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「浮気しやがって」「ぶっ殺してやる!」DV妻に何度も殺されかけた40代男性に起きた“悲劇”

日刊SPA! 2024年3月25日 8時53分

 配偶者や恋人からの暴力(DV)は、決して許されるものではない。一般的にDVというと、男性から女性への暴力を思い浮かべる。しかし、令和2年度の「内閣府男女共同参画局の統計」によると、女性の約4人に1人、男性の約5人に1人は、配偶者から暴力を受けたことがあるとされている。今回は女性から暴力を受けた男性の実例に迫る。
 国際的に活躍する医療関係者の中村さん(仮名・40代後半)。現在、専業主婦だった妻からのDVと親権・離婚裁判を抱えている。心臓への大きな負担がたたって、5年前から、ある地方都市で療養しながら、子どもと会えない日々を送っている。

◆結婚する前からあった妻のDV

 ビジネス系マッチングアプリで出会った中村氏は、妻と1年ほど交際をする。当時から水着のモデルの仕事をしているという妻は精神的に不安定で、たびたび仕事上で性被害に遭っていると話していた。一方で、「妻からのDVは結婚前からあった」と言う。それなら、なぜ結婚したのだろうか。

「交際期間から行動がおかしかったです。だけど、怒鳴って暴れることもあれば、そうじゃない時期もありました。怒っているときは形相が変わり、『あんた、何言ってんの!』と暴れましたが、日本語が不自由なのかと思っていました。とても弱い人で、普段は上品な人でした。守ってあげたいと思いました」

 見せてもらった妻の写真は、とても暴力を振るうような女性には見えない。容姿端麗で優し気な女性が微笑んでいた。

◆ありもしない浮気を疑われる

 交際時にはこんな出来事もあった。2011年の東日本大震災があった際、アメリカで仕事をしていた中村氏は日本に帰国する。彼の元には、安否を確認する電話があった。その中には、仕事で懇意にしていたヘッドハンターの女性がいた。

「そこから『A子って誰なんだ! B子は誰なんだ!?』といった感じで、携帯電話をバキバキに折られて破壊されたのです。仕事柄、X線画像などを扱うので、パソコンは常に最新のハイスペック機種で、100万円はするものを使っていました。それも壁に投げつけ、さらに机の角に叩きつけて壊しつくしました。半年で10台ほど壊されました」

 後ろから羽交い絞めにされ、バッグの紐で首を絞められたこともあるという中村氏の首には、うっ血痕が絶えなかった。中村氏は決して華奢な男性ではない。中学・高校の時には、友だちを守るために他校の生徒と喧嘩をするなど“やんちゃ”もしていたという。

「「文武両道』を掲げる進学校を首席で卒業し、陸上やスキー、アイスホッケーなど、スポーツも一通りやっていました。やり返せないわけではなかったのですが、だからこそ、妻に手を上げることは怖くてできませんでした。けがさせてしまいそうだったので」

◆「イギリスで暮らしていた」という設定

 その優しさが仇になったかのように妻のDVはエスカレートしていく。しかし、「結婚したらもう暴れたり暴力をふるったりしない」としおらしく言う妻を信じ、中村氏は入籍を決心する。

「まるで結婚詐欺だと思っています。婚姻届を出す段階で、3歳下だと言っていたのが、1歳年上だと分かりました。入籍を済ませた時、妻は嬉しそうにニコニコ微笑むのではなく、ニヤっと笑顔を浮かべたんです。その表情は今でも脳裏から離れません」

 そこからは地獄の結婚生活が始まる。妻は当初「小~高校までイギリスで暮らしていた」と話していたが、中村氏の親には「幼少期から住んでいた」と話すなど、話すごとに内容がコロコロ変わっていった。実際にイギリスでいつからいつまで暮らしていたのか、事実なのかは複数の裁判所手続を経た今でも不明だという。

◆何がトリガーになるかが分からない暴力

 結婚して1~2年が過ぎた頃、中村氏はあるプロジェクトのリーダーに抜擢された。地方都市に引っ越すことになるが、そこでも妻の暴力は止まなかった。

「当時の部下は、連日、首のうっ血痕を見ていました。『また首輪が増えましたね』 と言われていました」

 腕にはひっかき傷ができていた。部下にもバレバレの状態でプロジェクトリーダーとして働き、帰宅すると妻の暴力が待っている。

「羽交い絞めにされ、サムソナイトのビジネスバッグで首を絞められ、失神しかけたこともあります。それでコンクリートの壁に頭を打ち付けられるんです」

 その頭への衝撃のせいか、運転中の中村氏の意識が急に遠のくという出来事が起こる。診断後、事情を聴いた医師は「警察へ連絡する」と言うが、中村氏は大事(おおごと)にしないように警察に被害届を出さなかった。

◆出産後に離婚するという合意

 そんな中でも子供が欲しかったという中村氏は、高額な不妊治療を数年間続け、アメリカでしかできない1回180万円の遺伝子検査も数回ほど受けた。その後、妻は妊娠した。しかし、里帰り出産するために義実家に戻った時でも妻の暴言・暴力が止むことはなかった。

