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18÷0=?物議を醸した小3の宿題に東大生が反応。「教員の力不足」「思考力を磨く良問」などの声

日刊SPA! 2024年6月30日 15時52分

―[貧困東大生・布施川天馬]―

◆ネット上で物議を醸した”ある投稿”
 先日、ネット上である投稿が話題となりました。物議をかもしたのは、小学校の算数ドリルの一ページ。小学校3年生レベルの、ごく普通の割り算問題に混じって「18÷0」という問題が。これに対して、投稿者のお子さんが「答えなし」と回答したところ、先生はバツをつけた上に「正しい答えは0」と書き直したのです。

 何が問題なのか、と思われるかもしれません。実は、数学において「0で割る」行為は、認められていない。ためしに、お手持ちの電卓や、スマートフォンで「18÷0」を試してみてください。きっと「エラー」と出るはずです。

 小学校は、教育機関です。もちろん、誤ったことを教えてはいけないはず。それに、教員側は仮にも大学教育までを修了してきているはずなのに、正しい答えである「答えなし」にバツをつけただけではなく、「18÷0=0」と初歩的かつ致命的なミスをしてしまった。これについて、採点した先生のうかつさや、無知さをたたく人が急増しました。

 さて、今回の騒動について、東大生たちはどう感じているのでしょうか。今回は30人以上の東大生にインタビューを実施し、いくつか声をまとめてみました。

◆「どっちでもいい」派が多数

 意外と多かったのが、「どっちでもいい」とする声。色々なことに厳密になりたがる東大生の意見としてはかなり驚かされます。以下のような理由が出ていました。

「小学校の間は、とりあえず計算の能力を身につけたり、正しい順序で計算するルールを覚えたりすることが大事。確かにゼロ除算はNGだが、そういった細かいことは中学校や高校に上がってからでもなんとかなる」

「18÷0の答えはともかく、採点した教師が『18÷0=答えなし』に対してバツをつけたことが問題。『自分の教えたことと違うからバツ』ならば、教員としてあるまじき態度。『小学生にとっては難しすぎるから、いったんゼロにしておきましょう』ならわかるが、『答えなし』にバツをつける理由にはならない」

「そもそも『18÷0』の文字列に対して、気持ち悪さを持つようになることが、数の暗黙知を育てることにつながると思う。特殊例と一般的な計算式を同列に並べてしまうことが問題であって、教員側の知識の整理がついていないのではないか」

 学校教育のカリキュラム全体を考えた時の問題の大きさや、回答に至るまでのプロセスなど、単純な計算結果にはこだわらない姿勢が見えました。確かに数学的に正しい答えは「答えなし」ですが、ここにバツをつけてしまった理由を追求すべきなのかもしれません。

◆思考力を磨く良問だったのに……

 また、「考える機会になってよい」とする意見も多くありました。以下に、いくつかの回答を抜粋して並べます。

「機械的に『÷0』は成立しないと教えても、単純暗記になってしまうから、数学的なセンスは身につかない。そうではなく、『18÷1=?』『18÷0.1=?』『18÷0.01=?』……と問題を出して、その果てに『18÷0=?』と出題すれば、考える能力を身に着けるきっかけになる。」

「普通は『定義できない』と教わることが多いが、本当に定義できないのか、そもそも定義できないとはどんな状況かを考えることが重要。ただし、子どもたちが自力でそこまでたどり着くのは難しいと思われるので、そこを大人が補助する必要がある。

 別に『18÷0=0』と教えるのも、いったんはいいかもしれないが、『なぜそうなるのか』を筋道立てて説明できないのであれば、教員側の力不足と指摘されても仕方ない部分がある」

◆大切なのは「子どもの思考力を阻害しないこと」

 近年、教育現場では「子どもたちが自分で考えることの大切さ」を説かれるようになっています。昔のような先生の独り舞台ではなく、子どもたちに積極的に発表させたり、グループを作って話し合わせたりするのです。

 こういった教育の目的は「自立した思考力」を身に着けてほしいため。となれば、今回の「18÷0」の問題に関しては、思考力を育むための絶好のケースといえるのではないでしょうか。最高のケーススタディでも、出題側のリテラシーによっては、うまく使いこなせない場合がある。今回はそれが如実に表れた例なのかもしれません。

 今回の問題については、結局「子どもの思考力を阻害しないことが大事」という結論になりました。教育現場も同じ方向を向いているはずですが、その実情はまだまだ発展途上の印象。先生と生徒、教育の未来はどちらを向いているのでしょうか。

【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。(Twitterアカウント:@Temma_Fusegawa)

―[貧困東大生・布施川天馬]―

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