税務調査では、役員の退職金が問題になります。役員の退職金は、適正な金額であればその全額が経費になりますが、それを超える金額は経費になりません。この適正な金額については、実務上、平均功績倍率法で算定されることになります。
平均功績倍率法とは、以下の方法で計算される金額を適正額とするものです。
「退職した役員の最終の報酬月額×勤続年数×平均功績倍率」
■最終の報酬月額の修正
この平均功績倍率法は広く認められた方法ですが、よくある質問の一つに、最終の報酬月額を修正できるか、というものがあります。企業経営上、好調な時もあれば不調な時もありますが、その不調な時を乗り切るため一時的に役員報酬を下げるということがよくあります。仮に、このまま退職時期を迎えてしまえば、一時的に下げた金額がベースになるため、役員退職金の適正額が低く算定されてしまいます。
これでは合理性がないため、例えば好調だった時期に支給した報酬月額を基に、平均功績倍率法を適用できないか。このような質問がよくあります。この点、ろくに法律も読めないOB税理士は深く検討もせずにゴーサインを出すことが多いですが、これは誤りです。
誤りである理由は複雑なので割愛しますが、最終の報酬月額を修正して認められた事例は、私の知る限り一つしかありません。このため、このような修正はできないと心がけてください。
■勤続年数などは切り上げか切り下げか?
その他、上記算式の勤続年数に1年未満の端数があった場合、それを切り上げても問題ないか、実務では問題になります。退職金の適正額に国税は厳しいため、このような細かいところまで神経を使われる方が多いですが、1年未満は切り上げで問題ありません。
加えて、上記の平均功績倍率は、小数点第二位まで出すことになっていますが、それも切り上げで問題ないとされています。税務署から問題視された場合に反論できる証拠として、以下の事例をご紹介します。
■平成27年6月23日裁決
当審判所は、勤続年数については、1年未満の端数は切り上げ、また、功績倍率の小数点以下については、小数点第3位以下を切り上げて算定するのが相当であると認める。
税には重要な部分は国税有利、細かい部分は納税者有利で問題ない、みたいな考え方がありますが、このことは平均功績倍率法も同様と考えられます。
■専門家プロフィール
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。
平均功績倍率法とは、以下の方法で計算される金額を適正額とするものです。
「退職した役員の最終の報酬月額×勤続年数×平均功績倍率」
■最終の報酬月額の修正
この平均功績倍率法は広く認められた方法ですが、よくある質問の一つに、最終の報酬月額を修正できるか、というものがあります。企業経営上、好調な時もあれば不調な時もありますが、その不調な時を乗り切るため一時的に役員報酬を下げるということがよくあります。仮に、このまま退職時期を迎えてしまえば、一時的に下げた金額がベースになるため、役員退職金の適正額が低く算定されてしまいます。
これでは合理性がないため、例えば好調だった時期に支給した報酬月額を基に、平均功績倍率法を適用できないか。このような質問がよくあります。この点、ろくに法律も読めないOB税理士は深く検討もせずにゴーサインを出すことが多いですが、これは誤りです。
誤りである理由は複雑なので割愛しますが、最終の報酬月額を修正して認められた事例は、私の知る限り一つしかありません。このため、このような修正はできないと心がけてください。
■勤続年数などは切り上げか切り下げか?
その他、上記算式の勤続年数に1年未満の端数があった場合、それを切り上げても問題ないか、実務では問題になります。退職金の適正額に国税は厳しいため、このような細かいところまで神経を使われる方が多いですが、1年未満は切り上げで問題ありません。
加えて、上記の平均功績倍率は、小数点第二位まで出すことになっていますが、それも切り上げで問題ないとされています。税務署から問題視された場合に反論できる証拠として、以下の事例をご紹介します。
■平成27年6月23日裁決
当審判所は、勤続年数については、1年未満の端数は切り上げ、また、功績倍率の小数点以下については、小数点第3位以下を切り上げて算定するのが相当であると認める。
税には重要な部分は国税有利、細かい部分は納税者有利で問題ない、みたいな考え方がありますが、このことは平均功績倍率法も同様と考えられます。
■専門家プロフィール
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。