思うのです。かばんの中には、その人の生き様が詰まっている、と。何でも入る大きなトートバッグが好きな人、軽くて小さなサコッシュでどこでも行く人。バッグの中がごちゃごちゃの人、逆にスッキリしている人――。
当企画「かばんの中身拝見」は、老若男女さまざまな人のバッグを垣間見る、巷に溢れる記事ではありますが、ちょっと気になるあんな人やこんな人にビシバシ取材をしていく所存ですので、どうぞよろしくお願いします。
「かばんの中身拝見」、第5回は、ロックンロールベーシストのシンノスケBOYs(@n_shukugawaboys)さんです。
◆愛用かばんはなんとベビーカー
シンノスケBOYsさんは、コアなロック好きには周知のバンド、N’夙川BOYSやキングブラザーズのメンバーとして活動し、2023年からはニューバンド「ひょうへんクラブ」を始動。7月からは初のCD音源『LIVE at ESQUERITA68』をひっさげツアーがはじまります。
シンノスケBOYsさんの愛用かばんはなんとベビーカー(もはやバッグと呼ぶのもはばかられますが……)。約15年間同じベビーカーでツアーでめぐってきているそう。
インスタグラムでベビーカーで楽器を運んでいるということを知り、そのユーモラスな姿と「なんでベビーカー?」という素朴な疑問により、取材を敢行いたしました。
◆なぜ、「ベビーカー」で機材を運んでいるのか…
実はベビーカーをキャリーケース代わりに使うのを思いついたのは、シンノスケBOYsさんではありませんでした。
「イギリスツアーに行った時に、向こうのバンドがショッピングカートで機材を運んでいてるのを見たマーヤ(N’夙川BOYS、キングブラザーズのバンドメンバー)が、ベビーカーで機材を運ぶのを思いついて……」
使ってみたところ、その使い心地は最高だったそう。それもそのはず、ベビーカーは産まれたての命を運べるぐらいに頑丈です。なんせ、寝ている赤ちゃんを運ぶことを想定して設計されているのですから、振動を吸収するサスペンションも優秀です。
「よくある楽器用のカートはコロコロがすぐ壊れるけど、ベビーカーは丈夫すぎるぐらい丈夫で、15年間使ってもビクともしない。しかも駅の改札とかも通れるサイズに設計されているし、軽いし、折りたためるし、めちゃくちゃ使い勝手がいい」
◆機動力・搭載力抜群! ベビーカーはバンドのツアーに合理的だった
通常楽器を運ぶのに使用されるキャリーは、金属製の骨組みにタイヤがついただけの簡素な形状で、荷物をゴムでくくりつけるタイプのものが主流。比較してみると、ベビーカーは機動力、搭載力ともに圧勝です。クッション性にも優れているので、楽器や機材が傷みにくい効果もありそう。
しかもベビーカーは折り畳めば、電車や船、飛行機にも積み込めるため、日本だけでなく海外でライブする際も、このベビーカーで荷物を運べるのです。たしかに聞けば聞くほど、ベビーカーで楽器を運ぶことは理にかなっています。でも、使うのには抵抗がある人がほとんどのよう。
「ベビーカーめっちゃええでって、いろんなバンドマンに伝えたんやけど、真似した人は誰もおらんかった」
今のところ、ブームの兆しはなさそうです。
◆バッグの中にはロックンロールとピンクが詰まっていました
シンノスケBOYsさんのバッグ(ベビーカー)の中身を拝見しました。ベビーカーの搭載力に驚きを隠せない、大量の荷物が並びます。
・ベース
・豹柄のトランク
・ピンクのドキュメントケース
・赤いトートバッグ
・オレンジの巾着
・特大レジ袋
・ピンクのダッフルバッグ
シンノスケBOYsさんのアイテムは、ピンク色が多めです。ベースストラップもピンク、着替えを詰め込んだJIBのボストンバッグもピンク、フライヤー(ライブチラシ)を収納しているキャリーケースもピンク。
