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<漫画>現役グラドルがパパ活の“買う側”に覚えた違和感。「買うあなたも当事者なんじゃないですか」

日刊SPA! 2024年6月4日 15時53分

「#パパ活初心者」「#パパ活大阪」「#パパ活募集」――。
X(旧:Twitter)で「パパ活」と検索すると、このようなハッシュタグをつけた投稿が多数見つかる。パパ活とは、パパと呼ばれる男性と、食事やデート、ときには性的関係を持ち、金銭的授与を受けることを指す。

最近ではドラマの題材にもなっているように、年々認知度が高まっている言葉だが、もちろんそこには高いリスクもあり、金銭授与の際の諍い、男性側に恋愛感情が入るなどが原因で、殺人、殺人未遂事件も起きている。

この一筋縄ではいかないテーマを扱っているのが、現在隔月刊青年向け漫画雑誌『グランドジャンプめちゃ』にて連載中の『スワイプ』だ。原作者はフリーライター、グラビアアイドルの渡辺ありさ氏。どういった経緯で作品化されていったのか、そして彼女が見てきたパパ活のリアルな実態とはーー。

◆女性からの反響が大きかったのが意外

――テーマがテーマだけに、反響はかなり周りであったんじゃないですか。

渡辺ありさ(以下、渡辺):そうですね。友人からの反応も多かったんですが、実際にパパ活女子の方が読んでくれて、それをツイートをしてくれて“プチバズ”が起こったのが、個人的には嬉しい出来事でした。男性青年誌に連載されている漫画なので、セクシーなシーンがほぼ毎回入っているにもかかわらず、女性読者からのフィードバックが結構あったんですよね。

――男性青年誌において珍しいことのような気がします。

渡辺:それほど“当事者性”を持ったテーマなんでしょうね。いま普通に働いている人でも、過去に手を出してしまったことがあるとか。アプリで会っておじさんと寝て……みたいな内容だけではなく、男女関係のドロドロしたところを厚めに描くよう意識しています。

◆“専業”のパパ活嬢は「ほとんどいない」

――渡辺さん自身、なぜこの題材を取り上げようと思ったんですか?

渡辺:ライターや漫画原作以外に、グラビアもやっているんですけど、「ミス東スポ」になったあとに、東スポさんで連載をさせてもらえるってことになったんですね。いろいろと、やりたい題材を挙げていくなかで、一番編集者に刺さったのが、「私の友達がパパ活してる」話でした。グラドルがギャンブルの話で連載をやるっていうのは結構あったんですけど、「パパ活」は意外と今までなかったので面白がってもらえて。

――たしかに、ファンがいる人がパパ活を取り扱うのは、チャレンジングなことですね。

渡辺:そこからは、自分のツテを駆使したり、それこそパパ活アプリを使って、「面白い話聞かせてください」と、パパ側に会ってみたりっていうのを積み重ねて、半年ぐらい連載しました。虚実入り混じってはいますが、小ネタの部分は、大久保公園周辺を変なYouTuberが毎日歩き回っているとか、なるべくリアルに起こってることを入れるようにしています。漫画になったきっかけは、その連載を読んでいた編集者が声をかけてくれた形ですね。

――いま、パパ活は“専業”でやっている人が多いんですかね?

渡辺:ほとんどの人が専業ではないですね。多いのはタレントさん。芸能だけで食べていくのはハードルが高い業界だったりするので……。あとは、女子大生、ラウンジ嬢、メンズエステ勤務とかが体感としては多いイメージがあります。相場的には食事で1〜2万円、「大人(※性行為)」で5万円で会うみたいですね。見た目は派手な感じな子もいれば、ユニクロ中心のコーデも、地雷系ファッションの子もいます。

◆“海外パパ活”をする前には「遺書」に近い書き置き

――相場の話なんですが、地域差もあるような気がしますね。

渡辺:たしかにピンキリですね。地方によっては1.5万円で体を売る子もいますし、「海外パパ活」なんかは常軌を逸していて、中国とか海外に一週間滞在して、200万ほどもらって帰ってくるみたいなんです。

――それは、1日中一緒にいるスケジュールですか?

