以前のコラムでは、電車の遅延によって大事な商談に遅刻し、会社に損害が発生した場合、鉄道会社に損害賠償請求が認められるかどうかについて触れた。結論としては、損害賠償は認められないとのこと。
これは、鉄道会社と乗客との間に、ある決まった場所まで運ぶという契約は成立しているが、決まった時間までに運ぶことまでは含まれていないというのが理由である。
さて今回は、交通事故を理由にした同様のケースにおいて、加害者に損害賠償が認められるかどうかを、前回と同じく井上義之弁護士に話を伺った。
■その不法行為と損害に、相当な因果関係があるならば、基本的には賠償請求可能!
まずは一般論として、損害賠償請求が認められるための要件とはなんだろうか。
「一般原則としては、不法行為と相当因果関係のある損害については賠償請求が可能です」(井上義之弁護士)
今回のケースであれば、交通事故がなければ遅刻することなく、お店や会社に損害が発生することもなかったと考えると、因果関係はあると考えることができそうであるが、どうだろうか。
「もっとも、加害者の過失による交通事故によって被害者が遅刻し、被害者の勤務先の会社に損害が発生したような場合については、損害の公平な分担の理念、会社は事前に一定の対策をとることが可能であること等の考慮もあり、損害賠償の範囲は制限的に解されています。基本的には、このような場合に会社が加害者に損害を賠償してもらうのは難しいと考えておくべきでしょう」(井上義之弁護士)
損害賠償は難しいと井上義之弁護士は言う。
■損害の公平な分担って?
例えば、ある損害に対して、なんらかの原因を認め、全損害の賠償を認めてしまうと、賠償すべき損害の範囲は無限になってしまう。そこで裁判では、それが原因によって、通常発生し得るだろう損害に範囲を制限し、賠償義務を負わせている。これを損害の公平な分担という。
交通事故においては、類型化された過失割合、過失相殺が代表的な損害の公平の分担であるが、分担の範囲に明確な基準はなく、どこまで負担させるのが常識的かというところで判断がなされる。
つまり交通事故によって遅刻し、会社に損害が出たとしても、それは損害賠償の範囲外ということである。
■自衛・防衛策は怠らずに!
しかし井上義之弁護士は最後にこう付け加えた。
「間接的に損害を被った会社からの損害賠償請求を認めた最高裁判例もありますが(昭和43年11月15日)、その事案では直接の被害者と会社が実質的に同一とみることができる事情がありました」(井上義之弁護士)
これは会社代表者が交通事故の被害者となったケースである。裁判要旨によると、被害者である会社代表者には代えのきくような人材がおらず、更に会社としての収入と個人としての収入が一体であったことから、会社に生じた損害に対しても賠償が認められたとのこと。
交通事故は予測することは不可能であるが、それでもいざ何かあった時のための自衛・防衛策をとっておくことがこの話の教訓かもしれない。
これは、鉄道会社と乗客との間に、ある決まった場所まで運ぶという契約は成立しているが、決まった時間までに運ぶことまでは含まれていないというのが理由である。
さて今回は、交通事故を理由にした同様のケースにおいて、加害者に損害賠償が認められるかどうかを、前回と同じく井上義之弁護士に話を伺った。
■その不法行為と損害に、相当な因果関係があるならば、基本的には賠償請求可能!
まずは一般論として、損害賠償請求が認められるための要件とはなんだろうか。
「一般原則としては、不法行為と相当因果関係のある損害については賠償請求が可能です」(井上義之弁護士)
今回のケースであれば、交通事故がなければ遅刻することなく、お店や会社に損害が発生することもなかったと考えると、因果関係はあると考えることができそうであるが、どうだろうか。
「もっとも、加害者の過失による交通事故によって被害者が遅刻し、被害者の勤務先の会社に損害が発生したような場合については、損害の公平な分担の理念、会社は事前に一定の対策をとることが可能であること等の考慮もあり、損害賠償の範囲は制限的に解されています。基本的には、このような場合に会社が加害者に損害を賠償してもらうのは難しいと考えておくべきでしょう」(井上義之弁護士)
損害賠償は難しいと井上義之弁護士は言う。
■損害の公平な分担って?
例えば、ある損害に対して、なんらかの原因を認め、全損害の賠償を認めてしまうと、賠償すべき損害の範囲は無限になってしまう。そこで裁判では、それが原因によって、通常発生し得るだろう損害に範囲を制限し、賠償義務を負わせている。これを損害の公平な分担という。
交通事故においては、類型化された過失割合、過失相殺が代表的な損害の公平の分担であるが、分担の範囲に明確な基準はなく、どこまで負担させるのが常識的かというところで判断がなされる。
つまり交通事故によって遅刻し、会社に損害が出たとしても、それは損害賠償の範囲外ということである。
■自衛・防衛策は怠らずに!
しかし井上義之弁護士は最後にこう付け加えた。
「間接的に損害を被った会社からの損害賠償請求を認めた最高裁判例もありますが(昭和43年11月15日)、その事案では直接の被害者と会社が実質的に同一とみることができる事情がありました」(井上義之弁護士)
これは会社代表者が交通事故の被害者となったケースである。裁判要旨によると、被害者である会社代表者には代えのきくような人材がおらず、更に会社としての収入と個人としての収入が一体であったことから、会社に生じた損害に対しても賠償が認められたとのこと。
交通事故は予測することは不可能であるが、それでもいざ何かあった時のための自衛・防衛策をとっておくことがこの話の教訓かもしれない。