前回かばんの中身を拝見させてもらった三田みどりさんは緑色、その前の舘神龍彦さんは青いアイテムが多かったように、かばんの中を覗けばその人の好きな色が一目瞭然という人はけっこう多そうです。ただしシンノスケBOYsさんはかばんの中身を覗き見るまでもなく、一目見ればピンクが好きなのがわかってしまいますが……。
◆ツアー中のバンドマンに必要なものは、ベビーカーに過不足なく搭載
ベビーカーで運搬されているバッグたちの、それぞれの中身は、楽器、エフェクターとコード、ライブチラシなどの紙類、貴重品、寝袋、物販用のグッズに着替えなど、必要なものばかりでした。
硬質プラスチックでできたピンク色のドキュメントケースには、フライヤー(ライブ告知のチラシ)や、紙類をまとめて収納。折れず曲がらず持ち運ぶためのバンドマンの知恵! 赤いトートバッグは、現在活動しているバンドひょうへんクラブのオリジナルグッズ。貴重品などを入れています。
オレンジの巾着は寝袋。非常時にも暖を取れて、どこでも眠れるお助けアイテムです。ベビーカーのシート下のバスケットにいつも忍ばせています。物販用のTシャツは特大サイズのレジ袋に保管。透明なのでTシャツの在庫色がすぐにわかるのも、地味に便利。
ピンクのダッフルバッグはJIB。兵庫県西宮市発祥のバッグメーカーで、神戸・夙川・芦屋あたりの人にはおなじみのブランドです。ヨットのセイルクロスを使ったバッグは軽くて丈夫。シンノスケBOYsさんは着替えなどを含めた私物を詰め込んでいます。
バッグの中にはシンノスケBOYsさんのトレードマーク、ティアドロップ型のサングラスも入っていました。
◆DIYでカスタムしたダンエレクトロのベース
ここからは、特に気になるアイテムにスポットを当てていきます。ベースはダンエレクトロのロングホーンベース。ハイフレット(ベースネックの下の方)まで弾きやすい個性的なシェイプが特徴で、竪琴のような独特なビジュアルをしています。
ずいぶん古びているなと思ったら、100均でスプレーペンキを買ってきて、エイジングカスタムを施したそう。大胆なDIYで唯一無二のオリジナルベースが完成しました。
◆豹柄のトランクにはエフェクターと接続ケーブル
ド派手な豹柄のトランクには、バックステージパスと、エフェクターの設定をマークした養生テープが貼り付けてありました。
バッグの中にはベースのサウンドに変化を持たせるエフェクターと、ベースとエフェクターとアンプをつなぐためのシールド。
シールドはワイヤレスやストレートタイプを選ぶ人が多いなか、あえてのカールコードを選択するあたりに、骨太なロックスタイルを感じさせます。カールコードはビヨヨーンと伸びるので、シンノスケBOYsさんがベースを持ったまま客席にダイブしても安心です。
◆かばん選びにその人の人間性がにじみ出る
お話を伺ってベビーカーが楽器や機材、荷物を運ぶ際に合理的であるということは、心から納得できました。ですが納得できたところで「赤ちゃんの乗りものを押しながら街を歩くのは恥ずかしい」と他のバンドマンは真似しない訳です。
でも実は人目を気にせず、自分が良いと思っているものを堂々と使っちゃう方がかっこいい。ベビーカーが使いやすいからベビーカーを使うし、ピンクが好きだからピンクの服を着るし、ピンクのアイテムを持つ。なんかシンプルだしストレートだし、かっこいいなぁと思ったのでした。
<TEXT/大木奈ハル子>
【大木奈ハル子】
ライター・ブロガー。アメーバオフィシャルブログ「せまいえ(1ルームで2人暮らし)」運営。狭い家で暮らしたい系ミニマリスト。チェーン店のモーニング食べ歩きと、ひとさまの暮らしを覗き見ることをこよなく愛する。著書に『台所図鑑』(大和書房)。チェーン店のモーニング愛好家として『THE TIME,』(TBS系)に出演。Xアカウント:@tei_nai
