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経営危機の子会社が親会社に債権放棄を求める場合の注意点(松嶋洋)

相談LINE 2016年9月16日 19時0分

子会社が経営危機に瀕したため、親会社に債権放棄を求める、といった再建計画は非常に多いですが、このような再建をする場合の債権放棄についても、法人税には厳しい要件があります。安易に債権放棄をすると、その免除した金額についてその一部が経費にならない寄附金として国税から課税されることがあります。

■再建費用が寄附金とならない場合

法人税においては、子会社への債権放棄などの損失負担が、親会社としてこれらの負担をしなければさらに大きな損失を被るなど、経済合理性がある場合を除いて、寄附金として課税されることになっています。

ここで問題になる経済合理性についてですが、国税庁のホームページを見ますと、以下のようなポイントで判断することになっています。

・子会社は経営危機に陥っているか(倒産の危機にあるか)。
→倒産の危機に至らないまでも経営成績が悪いなど、放置した場合には今後より大きな損失を蒙ることが明らかであるか、検討するとされています。
・債務免除などの損失負担等を行うことは相当か(支援する相当な理由はあるか)。
・損失負担等の額(支援額)は合理的であるか(過剰支援になっていないか)。
・損失負担等をする支援者の範囲は相当であるか(特定の債権者等が意図的に加わっていないなどの恣意性がないか)。
・損失負担等の額の割合は合理的であるか(特定の債権者だけが不当に負担を重くし又は免れていないか)。

損失負担をする理由はもちろん、負担する金額などについても検討されますので、慎重に対応する必要があります。

■租税回避的なものは認められない

加えて、親会社の利益調整として行われるような債務免除についても寄附金として課税される可能性が非常に大きいです。

一例を申し上げると、債務超過の子会社にお金を貸して、その後時期を見て債権放棄をして損失を計上する、といった節税が考えられますが、こうなると安易な節税につながりますし、そもそも債務超過の会社にお金を貸すということはありえないとして、厳しい判断がなされます。

■慎重な対応を

いずれにしても、子会社に対する債権放棄については、税務調査で厳しい対応がなされることが非常に多いです。

債権放棄をせざるを得ない、その合理的な理由を作っておく必要があります。

●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事。

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