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「あるある探検隊」でブレイクしたレギュラーの今。“月収ゼロ”時の福祉施設訪問が転機に

日刊SPA! 2024年3月31日 8時54分

2004年ごろ、「あるある探検隊」というキャッチーなフレーズを武器に大ブレイクを果たしていたのが、お笑いコンビ「レギュラー」だ。それから早20年の月日が流れ、彼らの存在は文字通り“あの人は今”状態に。どのように生計を立てているのか。聞くところによると、介護関連の資格を取得し、現在は福祉の現場を主戦場にしているらしい。きっかけや、やりがいを2人に直接聞いてみた。
◆仕事が全くなくなり、月収もゼロになってしまった

――なぜ介護に関わるようになったんですか?

松本康太(以下、松本):もともと僕たちのネタは、おじいちゃんやおばあちゃんにウケが良くて。

西川晃啓(以下、西川):いつか、シニアの方に向けたネタを作りたいなとは思っていました。

――あくまで「いつか」だったんですね。

松本:(島田)紳助さんの番組で、宮古島に1年間移住する仕事があったんですが、移住先から戻ってきたあたりで、全く仕事がなくなったんです。

――2011年ごろのことですね。「激減」ではなく、「全く」ですか?

西川:本当に「全く」で。月収もゼロになりました。

松本:そのころ、心配して声をかけてくれたのが次長課長の河本(準一)さんです。「ボランティアで福祉施設を回ってるから、手伝ってくれへん?」と。実際に施設に行ったら、全然ウケなくて……。河本さんに謝ったら「今日は介護度が高い施設だったから、そう感じただけや。みんなリズム取ってくれたりしてたやん。これってスゴイことやねんで」と言ってくれました。その機会を経て河本さんに、コンビで介護について勉強することを勧められました。

◆資格は取ったものの、最初は仕事に繋がらず…

――介護系の資格を取られたのはいつですか?

西川:2014年に、2か月間学校に通って「介護職員初任者研修」を取りました。これは、「介護の基礎を認識しました」というくらいの資格なんです。

松本:仕事に繋がることはありませんでしたね。

――そんな状況から、どうやって仕事に結びつけていったのでしょうか。

松本:「レクリエーション介護士」を取ってからですね。高齢者の方に向けて、脳トレや身体機能の訓練に役立つ体操をレクチャーすることができる資格です。お笑いで培ったスキルを織り交ぜられますから、仕事として福祉施設に出入りできるようになりましたね。

◆あるある探検隊を高齢者向けにカスタマイズ

――具体的にはどんなことをされているんですか?

西川:まず、あるある探検隊の動きを一緒にやってもらいます。座っている方には手や足だけ動かしてもらって。そのあとに、あるあるを言って「共感できた方は拍手してください」と。

松本:高齢者さん向けのネタだと「ぼっとん便所に人落ちる! あるある探検隊!」とか(笑)。 

西川:拍手をいただいた方に、「経験があるんですか?」と話しかけていきます。思い出しながら話してもらうと、認知症の進行を緩やかにする脳の訓練「回想法」に繋がるんです。

松本:かれこれ20年以上続けてきた芸人としての経験を生かした、「僕たちだからこそできること」をやっているつもりです。

――高齢者の方からの評判はどうですか?

西川:真顔でジーっと見られているだけだと「スベってんな……」と思うこともあります。ただ、終わったあとに「楽しかったよ!」と言ってもらえることも珍しくありません。

松本:スタッフの方からも「あんなに笑っているところ、初めて見ました」と言われるんですが、僕らからしたら「そんな笑ってなかったやん」って(笑)。

西川:高齢になると、本当は楽しくても表情に出にくいのかもしれませんね。

◆芸人ならではの会話テクニックで心をつかむ

――一方で、スタッフの方からの評判はいかがですか?

松本:高齢者の方の気持ちを掴む「お笑い芸人の技術」を教えてほしいと、よく言われます。スタッフの方は、介護のプロであって、人前に立ってそこで関係性をつくるプロではないわけですから。

西川:スタッフさん向けの講演会のお仕事もいただくようになりましたね。

――講演会ではどんな内容を話すのですか?

松本:芸人は笑ってもらうために、まず自分たちを下げます。でも、介護者と利用者の関係性は、お世話をする側とされる側なので、利用者さんよりスタッフの立場が上になってしまってるんですよ。さらに、レクリエーションでは指示する側と指示通りに動く側という、先生と生徒のような構図になります。だから、その関係性を逆転させるところから始めましょうと。

――芸人さんなら、例えば貧乏や容姿など、“自分を下げる武器”を持っていますが、スタッフの方だと難しくないですか?

松本:「地元の話」を展開していきます。例えば練馬に行った時は、僕たちから「練馬の名物はなんですか?」と尋ねると「練馬大根だよ」と教えてくれますよね。そこから、「練馬大根って普通の大根と違うんですか」とラリーが続いて……。これならマイナス点をあえてさらけ出さなくても、利用者さんが教える側になる構図ができるんですよね。

◆普段のネタもウケるようになった

――現在、仕事の比率はどうなっていますか?

松本:さっきお話した通り、10年前くらいは芸人の仕事が全くなくて。それが、介護に関わることで、ベタさとわかりやすさを追求するようになったら、普段のネタがめちゃくちゃウケるようになったんです。

西川:劇場公演やライブの仕事も増えてきましたし、企業パーティーなどの営業に呼ばれる機会も増えてきましたね。

松本:今では、介護とお笑いが4対6くらいの割合です。

――もう一発屋ではないですね。

松本:僕らが一発屋として終わっていたら「フレッシュでもないから、ぬか床にでも入れとけ」って吉本の社員さんに言われていたんじゃないですかね(笑)。介護の現場に足を踏み入れて10年以上経ちましたが、ある意味いい漬物になってきたと僕らは思っています。

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どん底から模索して新しい生きる道を見つけたレギュラーの2人。高齢化社会が進む一方であるからこそ、ますます彼らは引く手数多になっていくはずだ。

<取材・文/Mr.tsubaking>

【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

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