「『こんな子どもなんかいらない! ぶっ殺してやる!』と叫ぶ妻をなだめましたが、妻の家族は知らぬ存ぜぬで、関わろうとしなかったです。妻の家庭にも問題があったと思います。それぞれが個室で過ごし、食事のときだけ集まるのですが、誰も口をきかない異様な雰囲気でした。妻の弟は重度の統合失調症を患っており、父は偏った思想を持った人でした」

 以前、同サイトで取材した日本家族再生センターの代表である味沢道明氏は、「成育期の心の傷がDVにつながる」と話していた。

 耐えかねた中村氏は、出産後に離婚するという合意を妻とする。そして、妻は4000グラムの元気な女の子を出産。「由紀(仮名)」と名付けたその子を、中村さんはとても喜びかわいがった。由紀ちゃんは人が変わったように暴れ・暴言を吐く妻を怖がり、父べったりの子になった。

◆我が子にも及んだ虐待

 出産後に離婚すると決めていた中村氏だったが、なかなか実行できないまま時が過ぎていった。しかし、その間、妻は中村氏の目を盗んでまだ幼い由紀ちゃんを突き飛ばす、45度の熱湯をかけるなどの虐待をしていたのだ。また男性を家に連れ込んでいることも分かる。

「妻は自分の部屋のクローゼットに入りきらないブランド品を、子ども部屋の天井まで積み上げていました。その部屋の中に娘を閉じ込めて、浮気をしていたんです。由紀は、スッポンポンのママが男の人に襲われていると思ったそうです。男と母から突き飛ばされ、それ以来、玄関の物音に異様におびえるようになりました」

「パパー! 変なおじさんがきた!!」と体を硬直させて怯える由紀ちゃんを、中村氏は「大丈夫だよ」と必死になだめたという。

◆ついに起きた妻からの殺人未遂事件

 またあるとき、アメリカのプロジェクトが早く終わり、中村氏が夜12時に布団に入ると、先に就寝していた妻が突然に起き出し、「この野郎! てめえ、この野郎!」と枕を蹴り上げられた。

「驚いてリビングに行く妻を追うと、包丁を持って『浮気しやがって!』と怒鳴りながら、体の中枢部を突き刺そうとしてきました。トイレやバスルームを施錠して逃げても鍵を壊されてしまう。その時は万が一、私が刺されたら、子どもはどうなってしまうんだという気持ちで逃げ回りました」

 ルーフバルコニーに逃げても、鍵を壊し、ガラスを割って迫って来る。玄関から出ようとすれば、二重ロックを外そうとするうちに追いつかれてしまう。ついに逃げ場がなくなり、中村氏は和室だった子ども部屋に逃げ込んだ。しかし、柱とふすまの間から包丁を突き刺されて手を切られた。そうこうしているうちに子どもが目を覚ました。

「右手・右足でふすまを押さえて左腕で由紀ちゃんを『大丈夫だよ』と言いながら抱きかかえました。妻が和室に侵入してきたので、由紀ちゃんをかばいながら必死に逃げました。攻撃の際、包丁の先端は、由紀ちゃんの側頭部からわずか1センチもない状態でした。私が身をていして由紀を護らなかったら、側頭部に突き刺さっていました」

 さすがに警察を呼ばないとどうにもならないと思った中村氏は、たばこを買いに行くふりをして交番に駆け込んだ。部屋に残された娘の安全のために、パトカーが20台くる騒ぎとなった。しかし、ここでも中村氏は「子どもの母親を犯罪者にしたくない」という気持ちから事を荒立てなかった。

◆殺人未遂は認定したのに監護権は妻に渡る

 しかし、そんなとき中村氏は、妻に当時4歳の由紀ちゃんを連れ去られてしまう。家庭裁判所で子の引渡し(保全処分)/監護者指定審判を申し立てるが、意外な審判が下された。

「妻が犯した殺人未遂事件は一過性のものだとみなされ、殺人未遂は認定されたにもかかわらず、監護者は妻に指定されてしまい、連れ去り以降はまったく由紀にも会えず、安否に関しても情報が遮断された‟完全断絶”状態にあります。裁判長のことは一生許せません」

 中村氏は未成年者誘拐罪・殺人未遂罪・虚偽告訴等罪で、警察に告訴状も出しているという。

「私は精神科医ではありませんが、医療系の人間なので、妻は何かしらの人格障害を患っていると確信しています。相談窓口で態度が急変する妻に対して、精神科医が境界性人格障害との診断を下している行政記録が残っています。にもかかわらず、私が警察から悪者に仕立て上げられました」

 中村氏は現在も心臓を患い闘病しながらの裁判を続けている。

<取材・文/田口ゆう>

【田口ゆう】
ライター。webサイト「あいである広場」の編集長でもあり、社会的マイノリティ(障がい者、ひきこもり、性的マイノリティ、少数民族など)とその支援者や家族たちの生の声を取材し、お役立ち情報を発信している。著書に『認知症が見る世界 現役ヘルパーが描く介護現場の真実』(原作、吉田美紀子・漫画、バンブーコミックス エッセイセレクション)がある。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1

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