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パチスロ「セット打法」で稼いだ50歳の元パチプロ。“裏モノ攻略グループ”に関わった男の末路は…

日刊SPA! 2024年6月25日 8時53分

 朝から晩までパチンコやパチスロを打ち、勝ち金で生活をするパチプロ。20代ならまだしも、30代、40代となるにつれ、世間の風当たりの強さに足を洗う者も多い。気ままな稼業の代名詞とも言われる彼らは、一体どんな人生を歩んでいるのだろうか。
 今回はパチスロの「セット打法」でしのいだ経験のある大場裕樹さん(仮名・50歳)に話を聞いた。なお、この記事に出てくる裏モノはメーカーとは一切関係がないと付記しておく。

◆バンドでメジャーを目指し上京したのに…

「攻略プロだったんですか?って言われると、まぁそうですねぇとは言えますが、私がやっていたことはセット打法とかですからね。しかも正規基盤じゃなくて裏モノのセット打法ですよ……。広い意味でパチプロなんでしょうかね」

 なお、長年のパチンコ・パチスロファンならご存知だろうが、裏モノとは出玉率などの設定が不正に改変されたスロットマシンのこと、セット打法とは複雑な手順を踏んで強制的に大当りさせる打ち方のことを指す。なんともアンダーグラウンドな雰囲気が漂う話だが、大場さんはニコニコしながら当時のことを語ってくれた。

「私、出身は静岡県なんですが、どうしても東京に出たかったんです。目的は音楽。バンドやりたかったんですよね。でも、オヤジがすごく厳しい人で、そんな理由で東京なんて出してくれなかったんです。だから上京する理由を作らなきゃってことで、とくにかく勉強して、なんとか大学に行きました。でも、元々バンドやりたくて東京出てきたから、大学なんてハナッから行く気がないわけですよ。試しに軽音楽同好会っていうサークルにも入ってみたけど、大学のサークルのノリが、まるで合わなかった……」

 結局、大場さんは大学にほとんど行かずにアルバイトとライブハウス通いに明け暮れる日々を過ごすようになる。

「新宿の居酒屋でバイトするようになって、いろんなヤツと知り合いました。ライブ行ったり飲みに行ったり……その時にスロットも覚えました。初めて打った台はビガーという台で、チェリー連チャンで話題になった台ですね。ワケもわからず、言われるとおり打ってたら、すごい連チャンして大勝ち。ビギナーズラックからハマったという典型的なパターンです(笑)」

◆裏モノとの出合いで「ギターからレバーへ」

 こうしてバンドを組んでメジャーデビューを夢見て上京した大場さんは、パチンコ・パチスロの虜となり、ギターを弾く日々からレバーを叩く日々へと移り変わっていったのであった。

「当時は時代的にはちょうど4号機初期。クランキーコンドルとか技術介入系も登場し始めて、大量リーチ目、技術介入系という二大勢力に加えて、バキバキに連チャンする裏モノもかなり幅を利かせていたんですよ。技術介入系もよく打ったんですが、私はバキバキに連チャンするようチューンナップされた裏モノを好んで打ち込んでいました」

 好きになったらとことんまで……という大場さん、裏モノを求めて都内や近郊をくまなく探し歩くようになったという。

「当時は今のようにインターネットで設置情報なんて調べられないから、自分で探すしかないワケです。フラッと電車に乗って駅に着くたびにパチンコ屋を探して、香ばしそうな店を見つけたら入ってみる。それの繰り返しでいろんな場所に行きましたね。大学が小田急線沿いにあったんで、小田急線はほぼ全駅制覇し、どこにどんな台があるかを調べ上げていました。

当時、神奈川は裏モノ天国で小田急線で西に行けば行くほど裏モノやレトロ台だらけで、パチンコ屋に入るたびに新しい裏モノたちとの出合いがありましたね。今考えると、イイ時代だったなぁ〜って思いますよ」

◆あれ? あの人はなんでいるの?

