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青色申告をしている方が税務調査で気をつけるべき推計課税を専門家が解説

相談LINE 2017年9月25日 19時0分

推計課税という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。本来、税期の計算は実際に売り上げた金額や支払った経費を基に計算をしますが、例えば帳簿を全く記録していない悪質な納税者など、実際の収益費用を解明できない場合があります。このような一定の悪質な納税者に対しては、実額ではなく、だいだいこのくらいの売上があるはず、といった形で推計課税を行うことが国税には認められています。

■推計課税は青色申告者には適用なし

このような推計課税がなされれば、納税者にとっては大きな不利益になりますので、きちんと帳簿をつける、資料を保存する必要があると言われます。加えて、安易な推計課税がなされることも許されませんので、法律上、青色申告書を提出する納税者に対しては、推計課税が認められないとされています。

青色申告とは、適正に帳簿をつけるなどする納税者に認められる制度で、青色申告をすることで税務上さまざまな特典の適用を受けることができます。適正に帳簿をつけることが申請の要件になっていますから、正確な売上や経費を計算できない場合は想定しがたく、結果として青色申告者に対しては推計課税をすることができないとされています。

■実務では広く行われることがある

このような建前はあるにしても、実際の税務調査の局面では、青色申告をする納税者に対しても推計課税のような課税が行われることがあります。青色申告者であっても、帳簿がいい加減な場合もありますし、不正取引を行う納税者であれば、そもそも真実の売り上げなどを記録に残すことも少ないですから、正確な数字を出すことが極めて困難な場合もあるからです。

結果として、青色申告者であっても、「だいたいこのくらいの税金がかかります」といった形で、推計的に課税をして税務調査を終わる、こんな実務も多くあるのです。法律上は大きな問題ですが、納税者としても税務調査が早く終わってほしいと思っていますし、正確な数字を証明することが難しいことから、このような調査官の提案をそのまま受け入れることが多くあります。

■バーゲンの感覚で対応する

これだけ聞くと、かなり酷と思われると思いますが、実際に推計課税的な課税を行う調査官も、法律には則っていないことから、あまり強行的な指導ができないという意識もあります。このため、推計的にこのくらいで、と言われた場合、「払えないのでもっと少なくして」などと返答すると、かなりの確率で金額を下げてくれます。私の経験上、3000万円などと言われた数字が、300万円程度にまで下げてもらったこともあります。このため、どんどん交渉しましょう。

もちろん、最善の方法はきちんと記録を残すことですので、この点ご承知おきください。


■専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。税務調査で望ましい結果を得るための法律論・交渉術に関する無料メルマガを提供中。

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