相続税の申告で、問題になることの一つに、相続前後に土地の売買契約を結んでいたが、まだ買主に引き渡していない場合の土地の取扱いがあります。相続税の計算上、土地の評価は路線価方式などで評価していますが、相続直前に土地を売る契約をしていた被相続人について、路線価方式などで評価できるかが問題になります。土地の値段は当事者の交渉によって変わりますから、路線価方式など国税が決めた評価方法で計算される金額と異なることが通例だからです。
加えて、土地を売ることが相続前に決まっていた場合、その土地は売り渡さなければなりませんから、被相続人が土地を持っているとまでは言えず、相続税の課税上、土地を相続財産に含めていいかどうかも問題になります。
■売買契約が成立していれば、土地の代金で評価する
相続前に売買契約が成立しているものの、相続時に引き渡していない土地の取扱いについて、国税の見解を見ますと、以下のような課税関係になるとされています。
1 売主に相続が発生した場合
土地ではなく、残代金請求権という債権として相続財産を認識する
評価額は、売買契約に基づく取引金額が基礎になる
2 買主に相続が発生した場合
土地ではなく、土地の引渡し請求権という債権として相続財産を認識する
評価額は、売買契約に基づく取得金額が基礎になるが、支払うべき残代金については、債務控除の対象とすることができる
具体例を申し上げますと、例えば路線価などで計算される土地の相続税評価額が4,000万、売買契約による代金が5,000万、相続開始までに手付金として500万円買主からもらっている場合には、以下のような計算になります。
1 売主の相続税の計算
残代金請求権として、4,500万円(=5,000万円-500万円)を相続税の課税財産に含める
2 買主の相続税の計算
土地の引渡し請求権として、売買代金の5,000万円を相続税の課税財産に含める
反面、支払うべき代金の残額4,500万円(=5,000万円-500万円)を、被相続人の売主に対する借金として、相続税の計算上控除する
■相続税評価額は使わない
このように、相続税評価額を使わないで相続税の計算をすることになっていますので、注意が必要になります。とりわけ、土地の相続税評価額は、売買代金など土地の時価に比べて、小さい金額が計算されることが通例です。このため、誤って相続税評価額として計算してしまうと、税務調査で是正される可能性が大きいですから、注意してください。
●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事。
加えて、土地を売ることが相続前に決まっていた場合、その土地は売り渡さなければなりませんから、被相続人が土地を持っているとまでは言えず、相続税の課税上、土地を相続財産に含めていいかどうかも問題になります。
■売買契約が成立していれば、土地の代金で評価する
相続前に売買契約が成立しているものの、相続時に引き渡していない土地の取扱いについて、国税の見解を見ますと、以下のような課税関係になるとされています。
1 売主に相続が発生した場合
土地ではなく、残代金請求権という債権として相続財産を認識する
評価額は、売買契約に基づく取引金額が基礎になる
2 買主に相続が発生した場合
土地ではなく、土地の引渡し請求権という債権として相続財産を認識する
評価額は、売買契約に基づく取得金額が基礎になるが、支払うべき残代金については、債務控除の対象とすることができる
具体例を申し上げますと、例えば路線価などで計算される土地の相続税評価額が4,000万、売買契約による代金が5,000万、相続開始までに手付金として500万円買主からもらっている場合には、以下のような計算になります。
1 売主の相続税の計算
残代金請求権として、4,500万円(=5,000万円-500万円)を相続税の課税財産に含める
2 買主の相続税の計算
土地の引渡し請求権として、売買代金の5,000万円を相続税の課税財産に含める
反面、支払うべき代金の残額4,500万円(=5,000万円-500万円)を、被相続人の売主に対する借金として、相続税の計算上控除する
■相続税評価額は使わない
このように、相続税評価額を使わないで相続税の計算をすることになっていますので、注意が必要になります。とりわけ、土地の相続税評価額は、売買代金など土地の時価に比べて、小さい金額が計算されることが通例です。このため、誤って相続税評価額として計算してしまうと、税務調査で是正される可能性が大きいですから、注意してください。
●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事。