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「この会社は二代で潰れる」社長息子たちのトンデモ行動。従業員の不満が爆発して…

日刊SPA! 2024年6月30日 8時54分

いつの時代も、後継者についての悩みは根深い。会社は継続させることが難しいと言われている。特に代替わりの時は問題が起こりやすい。創業者と二代目は違う人間だが、同じ会社として続けていかなくてはならないからだ。
筆者(綾部まと)は、メガバンクの法人営業部門にて8年間勤続してきた。事業承継で悩んでいる取引先が多く、様々な社長息子にまつわるエピソードを見たり、聞いたりしてきた。もちろん優秀な社長息子も数多く存在するが、中にはトンデモないことをする者もいた。

今回はそんな社長息子たちの、トンデモエピソードをご紹介する。

◆①音楽留学をして、全国を転々とする社長息子

地方で中小企業を経営する社長は、一人息子についてこう語っていた。

「生まれた時から跡を継がせると決めていたため、それまではと思って自由にさせていました。高校を卒業してすぐに『ネイティブアメリカンの音楽を学びたいからアメリカに留学したい』と言われた時は、せっかく小学校から私立に行かせたのに……という気持ちを押し殺して、希望通りにさせましたよ」

息子は帰国後はイベント会場のバイトなど、音楽と関係ない仕事につきながら全国を転々としていたという。たまに来る連絡は金の無心ばかりだが、社長は目をつぶっていたようだ。

「いつか会社に入らないといけないから、それから好きにできないことが可哀想だと思っていたんですよね。うちは田舎だから、視野を広げて欲しいという気持ちもありました。あの頃は会社の景気も良かったから、好きなことをさせてやるお金もありましたしね」

放蕩の末、いよいよ息子が社長のもとに戻ってきたらしい。跡継ぎとして社長の元で働き始めて数か月経った頃に、長男は社長とその奥さんに向かって、こう言い放ったそうだ。

「留学先で知り合った女性をうちに呼び寄せて、一緒に住むと言うんです。彼女はどうやらシングルマザーのようでした。今までそんなこと一言も聞いていなかったんですが……」

長男の話では、最近になってまた連絡を取り始めたそうだ。彼が会社を継ぐことになったとFacebookに投稿したら、祝福するメッセージが彼女から来たことがきっかけだったという。

◆海外で知り合ったシングルマザーと同居。過労で倒れる社長

「それってお金目当てじゃないの」と怒る社長の奥さんと、驚く社長をよそに、長男は半ば強行するようにして、シングルマザーの彼女と連れ子を家に招き入れ、5人での生活を始めたらしい。

しかし社長の奥さんは、彼女とそりが合わず、家では喧嘩が絶えなかったとのこと。長男は気に入らないことがあると「じゃあ家を出て行く」と言い出し、それでは後継者がいなくなってしまう。社長は全員をなだめながら、神経をすり減らしていたという。

「さらにコロナで業績も傾いてきて、僕は心身ともに限界だったんでしょうね。会社で倒れてしまい、そのまま入院することになりました。ストレスが原因だと言われましたよ」

社長の入院中に、奥さんが長男たちを家から追い出したらしい。隣町のマンションに社長の金で住み始め、これを機に会社も退職したそうだ。慌てて関連会社に出向させたが、あまり評判は良くないとのこと。返されるのも時間の問題だという。

「しかも彼女との間に2人の年子を産んでいて……。そっちの方は順調なんでしょうけどね」

仕事にも精を出していただきたいものである。

◆②クレーンと爆発事故で工場を破壊する長男

2人息子の父親でもある町工場の社長は、跡継ぎ候補である長男について語ってくれた。

「長男を会社に入れたら、評判は最悪でした。派遣のバイトを転々としていたせいか、敬語が使えないし、礼儀も知りませんでした。うちの職人さんたちは昔気質の人が多いので、彼みたいなタイプは嫌いなんですよ」

仕事ができるならまだしも、長男は工場でクレーンを運転している際に、操作を誤って壁を壊してしまったらしい。3回も連続で壊した挙句、最もあってはならない爆発事故も起こしてしまったのだという。

従業員からはクレーム……というより、ストライキが勃発。ついに社長の右腕だった番頭さんからは「あの長男では、この会社は二代で潰れる。もう私は辞めます」と言われてしまったらしい。

◆退職引き止めのために給料を引き上げ、会社は赤字に

「番頭さんが辞めたら、昔からいた従業員さんたちもゾロゾロと退職届を出してきたんです」

彼らの給料をあげることで、何とかその時は引き止めたという。しかし、業績が上がったわけでもないのに人件費だけが上がったので、赤字に転落してしまったとのこと。長男はさておき、次男に継がせることはできなかったのだろうか?

「次男を大学で上京させたら、当時の彼女の家に気に入られて、婿養子に入れられてしまいました。もうこっちには戻ってこないと言われています。次男の方が優秀だったんですけどね」

跡継ぎどころか、会社の存続自体も危ないのだという。今では後継者でなく、会社を買ってくれる先を探すことも検討しているそうだ。

◆跡継ぎとしては難ありだが、人としては優しい一面も

トンデモない行動をし続ける社長息子たちだが、ある意味では何事にも縛られず、のびのびと自由に生きているとも言える。筆者はどちらの社長息子にも銀行員として会ったことがあるが、2人とも共通して根は優しく正直で、人としては好印象だった。しかし跡継ぎという目で見ると、どうしても否定的にならざるをえない。彼らにとって幸せになる道が見つかることを祈るばかりである。

<文/綾部まと>

【綾部まと】
ライター、作家。主に金融や恋愛について執筆。メガバンク法人営業・経済メディアで働いた経験から、金融女子の観点で記事を寄稿。趣味はサウナ。X(旧Twitter):@yel_ranunculus、note:@happymother

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