきます』(木川雅博弁護士)
『全国がん登録では、医療機関→都道府県のがん登録室→国立がん研究センターのがん登録データベースという過程を経て患者の情報が登録されるので、たとえば医療機関の職員が漏えいさせた場合には医療機関の職員や医療機関が、国立がん研究センターの職員が漏洩させた場合はセンターの職員や国が責任を負うことになるでしょう』(木川雅博弁護士)
全ての医療機関は、がんと診断された患者の情報を都道府県知事に届け出ることが義務付けられています。そこには患者の同意を得る必要はありません。情報管理の徹底がより一層求められるでしょう。
■高額にはなりづらいかもしれない賠償額
最後に実際に漏洩した場合の賠償について教えて下さい。
『漏洩させられた患者は、がんの病歴というきわめて秘匿性の高いセンシティブ情報を漏洩させられたことに対しての精神的苦痛(慰謝料)の賠償を求めることになります』(木川雅博弁護士)
診療情報は守秘性が非常に高い個人情報です。元々、医療従事者には守秘義務が課せられていましたが、それに加えて個人情報保護法も施行されました。こういった条件を考えると、その賠償額は従来に比べると高額になるのでしょうか。
『日本の場合、秘匿性の高い情報を漏えいされた場合でも賠償額が高額になりづらいので、賠償の内容として十分かという点が問題になるでしょう。また、情報は自動的にデータベースに登録されるので、賠償を求めるに当たり、患者側はどこの過程で自分の情報が漏えいしたかを証明できない可能性が高いことも問題になるでしょう』(木川雅博弁護士)
■情報管理の徹底が求められる!
木川雅博弁護士が非常に重要な問題を指摘してくれましたが、この情報管理について「がん情報サービス」のホームページでは以下の様にまとめています。
■「がん登録等の推進に関する法律」では、個人情報の保護や管理、罰則を厳しく規定
■がん登録の情報を利用する際は、匿名化され、個人は特定できない
■がん登録に従事する職員は、専門的な研修を受けた人
診療情報の活用は、医学の発展に非常に重要な役割を果たしてきました。また医師や看護師、薬剤師等の医療専門職の教育にも欠かすことが出来ません。この全国がん登録が有意義なものとなる為には、より一層守秘義務の遵守や情報のセキュリティの徹底が益々求められてるでしょう。
今回はその目的や、個人情報が漏洩した場合の賠償について木川雅博弁護士に話を聞いてみました。
■がん登録の目的とは?!
まずは全国がん登録の目的と、そのデータが何に使われるのかを教えて下さい。
『全国がん登録を行うことによって、国民のがんの罹患数、がんの進行度、生存率を正確に把握して、地域に合った医療計画を立てたり、地域でがん検診が効果的に実施されているかを検証したり、医師と患者が治療方針を決定するために生かしたりすることができると説明されています』(木川雅博弁護士)
『がん登録のデータは主に国や都道府県のがん対策、がん検診・がん治療の効率化、がん治療の研究のために用いられます』(木川雅博弁護士)
実はがん登録自体は今に始まったことではなく、以前から各地域で行われていました。しかし今回の全国がん登録とは違い、全ての医療機関が協力していたわけではありませんでした。また情報管理が正常に機能せず、データの重複登録などもあったようです。そういった背景を元に、日本医学会が主導となって全国がん登録の成立に向けて働きかけました。
■どの時点で漏洩したかがポイント!
ここまでは全国がん登録の概要について説明しました。ここからはそのデータが漏洩となった場合、どこが責任を負うか教えてください。
『データが漏えいした場合は、情報収集のどこの過程で漏えいしたかや漏えいさせた人がどこの職員かによって責任の所在が変わってきます』(木川雅博弁護士)
『全国がん登録では、医療機関→都道府県のがん登録室→国立がん研究センターのがん登録データベースという過程を経て患者の情報が登録されるので、たとえば医療機関の職員が漏えいさせた場合には医療機関の職員や医療機関が、国立がん研究センターの職員が漏洩させた場合はセンターの職員や国が責任を負うことになるでしょう』(木川雅博弁護士)
全ての医療機関は、がんと診断された患者の情報を都道府県知事に届け出ることが義務付けられています。そこには患者の同意を得る必要はありません。情報管理の徹底がより一層求められるでしょう。
■高額にはなりづらいかもしれない賠償額
最後に実際に漏洩した場合の賠償について教えて下さい。
『漏洩させられた患者は、がんの病歴というきわめて秘匿性の高いセンシティブ情報を漏洩させられたことに対しての精神的苦痛(慰謝料)の賠償を求めることになります』(木川雅博弁護士)
診療情報は守秘性が非常に高い個人情報です。元々、医療従事者には守秘義務が課せられていましたが、それに加えて個人情報保護法も施行されました。こういった条件を考えると、その賠償額は従来に比べると高額になるのでしょうか。
『日本の場合、秘匿性の高い情報を漏えいされた場合でも賠償額が高額になりづらいので、賠償の内容として十分かという点が問題になるでしょう。また、情報は自動的にデータベースに登録されるので、賠償を求めるに当たり、患者側はどこの過程で自分の情報が漏えいしたかを証明できない可能性が高いことも問題になるでしょう』(木川雅博弁護士)
■情報管理の徹底が求められる!
木川雅博弁護士が非常に重要な問題を指摘してくれましたが、この情報管理について「がん情報サービス」のホームページでは以下の様にまとめています。
■「がん登録等の推進に関する法律」では、個人情報の保護や管理、罰則を厳しく規定
■がん登録の情報を利用する際は、匿名化され、個人は特定できない
■がん登録に従事する職員は、専門的な研修を受けた人
診療情報の活用は、医学の発展に非常に重要な役割を果たしてきました。また医師や看護師、薬剤師等の医療専門職の教育にも欠かすことが出来ません。この全国がん登録が有意義なものとなる為には、より一層守秘義務の遵守や情報のセキュリティの徹底が益々求められてるでしょう。