―[かばんの中身拝見]―
当企画「かばんの中身拝見」は、老若男女さまざまな人のバッグを垣間見る、巷に溢れる記事ではありますが、ちょっと気になるあんな人やこんな人にビシバシ取材をしていく所存ですので、どうぞよろしくお願いします。
「かばんの中身拝見」、第5回は、ロックンロールベーシストのシンノスケBOYs(@n_shukugawaboys)さんです。
◆愛用かばんはなんとベビーカー
シンノスケBOYsさんは、コアなロック好きには周知のバンド、N’夙川BOYSやキングブラザーズのメンバーとして活動し、2023年からはニューバンド「ひょうへんクラブ」を始動。7月からは初のCD音源『LIVE at ESQUERITA68』をひっさげツアーがはじまります。
シンノスケBOYsさんの愛用かばんはなんとベビーカー(もはやバッグと呼ぶのもはばかられますが……)。約15年間同じベビーカーでツアーでめぐってきているそう。
インスタグラムでベビーカーで楽器を運んでいるということを知り、そのユーモラスな姿と「なんでベビーカー?」という素朴な疑問により、取材を敢行いたしました。
◆なぜ、「ベビーカー」で機材を運んでいるのか…
実はベビーカーをキャリーケース代わりに使うのを思いついたのは、シンノスケBOYsさんではありませんでした。
「イギリスツアーに行った時に、向こうのバンドがショッピングカートで機材を運んでいてるのを見たマーヤ(N’夙川BOYS、キングブラザーズのバンドメンバー)が、ベビーカーで機材を運ぶのを思いついて……」
使ってみたところ、その使い心地は最高だったそう。それもそのはず、ベビーカーは産まれたての命を運べるぐらいに頑丈です。なんせ、寝ている赤ちゃんを運ぶことを想定して設計されているのですから、振動を吸収するサスペンションも優秀です。
「よくある楽器用のカートはコロコロがすぐ壊れるけど、ベビーカーは丈夫すぎるぐらい丈夫で、15年間使ってもビクともしない。しかも駅の改札とかも通れるサイズに設計されているし、軽いし、折りたためるし、めちゃくちゃ使い勝手がいい」
◆機動力・搭載力抜群! ベビーカーはバンドのツアーに合理的だった
通常楽器を運ぶのに使用されるキャリーは、金属製の骨組みにタイヤがついただけの簡素な形状で、荷物をゴムでくくりつけるタイプのものが主流。比較してみると、ベビーカーは機動力、搭載力ともに圧勝です。クッション性にも優れているので、楽器や機材が傷みにくい効果もありそう。
しかもベビーカーは折り畳めば、電車や船、飛行機にも積み込めるため、日本だけでなく海外でライブする際も、このベビーカーで荷物を運べるのです。たしかに聞けば聞くほど、ベビーカーで楽器を運ぶことは理にかなっています。でも、使うのには抵抗がある人がほとんどのよう。
「ベビーカーめっちゃええでって、いろんなバンドマンに伝えたんやけど、真似した人は誰もおらんかった」
今のところ、ブームの兆しはなさそうです。
◆バッグの中にはロックンロールとピンクが詰まっていました
シンノスケBOYsさんのバッグ(ベビーカー)の中身を拝見しました。ベビーカーの搭載力に驚きを隠せない、大量の荷物が並びます。
・ベース
・豹柄のトランク
・ピンクのドキュメントケース
・赤いトートバッグ
・オレンジの巾着
・特大レジ袋
・ピンクのダッフルバッグ
シンノスケBOYsさんのアイテムは、ピンク色が多めです。ベースストラップもピンク、着替えを詰め込んだJIBのボストンバッグもピンク、フライヤー(ライブチラシ)を収納しているキャリーケースもピンク。
