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小学生には常識のゲーム『Roblox』。全世界で支持される理由とは

日刊SPA! 2024年5月19日 8時51分

―[絶対夢中★ゲーム&アプリ週報]―

◆日本でも爆発的な伸びを見せる『Roblox』
 大人にはピンと来ないけど小学生は”みんな”知っている、そんなゲームプラットフォームが『Roblox』(PC・iOS・Android・PS5・PS4・Xbox Series X/S他)。運営は米Roblox社で、正式サービス開始は2006年と意外と歴史がありますが、コロナ禍を機に全世界でブレイクを果たしました。

 現在1日当たりのアクティブユーザー数は7770万人(2024年3月末)。特にU-13のユーザーが32.1%と多いのが特徴です。欧米圏がメインであるものの、「日本において我々のプラットフォームの成長は前年比150%」と2024年1~3月期の決算説明会でCEOのDavid Baszuck氏が強調するように、日本でも子どもたちの認知度は高まっています。

『Roblox』は単体のゲームタイトルではなく、公式の無料ツール『Roblox Studio』でユーザーが作成したタイトルが無数に並ぶプラットフォーム(総アクティブタイトル数は2024年3月末現在約520万本)。自分のアバターで参加でき、コミュニケーションを図れるタイトルが多いことからメタバースゲームとも呼ばれています。

◆PS5、Switchのような特別なハードが不要に!?

 これまでは「ゲームプラットフォーム」というと任天堂やソニーが提供するゲームハードを指すことが一般的でしたが、現在はハードの縛りのない「場」がプラットフォームになる時代が到来しています。

 たとえば『フォートナイト』もバトルロイヤルのゲームモードがメインですが、自由にコンテンツを作成できるクリエイティブモードやフレンドと楽しむためのパーティーロイヤルモードが用意され、イベントでバーチャルライブが開催されるなど、エンターテイメントの場となっています。メタバースゲームとして『フォートナイト』の登録ユーザー数は約6.5億人以上、『Roblox』は約4億人以上と言われています。

◆『Roblox』ではどのようなタイトルが人気?

 では、具体的に『Roblox』内ではどのようなタイトルが人気なのでしょうか。3タイトルを紹介したいと思います。

・Brookhaven RP
制作:@Wolfpaq

 2020年に制作され、今では数十万人の同時接続者を記録するオープンワールドのサンドボックスゲーム。プレイヤーはゲーム内の町を探索したり、他プレイヤーと交流したり、車をゲットして運転したりと気ままに生活するライフシミュレータとなっています。

・レインボーフレンズ
制作:Roy & Charcle

 奇妙な世界に連れ去られた少年少女となり、ぬいぐるみのようなモンスターから逃げ回りながら指定されたアイテムを集めていくポップなテイストのホラーアクション。1ゲームの参加人数は最大15人。他プレイヤーと協力することで攻略しやすくなります。

・ひみつのおるすばん
制作:Chocolate Ants

 ゲーム実況動画で火がついた、日本でファンの多いタイトル。広い部屋のなかでリンゴやバナナなどさまざまな食べ物に変身して動き回り、隠された食べ物を探すカジュアルゲームです。食べ物たちの個性によって探索範囲が変わります。

 ほかにも脱出アクション、ゴルフやバスケットボールなどのスポーツ、タワーディフェンス、対戦シューティング……と多彩なジャンルのタイトルがホーム画面に並んでいます。サムネイルと同時接続者数を見て、気軽に参加できるのがポイント。PS1時代を彷彿とさせるテイストのタイトルが多く、クオリティは玉石混交です。

◆プログラミング教育の教材としての側面も

 それでは、『Roblox』はどうしてここまで人気となったのでしょうか。その理由を3つ挙げていきたいと思います。

(1)プレイするまでのハードルの低さ

 なんといっても『Roblox』の魅力は、無料で手軽に遊べること。特別なハードがなくてもタブレットやスマホなど、比較的低スペックなデバイスにもインストールでき、しかも友達とチャットしながら遊べます(異なるハード間のクロスプレイにも対応)。何をすればいいか直感的にわかるタイトルが多く、プレイする前の心理的な壁が低いのも特徴です。

(2)人気ゲーム実況者の影響

 YouTubeのゲーム実況動画で小学生に支持されている『Roblox』。「まいぜんシスターズ」や「ちろぴの」など、小学生人気ランキング上位のゲーム実況者が、『Roblox』を積極的にプレイしています。子どもたちがそれを見て、真似してプレイするという流れで、YouTubeのゲーム実況動画が『Roblox』の人気を支えています。

(3)プログラミング教育への活用

 プログラミング言語を知らなくても使える公式ツールによって、誰でもゲーム制作ができるのも『Roblox』の特徴のひとつ。これがプログラミング教育の一環として教育現場からも注目を集めています。実際に『Roblox』を教材に使う塾も出てきています。教育的というイメージが、ゲームが持つネガティブな印象を薄めていると言えそうです。

◆今後の『Roblox』の展開は?

 5月9日に発表されたRoblox社の決算は、2024年通期の売上高見通しを従来からやや下回る40億~41億ドルに修正し、前年比約40%増ではあるものの、市場の高い期待には応えられない数字でした。とはいえ、日本やインドでは今後も大きな成長が見込まれています。

 未配信のNintendo Switchにも近々配信されるという噂もあり、実現すれば日本でもさらなる大ブームが起こるかもしれません。2023年6月には電通がRoblox社とパートナーシップ契約を締結。今年3月には住友商事がメタバースコンテンツの提供を開始するなど、日本の大手企業の動きも活発化しています。

 このように『Roblox』がさらに存在感を増していくと、既存のハードホルダーの脅威になるかもしれません。コンシューマゲームのタイトルと、『Roblox』でアップされているカジュアルなタイトルでは当然クオリティは桁違いですが、1日のゲーム時間を奪い合うと考えれば、強力なライバルと言えるでしょう。

 Nintendo Switchの後継機に関する情報はベールに包まれたままですが、『Roblox』のように簡単なツールでユーザーがゲームを作ってアップし、そこに世界中のプレイヤーが集まってコミュニケーションする……そうしたスタイルをサポートするハードになる可能性は大いにあります。

 今後、日本で『Roblox』がどこまで浸透するのか、それに対してハードホルダーはどのような反応を見せるのか。「ゲーム実況」「VTuber」「メタバース」「AI翻訳」などのキーワードとも絡み、大きな動きになりそうです。<文/卯月 鮎>

【卯月鮎】
ゲーム雑誌・アニメ雑誌の編集を経て独立。ゲーム紹介やコラム、書評を中心にフリーで活動している。雑誌連載をまとめた著作『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)はゲーム実況の先駆けという声も

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