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2年目も熱い『THE SECOND』。名勝負の分析から時計の位置が変わったことまで、芸人たちの語りが止まらない

日刊SPA! 2024年5月28日 15時55分

 結成16年以上の漫才師が1vs1で熱い戦いを繰り広げた『THE SECOND〜漫才トーナメント〜2024』。2年目を迎えたこの賞レース、振り返る時間も楽しもう。
◆2年目も盛り上がった『THE SECOND』

 5月18日にフジテレビで放送された『THE SECOND〜漫才トーナメント〜2024』。今年で2年目となるこの賞レースは、結成16年以上を条件とする、まさにベテランたちの「セカンドチャンスの場」だ。

 ギャロップが優勝を収めた昨年は、ライブシーンでは有名であってもお茶の間にはほとんど知られていない者たちの活躍、人気者であってもネタをテレビでやる機会のないコンビの登場、さらにはマシンガンズの大ブレイクなど、さまざまなトピックとともにお笑いファンにとってはいい思い出として強い印象を残した。

 今年、決勝の8組が発表された際には昨年に輪をかけて地味な顔ぶれに心配する声も聞かれたが、やはり名勝負の連続となり、結成19年目のガクテンソクが見事優勝を果たした。そんな『THE SECOND』をまだまだ味わい尽くしたい。

◆1位2位を番組に呼んでいたオズワルドの先見の明

 まずはチャンピオンとなったガクテンソクの優勝記者会見(『THE SECOND 2024 優勝記者会見』フジテレビ/Tver 6月1日23:59までの配信)を。

 金属バットのウケ方を見て1回戦直前でネタ合わせしていないネタに変えたという裏話から、6分間という“中距離走”の面白さ、昨年の『THE SECOND』でマシンガンズに受けた衝撃、解散危機など、中身の詰まった会見だった。

 5月22日に開催されたライブ『オズワルドさんたら、もう!』(配信購入期限5/29 正午)。決勝進出者が決定する前どころか、ベスト32のタイミングで優勝したガクテンソクと準優勝のザ・パンチにオファーをしていた先見の明にまずオズワルド(伊藤俊介、畠中悠)自身が喜び、「金賭けときゃよかった!」と伊藤が叫ぶところからスタート。

 ザ・パンチの二人が最終決戦開始2、3秒で負けを確信した話、ガクテンソク・よじょうが優勝決定時にフライングガッツポーズしてしまったことなど、臨場感あるエピソードが続く。予選時にガツガツしていなかったザ・パンチのノーパンチ松尾に対して伊藤が「カッコつけんな!」と喝を入れたエピソードもいい。

 畠中による「ルミネ(theよしもと)を主戦場とするザ・パンチ、ガクテンソクと、大宮(ラクーンよしもと劇場)・幕張(よしもと幕張イオンモール劇場)をホームとするタモンズとの違い」論も興味深いものだった(個人的には、ガクテンソクこそ幕張がホーム、とも思うけれど)。

 さらに、3組が今後の『THE SECOND』に思いを馳せ、1度にネタ3本消費の厳しさから「毎年出られないようなルールにしては?」という提案が生まれたり、ガクテンソク・奥田修二の「このままでは“6分M-1”になってゆく(評価される漫才が『M-1グランプリ』と変わらないものになっていく)かもしれない」という予想も語られた。

◆全てを見ているダイタクの存在

 もうひとつ、当事者が振り返るライブで必見なのが、タモンズのホームこと大宮ラクーンよしもと劇場で行われた『第弐の漫才頂上決戦2024 緊急アフタートーク』(5/25開催、配信購入期限6/1正午)。

 こちらはガクテンソク、ザ・パンチに加え、タモンズ、ななまがりが参加し、会場の観客審査員がつけた1~3点の点数分布まで詳細に確認しながら第一試合から決勝までを細かく振り返っていく。昨年も大宮で開催されたこのライブ、決勝当日に前説を務めたダイタク、イチキップリンがいるのがかなり大きい。