前回かばんの中身を拝見させてもらった三田みどりさんは緑色、その前の舘神龍彦さんは青いアイテムが多かったように、かばんの中を覗けばその人の好きな色が一目瞭然という人はけっこう多そうです。ただしシンノスケBOYsさんはかばんの中身を覗き見るまでもなく、一目見ればピンクが好きなのがわかってしまいますが……。
◆ツアー中のバンドマンに必要なものは、ベビーカーに過不足なく搭載
ベビーカーで運搬されているバッグたちの、それぞれの中身は、楽器、エフェクターとコード、ライブチラシなどの紙類、貴重品、寝袋、物販用のグッズに着替えなど、必要なものばかりでした。
硬質プラスチックでできたピンク色のドキュメントケースには、フライヤー(ライブ告知のチラシ)や、紙類をまとめて収納。折れず曲がらず持ち運ぶためのバンドマンの知恵! 赤いトートバッグは、現在活動しているバンドひょうへんクラブのオリジナルグッズ。貴重品などを入れています。
オレンジの巾着は寝袋。非常時にも暖を取れて、どこでも眠れるお助けアイテムです。ベビーカーのシート下のバスケットにいつも忍ばせています。物販用のTシャツは特大サイズのレジ袋に保管。透明なのでTシャツの在庫色がすぐにわかるのも、地味に便利。
ピンクのダッフルバッグはJIB。兵庫県西宮市発祥のバッグメーカーで、神戸・夙川・芦屋あたりの人にはおなじみのブランドです。ヨットのセイルクロスを使ったバッグは軽くて丈夫。シンノスケBOYsさんは着替えなどを含めた私物を詰め込んでいます。
バッグの中にはシンノスケBOYsさんのトレードマーク、ティアドロップ型のサングラスも入っていました。
◆DIYでカスタムしたダンエレクトロのベース
ここからは、特に気になるアイテムにスポットを当てていきます。ベースはダンエレクトロのロングホーンベース。ハイフレット(ベースネックの下の方)まで弾きやすい個性的なシェイプが特徴で、竪琴のような独特なビジュアルをしています。
ずいぶん古びているなと思ったら、100均でスプレーペンキを買ってきて、エイジングカスタムを施したそう。大胆なDIYで唯一無二のオリジナルベースが完成しました。
◆豹柄のトランクにはエフェクターと接続ケーブル
ド派手な豹柄のトランクには、バックステージパスと、エフェクターの設定をマークした養生テープが貼り付けてありました。
バッグの中にはベースのサウンドに変化を持たせるエフェクターと、ベースとエフェクターとアンプをつなぐためのシールド。
シールドはワイヤレスやストレートタイプを選ぶ人が多いなか、あえてのカールコードを選択するあたりに、骨太なロックスタイルを感じさせます。カールコードはビヨヨーンと伸びるので、シンノスケBOYsさんがベースを持ったまま客席にダイブしても安心です。
◆かばん選びにその人の人間性がにじみ出る
お話を伺ってベビーカーが楽器や機材、荷物を運ぶ際に合理的であるということは、心から納得できました。ですが納得できたところで「赤ちゃんの乗りものを押しながら街を歩くのは恥ずかしい」と他のバンドマンは真似しない訳です。
でも実は人目を気にせず、自分が良いと思っているものを堂々と使っちゃう方がかっこいい。ベビーカーが使いやすいからベビーカーを使うし、ピンクが好きだからピンクの服を着るし、ピンクのアイテムを持つ。なんかシンプルだしストレートだし、かっこいいなぁと思ったのでした。
<TEXT/大木奈ハル子>
【大木奈ハル子】
ライター・ブロガー。アメーバオフィシャルブログ「せまいえ(1ルームで2人暮らし)」運営。狭い家で暮らしたい系ミニマリスト。チェーン店のモーニング食べ歩きと、ひとさまの暮らしを覗き見ることをこよなく愛する。著書に『台所図鑑』(大和書房)。チェーン店のモーニング愛好家として『THE TIME,』(TBS系)に出演。Xアカウント:@tei_nai
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