Infoseek 楽天

新日本とUWF「熊本旅館破壊事件」の真相。「あん時は武藤(敬司)も思いっきり殴ってたもんな」

日刊SPA! 2024年6月10日 8時52分

第一次UWFの旗揚げから今年で40年。アントニオ猪木のために設立され、カルト的な人気を誇った団体の「40年目の真実」とは? 愛弟子だけが知る「猪木の素顔」とは? アントニオ猪木とUWFに人生を翻弄された前田日明と藤原喜明の二人によるNGなしのガチンコ対談をお送りしたい。気になるテーマは「熊本旅館破壊事件」についてだ。
(本記事は『アントニオ猪木とUWF』(宝島社)より、一部抜粋したものです)

◆「熊本旅館破壊事件」とは何だったのか

新日本とUWFの業務提携から1年。選手間の緊張関係はなおも続いており、試合もスタイルの違いから噛み合わないことが多く、興行成績もなかなか上向かず低迷していた。そんな状態を解消すべく「87新春黄金シリーズ」の九州巡業中、熊本県水俣市の旅館で両軍のわだかまりを解くべく新日本とUWF合同の宴会が催された。

しかし、想像以上に泥酔した選手たちが次々と暴れた結果、旅館をメチャクチャに破壊する事態に発展。融和のための飲み会が、まったくの逆効果となってしまった。これは「熊本旅館破壊事件」として今や伝説となっているが、いったいそこで何が起こったのか? 参加者全員が酔っ払い状態だっため、様々な証言の食い違いが生じ、真相は藪の中となっている。

ここではあらためて、前田、藤原の目から見た熊本旅館破壊事件を語ってもらおう。

◆無礼講だから、「酔っ払ったフリして絡む」

──新日本とUWFの緊張関係が続くなか、1987年1月に熊本県の旅館で両団体の親睦を図る宴会が催されたものの、みんな酔っ払って大変なことになりましたよね。通称「熊本旅館破壊事件」と呼ばれていますが、あの日のお二人から見た“真相”を聞かせていただけますか?

前田日明(以下、前田):あの飲み会はね、俺たちがリング上でしょっちゅう衝突しているから、小鉄さんが「一度、みんなで酒を飲みながら話でもしたらどうだ」って言って行われたんだよ。

藤原喜明(以下、藤原):べつにああいう宴会っていうのは、珍しいことじゃないんだよ。昔は一度巡業に出ると1カ月以上は出ていたし、休みも少ないからストレスが溜まるわけだ。そうすると、たまに試合が休みになる日の前日、みんなで酒盛りしてストレスを発散させるんだよ。この時ばかりは無礼講だから、俺らも酔っ払ったフリして猪木さんや坂口さんに絡むわけだよ。そしたら猪木さんたちは大人だから、ちゃんと話を聞いて、「まあまあ、お前も大変だろうけど」って慰めてくれるんだ。

◆ぶん殴り合いをやっても、次の日には…

──長い巡業での大切なガス抜きの機会なんですね。

藤原:前田なんか俺にも絡んでくるからな(笑)。

──そうなんですか(笑)。

前田:藤原さんと酒を一緒に飲むと、必ず俺が先に酔っ払うからさ、すごく嫌がるんだよね。俺が酔っ払って「藤原さん、頭突きお願いします!」とか言って、最初は「やらねえよ」って嫌がるんだけど、俺があまりにもしつこいから、軽くゴツンと頭突きすると、「藤原さんの頭突きはそんなもんじゃないです! もっと真剣にやってください!」って言ったりして(笑)。

藤原:ホントにアホだよ、コイツ(笑)。でも、昔はおおらかだったよな。酒を飲んでぶん殴り合いをやっても、次の日には「あれ? なんだお前、その顔は?」「そっちもずいぶん腫れてますけど、どうしたんですか?」「バカヤロー、お前が殴ったんだろ!」みたいなことが、ごく普通にあったからな。俺と荒川さんが酔っ払って殴り合いをして、人がいい坂口さんが「まあまあ」って仲裁に入ると、間違ったフリして坂口さんを殴っちゃったりな(笑)。昔はそんなことばっかりしてたけど、後腐れなんてなんにもなくて楽しかったよ。

◆前田VS武藤の真相は?

前田:そういう雰囲気のなかで俺は新弟子時代を過ごしたんで、だから熊本の旅館でやった宴会でも、武藤と「ジャンケンして勝ったほうが殴ろうぜ」ってやってんだよ。

──巡業中のレスラー同士の宴会では普通の話というか(笑)。

前田:普通の話だよ。だから「前田が武藤をイジメてひどい」みたいなことを言うヤツがいるけど、違うよ。

藤原:あん時は武藤も思いっきり殴ってたもんな。前田がバーンとぶん殴ったあと、「さあ、俺を殴ってみろ!」って言ったら、武藤は「先輩を殴れませんよ」って言ってたのに、数歩下がったと思ったら、ダーッと助走をつけて殴ってたから(笑)。