 裏モノ連チャンパチスロと戯れる日々を過ごしていたある日、大場さんは運命的な出会いをすることとなる。

「当時は地元のホールでクランキーコンドルとか技術介入系の台を打ってしのいで、バイト代と勝った金でタネ銭をつくって裏モノを打ちに行くというスタイルでした。ある日、ちょっと遠征してマフィアXっていう台の裏モノを打ちに行ったんですよ。そしたらたいして人がいないマフィアXの島でタコ出ししてるヤツがいました。あれ? なんか見覚えがあるなぁって思ったら、地元のホールでよく見かけるヤツだったんです。喋ったことも挨拶したこともなかったんですが、目が合った瞬間に向こうも、あれ? みたいな」

 その日は何もなく帰った大場さんだったが、数日後、地元のホールで並んでいるとその男性がやってきて、目が合うと軽く会釈をしてきたという。

「会釈されたから、思い切って話しかけたんですよ。『変なところで会っちゃいましたねぇ〜』なんて笑いながら。それがきっかけでホールで会うと話すようになって、1か月後には連絡先も交換してメシを食ったりする仲になりました」

 この人物こそ、大場さんをセット打法の世界に引き込んだ人物である。

◆セット打法の誘いは唐突に

「その人はヤマちゃんって言うんだけど、オレよりも3つくらい年上。大学を中退して、バイトしながらパチスロ打ってプラプラしてるって言ってたかな。とにかくパチスロに詳しくて、台の仕様とかもそうなんだけど、裏モノの設置店情報をすごく知っていました。しばらく見かけないと『横浜まで裏モノ打ちに行ってた』みたいなことを言うんですよ。それで私も『いいなぁ〜オレも誘ってくださいよ〜』とか言うと、ヤマちゃんはいつも笑ってはぐらかしたんですよね。で、まぁ、その後、ヤマちゃんからセット打法を誘われることになるワケです」

 ある日、ホールの閉店後、ヤマちゃんと飲んでいたところ、大場さんはセット打法の誘いを受ける。だが、当時ですらセット打法はインチキ攻略法会社のネタとしてファンの間では認知されており、大場さんも半信半疑どころかまったくもって信用しなかったという。

「一緒にセット打法やんない?って言われて、セット打法? そんなの嘘でしょ? オレ、騙されるの?って思いましたね。ヤマちゃんからは、別にカネは払わなくていいし、一緒に現場行くから安心してくれって」

◆セット打法を使う前に連チャン

 かくして数日後、大場さんはヤマちゃんと一緒にJRに乗り込み、神奈川県某所のホールを訪れることになる。

「前日に手順が書かれたペラを渡されてて、暗記してできるようにしておいてくれと。とにかく手順通りに打てばビッグボーナスのフラグが立って狙えば揃う。オマケに連チャン抽選もしているので、運がよければそのまま連チャン突入もすると。

ヤマちゃんからは『1万円くらい使ったらセットやって、連チャン入ったらそのまま打って、ノマれそうになったらセット使って、終わるときは合図するからそれまでは店内で会話しないで』って言われたんですが……。私、なんとお座り一発をかましてしまいまして、初ビッグから連チャンしちゃったんですよ(笑)。それで、ある程度打ってからセット打法やったんですが、本当にビッグが揃うんです。あの時の衝撃はすごかったですね」

◆勝手にセット打法をすることは厳禁

 その日は2人で8000枚ほど抜き、店員にもバレることなく終了。大場さんは勝ち金の半分、約4万円を手にした。この日を境に、大場さんは数か月に1度のペースでヤマちゃんから声が掛かり、セット打法を駆使して“抜き”をすることになる。

「ヤマちゃんはあるグループに属しているようで、そこからの指示を受けてセット打法をやってたんです。もちろんのことながら、勝手にホールへ行ってセット打法で抜くなんてことは厳禁。『もし、それやったらすぐにバレるからさ、やんないほうがいいと思うよ』って言われたときは、背筋に冷たいものが走りましたね」

 こうしてセット打法グループの末端に脚を突っ込んだ大場さん。そしてセット打法の“ネタの出所”についてヤマちゃんに聞いてみることに……。

 大場さんの人生は、ここからさらに大きく変わっていくことになる。

取材・文/谷本ススム

【谷本ススム】
グルメ、カルチャー、ギャンブルまで、面白いと思ったらとことん突っ走って取材するフットワークの軽さが売り。業界紙、週刊誌を経て、気がつけば今に至る40代ライター

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