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税法研究者が考える「配偶者控除の見直しが実現するか否か」(松嶋洋)

相談LINE 2016年11月28日 19時0分

毎年必ず税制改正要望に上がってくる項目の一つに、配偶者控除の廃止があります。来年度改正では実現が高いと言われていましたが、通年と同様、選挙対策などにより、その改正は延期されています。

しかし、今後改正が確実に実現する項目ですので、現在までの検討案についてまとめてみます。

■改正が必要な理由

配偶者控除は、配偶者の所得が年38万円以下(給与のみなら、収入が年103万円以下)である場合、本人の所得金額から38万円を控除できるという制度です。この制度により、妻がパートなどをする場合、103万円を超えないよう労働時間を調整している、という実態があります。少子化の影響で、労働力が不足するなか、女性の社会進出が必須であるため、この制度の見直しが必要と言われているのです。

■改正案は夫婦を一体で見る制度に

報道によると、制度を廃止するのではなく、夫婦を一体として見て、一定額を税額控除するという制度(夫婦控除)が想定されているようです。

配偶者控除の問題点として指摘されることでもありますが、配偶者控除は共働きよりも、専業主婦を優遇してしまうという実態があります。こうならないよう、配偶者の収入に関係なく、一定額を差し引ける仕組みを想定している模様です。

■社会構造の改革も必要になる

夫婦控除を導入することで、税額計算上配偶者の収入に関係がなくなるのであれば、103万円の壁に関係なく仕事をするはず、と説明されていますが、そこまで単純な問題ではないでしょう。

例えば、待機児童の問題やマタニティーハラスメントなど、夫婦の共働きを阻害する要因は非常に多くあります。このあたり、善処するように政治家は言いますが、ほとんど改革は進んでいません。

本来、税の問題は単独ではなく、社会制度の改革も含めて税制改正をするべきですが、消費税増税と同様、税だけが先行するのが日本の残念なところです。

■財務省の本音は増税にある

配偶者控除の見直しにより女性の社会進出を増やす、などというお題目を政治家は言いますが、法律を作る財務省の本音は、配偶者控除を見直すことによる増税にあると言われています。近く改正は実現すると想定されますので、今後の動向に注意が必要です。

●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事。

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