前田:あの時に髙田が俺を羽交い締めにしたんですよ。

藤原:そうだったっけ?(笑)。それで武藤に殴られた前田が、並んだ御膳の上にバシャーンって倒れてグチャグチャになってさ。

──あの殴り合いは、武藤さんが「前田さん、あんたのプロレスはつまらない」って言ったのがきっかけと言われてますけど。

前田:ウソだよ、そんなの言ってないよ。

──言ってないですか。

前田:言えるわけがないじゃん。あの時、そんなことを言ってたら殺してるよ(笑)。アイツ、すごいホラを吹くんだよ。カッコつけてさ。

藤原:まあ、プロレスラーらしいよな。殴り合いだって、レスラー同士はただのコミュニケーションだからな。

◆猪木は“ジョッキ焼酎”を1秒で飲み干した

前田:あの時、俺が首謀者になって猪木さんを酒で潰してやろうと思ってさ。ジョッキに焼酎をロックで入れて、猪木さんの前に20人くらい並んで「猪木さん、お疲れさまです!」って、1対1のイッキ飲みで潰しにいったんだよ。そしたら猪木さんが、「一人ずつ相手をするのは面倒くさい。よーいドンで誰がいちばん早く飲み干すか競争しよう。一番だったヤツがイチ抜けだ。そのほうが面白いだろ?」って言ってさ。それで「せーの、乾杯!」ってやったら、猪木さんは「カッ!」って1秒で飲み干して終わり。

藤原:猪木さんにイッキ飲みでは誰もかなわない。猪木さんはビールの大ジョッキを4秒だからな。アゴがでかいから、そこに溜めてるんじゃないかと思うんだけど(笑)。

──ペリカンじゃないんだから(笑)。

◆「10~20分の間に20杯以上」イッキ飲みさせ…

前田:それで猪木さんがイチ抜けしちゃったから、今度は坂口さんを潰してやろうと思って、またみんなで坂口さんの前に並んだんだよ。そしたら坂口さんは真面目だから全員に受けて立ったんだよね。20何杯だよ? そしたら10~20分の間に20何杯もイッキで飲んだもんだから、さすがの坂口さんも酔っ払ってね。大の字になって手足をバタバタさせながら「前田~、蹴れるもんなら蹴ってみろ~~!」とか言ってね(笑)。

藤原:坂口さんは酒が強かったけどな。酒盛りをやって最後まで残るのが、坂口さんと俺と荒川さんだから。

前田:でも、あの時は坂口さんも酔っ払ってたんで、蹴飛ばしてやりましたけどね(笑)。

藤原:あの日はメチャクチャだからな。

──藤原さんも荒川さんと二人で「根性があるなら、ここから飛び降りてみろ!」「やってやろうじゃねえか~!」とか、宴会場は7階だったのに窓を開けて言い合いしてるから、必死に止めたって越中詩郎さんが言ってました(笑)。

藤原:それは覚えてないな。俺も相当酔っ払ってたからな(笑)。

◆日本刀を振り回しながら「どこだ猪木~!」

前田:あとは後藤(達俊)が酔っ払ってどんちょうにぶら下がってターザンをやってるから、「ダメだ。お前、こっち来い!」って呼んで。「猪木さん、呼んでこい!」って言って、宴会場に飾られてた日本刀を渡したら、それを振り回しながら「どこだ猪木~! 出てこい!」って叫んで。そしたら、真後ろに猪木さんがいて、そのまま素に戻って「お疲れ様でした!」って言って殴られたりね(笑)。

──ジョージ高野さんがドロップキックで旅館の柱を折ったというのは誤情報なんですよね?

前田:柱にドロップキックっていうのはテレ朝がどっかのバラエティ番組で、古い一軒家をレスラーが10人くらいでぶっ壊すというのをやったんだよ。その時にジョージが柱にドロップキックしてね。

藤原:正確に言うとドロップキックじゃなくて、二人でジョージを担ぎ上げてドーンと蹴らせたんだけどね。あの時の一軒家を壊したのと、宴会で旅館を壊した記憶がゴッチャになってるヤツがいたんだろう。

──旅館が壊れ始めたのは、トイレが詰まってからなんですよね?

藤原:あの時は、旅館の料理以外に俺が猪木さんから「おい、わかめスープをつくっておけよ」って言われたんで、つくっておいたんだよ。猪木さんは俺のわかめスープが好きだからさ。そしたら、みんな酔っ払ってトイレに吐くもんだから、水洗トイレにわかめが詰まって逆流してな。それが廊下をつたって階段まで流れてたから。

──汚いですね(笑)。

◆修理費は“中抜き”されていた?

藤原:それからトイレの戸は引けば開くのに一生懸命押して「このドア壊れてる!」って、蹴り破るヤツが出てきたりな宴会場のお膳はメチャクチャだし、布団を出してそこに吐くヤツもいて布団もダメにして、最終的には旅館がボロボロになったんだよ。でもって次の日、猪木さんが坂口さんに「おい、いくら取られた?」って聞いて、「400万円でした」って言われたら、「まあ、安かったな」って言ったというね。

前田:いや、小鉄さんは700万円って言ってましたよ。

藤原:ちょっと待て、最後まで聞けよ。坂口さんは400万円って最初に言われたらしいんだけど、後日社員の誰かがもう一度見積もりを取って、またそれを上に計上してやってたら、最終的には1000万円になってたって言ってたよ。みんな途中で懐に入れて。そういう会社だったんだよ。そりゃ、あんだけ客が入っても自社ビルなんて一向に建たないわけだよな。

<談/前田日明・藤原喜明>

この記事の関連ニュース