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自宅のコンセントの“最適な個数”は?「実用性に乏しい家」に共通する特徴

日刊SPA! 2024年5月12日 8時52分

今、住宅系のYouTube界隈を騒がせている男がいる。動画チャンネル『ジュータクギャング』の押村知也だ。設計から建築、インテリアコーディネイトに至るまで住宅に関するすべてをこなす住宅のスペシャリスト「住空間クリエイター」である。歯に衣着せぬ彼の発言は、わかりやすくて痛快。『ジュータクギャング』は、更新のたびに視聴者の心をつかみまくっている。 そんな押村は5月2日、自身の考えや思いを綴った初の書籍『美しい家のつくりかた』を発売した。担当の設計者や建築士のセンスを見極めるには、「コンセントの位置を尋ねてみよ」という押村。その意図とは?
◆10年後、20年後にどんな必須家電が出てくるかわからない

家づくりが進んでくると、設計者と話し合いながらコンセントの位置や数を決める段階を迎える。多めに付けておこうとは思うものの、規定数を超えると、オプション料がかかることが多いため、節約と未来への投資の狭間で悩まされることとなる。

「コンセントの数については、ハウスメーカーなどの標準コンセント数が少ない傾向にあり、その倍はあってもいいと思います。家のなかで使うコンセントの数は年々、増え続けているからです。リビングだけを見ても、スマホの充電はもちろん、加湿器や空気清浄機、ロボット掃除機やハンディクリーナー、ペットがいれば自動給餌機、観葉植物には育成ライトなど、住む人の生活スタイルによって実にさまざまです」

ダイニング&キッチンに至っては、さらにコンセントの数が増加傾向にある。

「ダイニング&キッチンはコンセント集中地帯。冷蔵庫や電気炊飯器などの定番アイテムのほか、電気ポット、調理家電、電気圧力釜、ホームベーカリーなどとにかく家電が多い。家を建ててから10年後、20年後にはどんな必須家電が出てくるかわかりませんから、多めに余裕を持っておくことが大切だと思います」

◆コンセントもスイッチも「アドバンスシリーズ」で統一

ライフスタイルの進化によって、新たにコンセントが必要になった場所もあるという。

「玄関は電動自転車の充電用に付けておいたほうがいいでしょう。あとは洗面化粧台のミラーキャビネットのなか。洗面化粧台にコンセントは付いていますが、ミラーキャビネットのなかにあると、電動歯ブラシや電動ヒゲソリなどの充電器を置いたままでトビラを閉めることができます」

コンセント・スイッチという機器そのものにも、押村なりのこだわりがある。

「パナソニックのアドバンスシリーズを採用しています。スイッチ・コンセントといえば、誰もが思い浮かべる大定番商品のコスモシリーズの上位に当たるものですが、高級仕様であるにもかかわらず価格は大きく変わらないという点が魅力です。ちなみに、スイッチも同じアドバンスで統一しています」

マットな質感が美しく、カラーバリエーションも豊富だというアドバンスシリーズ。価格も大きく変わらないのに、なぜ日本中で採用されないのか。

「ハウスメーカーの設計担当者は、施主の意向よりもスピードのほうが大事ですから、わざわざ変える手間が面倒なのだと思います。スイッチやコンセントのデザインは、サイズこそ小さいものの壁の印象を決定づけるものです。例えば、壁に付けるコンセントの位置の高さについて営業部員や建築士、コーディネーターに相談しても誰も正解をもっていません。慣例に従って『うちは床から芯25㎝でやっています』と言うだけでしょう。最適な高さについて真剣に考えたことがないので、ただ慣例に従っているだけなのです」

コンセントを取り付ける高さには、設計者のセンスが現れるという。

「僕は、独自基準で床からコンセント芯で15㎝にしています。一般的な取り付け位置は床から25㎝なので、かなり低い位置ですが、そのほうが美しいからです。15㎝の高さのコンセントにプラグを差し込むと、コードの垂れ方が美しく見えます。壁と床の間にある部材を巾木といいますが、この巾木との間隔もバランスがよくなる。コンセントを挿したときの見え方まで計算するのがプロの仕事です。コンセントとプラグとコード、巾木を計算して位置を決める設計者がいれば、それは信頼できるプロフェッショナルだと思います」

設計者にコンセントの高さを聞いて「25㎝です」としか言われなければ、その人はハズレなのかもしれない。

〈取材・文/ツクイヨシヒサ〉

【押村知也】
(おしむらともや)スタイラス所属。20代で建築、都市計画、インテリア、暮らしについてカナダ、アメリカで学び、輸入住宅などを手掛けるも挫折、住宅とは何かを見失う。大手ハウスメーカーや大手デベロッパーにコンサルティングして感じた「業界の嘘」と「都合の良い慣習」に納得できず、悪しき慣習にまみれた日本の住宅づくりからの逸脱が始まり、住宅業界の異端児となり、1000棟以上の建築設計を手掛ける。2022年7月にYoutubeチャンネル『ジュータクギャング』を開設。近著『美しい家のつくりかた』

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