渡辺:いえ、お昼は“パパ”が仕事をしているので、その間はお買い物に行ったりとか自由にして夜だけ一緒に過ごすみたいなスタイルです。気に入ってもらえたら、マンションを買ってくれるケースもあるようで、そこに毎年行く……みたいな。コロナ前はそういった“海外パパ活バブル”みたいなものがあったみたいです。

――海外だからそこまでインフレを起こしているんですかね。

渡辺:額は向こうの方が大きいんでしょうけど、日本でも、いわゆる“港区女子”が20人ぐらい集まった正月のギャラ飲みで、2時間で一人14万円をもらった話を聞きました。おそらく、よっぽどの富豪が主催していたんでしょうね。全然違う世界の話すぎて……。

――そこには何かしら危険性がはらんでいるはずなのに、目先のお金が優先されるんですね。

渡辺:特に海外でパパ活するなんて、何があっても事情がわからないじゃないですか。知り合いの子は、「いついつまでに連絡がなかったら事件に巻き込まれたと思ってください」などと、 連絡を残してから飛び立っていると言ってました。そこまでしてパパ活するのは、自分が一番高値で売れるうちに稼いで、貯金するなり、留学するなりしたいからだと。ただ、やっぱり聞いていて、老婆心ながら心配になっちゃいますよね。そんなに無理しなくていいのに……って。

◆「1人1万」…回転率を上げることを重視するケースも

――今すぐお金がほしい人、月のお小遣いが多少増えればいい人、事情によってリスク度も変わってきそうです。

渡辺:パパ活とは違いますけど、“立ちんぼ”をしている子で、1人1万で回転率を上げて、一日10人で10万円みたいなことを言っていて、「病気は怖くないのかな……」とか思ったりします。

――ちなみに、パパ活の形態は食事や買い物、性行為が一般的なんでしょうか。

渡辺:そうですね。ただ、「SM専門のパパ活」っていうのもあるみたいなんですね。SなパパとMの女の子、MのパパとSな女の子、性癖同士でマッチングさせるという。それ自体は、「交際クラブ」という、男女ともに審査が必要な、パパ活とは形態が違うところに所属する必要があります。

◆「他人事」のように話す“パパ”達

――先ほど、パパ側の人も会っていると話していましたが、どういう人が多いんですか。

渡辺:私が会ったのはすごい普通というか、むしろちゃんとされてた方でしたね。ビシッとスーツを着ていて、外資系企業に勤めていると言っていました。アプリに登録している理由としては、「若い女の子と話がしたい」と。職場が男性ばかりで若い人もいなくて、でも結婚していて、奥さんも子供もいて、自由に遊べなくて癒やしがほしい……みたいなところが動機でしたね。ただ、話を聞いていて、違和感を覚えることがあって。

――「違和感」とは?

渡辺:どこか「他人ごと」みたいに話すんですよね。「いやあ、今時の子は大変だよね」というように。いつの時代も、売春の問題がメディアで報じられるとき、売る側、女性のほうだけがクローズアップされてるのは非対称性を感じるというか、男性側に何の責任もないのかって言ったら、そうじゃない。「買うあなたも当事者なんじゃないですか」って思っちゃうんですよね。

――この話題自体、すでにカジュアルになりすぎているんでしょうね。

渡辺:以前は「援助交際」という名前で、アングラな印象はあったんですけどね。『スワイプ』に関しては、 私自身、「これらは全てフィクションです」っていう前提で打ち出しているので、この漫画を通じて何か社会に訴えたいことがあるわけではありません。でも、このセンシティブな題材を、エンタメとして消費するだけになってしまうのは良くないということも理解しています。漫画とは別に、社会問題としての「パパ活」について、自分自身がもっと考えを深めていかなくてはと思っています。

<取材・文/東田俊介>

【東田俊介】
大学を卒業後、土方、地図会社、大手ベンチャー、外資など振り幅広く経験。超得意分野はエンタメ

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