 3人による前説の再現でひと盛り上がりするのも楽しいし、冷静な立場で一部始終を見ているダイタクの2人が絶妙な質問を投げかけ、当事者たちが語るエピソードを補足し、勝敗についても客観的な意見を投じていくのがじつに見事。演者に6分間を知らせる時計の位置が昨年と少し変わったことなんて、ダイタクがいなければ永遠に語られなかったかもしれない。

 決勝進出はしていないものの、当日裏にいた囲碁将棋の振る舞い、なかでも囲碁将棋・文田が暗算で誰よりも早く合計点を出してしまう弊害、突如起こったタモンズ・安部浩章のイケメン疑惑、ななまがりのつかみはあれでよかったのか問題など、具体的なエピソードがどんどん出てきて本編の楽しさが増幅されていく。

 それぞれの対戦で誰がどちらの側にいたのか、東京吉本と大阪吉本が分かれる中、どっちつかずになってしまうななまがりの逡巡までもが語られた。そんな大充実のライブの最後のトピックが「打ち上げでななまがり・初瀬&タモンズ・安部、肉食べ過ぎ疑惑」なのは、いわゆる「大宮らしさ」と言えるかもしれない。

◆「公式セカおじ」怒涛の分析トーク

 YouTubeでは、各コンビ公式や交流のある芸人たちのチャンネルで振り返りがされているが、どれか1本を選ぶとするならば、やはり昨年に引き続き令和ロマンの振り返り配信を推したい。

 今年とうとう抽選会のMCという役割を与えられ(フジテレビ/Tver『グランプリファイナル抽選会・記者会見』)、「公式セカおじ」(『THE SECOND』おじさん」)となった高比良くるまと、「セカおじ」を見るポジション=「セカおじおじ」を称する松井ケムリが、5月21日に生配信で『THE SECOND』を振り返った。

 くるまの高速トークとそれに対して的確に相槌を打つケムリ、賞レース考察動画になると普段よりもさらにスピードが増す彼らの会話自体に目が行ってしまい、「0.75倍推奨」「聞き取れた!」といったフレーズでコメント欄が溢れてもいるが、やはりその中で展開されるくるまの切れ味鋭い分析には驚かされる。

 3本が必要となる戦いにおいてどこに一番強いネタを持ってくるかの策略、ネタから「降りる」ことが客席審査員に与えた印象など、現役で『M-1』という賞レースに挑んでいる者ならではの視点が面白い。その中でよじょうが「指輪3ヶ月分」というフレーズをずっと言えていなかったという指摘からは、くるまが配信で、あるいは劇場で直接、彼らの漫才を見てきたことが伝わり、凄みさえ感じた。

◆「『THE SECOND』のMCが一番たいへん」

 最後に、ラジオも1本紹介しておきたい。『東野幸治のホンモノラジオ』(5/24放送、5/31までタイムフリーで聴取可能)では、東野幸治が『THE SECOND』を振り返って対戦後の時間をMCとして回す大変さを語り、「いろんな人がMCをやってもいいのでは」という話をしている。

 たしかに、昨年と今年で『THE SECOND』の体制は変わった。また1年経てばさらにさまざまな変化があるかもしれない。来年がどうなるかはわからない。

 けれど、建てつけが多少変わろうとも、やはり16年を超えるキャリアをもつ漫才師たちの戦う姿には胸打たれたし、1vs1だからこそ生まれる対戦者たちの連帯感は他の賞レースにはない魅力だ。2年めも熱い戦いを見せてくれた今年の『THE SECOND』をもう少し味わいたい。

<TEXT/釣木文恵 イラスト/まつもとりえこ 編集/アライユキコ>

【まつもとりえこ】
イラストレーター。『朝日新聞telling,』『QJWeb』などでドラマ、バラエティなどテレビ番組のイラストレビューを執筆。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身。X(Twitter):

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