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「恋愛したい!でも失敗するのはイヤだ…」令和に“若者の恋愛離れ”が進むワケ

日刊SPA! 2024年7月2日 15時52分

―[ゼロ恋愛 〜経験値ゼロから学ぶ恋愛講座〜/堺屋大地]―

 こんにちは、恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラーの堺屋大地です。
 筆者はLINE公式サービスにて、年間約1000件のペースでチャット恋愛相談を受けています。また知人経由で対面の相談を受けることも多く、性別・年齢問わずさまざまな方の恋のお悩みをうかがってきました。

 2020年国勢調査によれば、日本人の「生涯未婚率」(50歳時の未婚割合)は年々上昇しており、女性は17.8%、男性に至っては28.3%にも及びます。そんななかで、恋愛がうまくいかないという方々にも筆者の知見が少しでも役に立てばなによりです。

◆いまの若者たちは「恋愛はしたい、いい人がいれば付き合いたい」

 さて、「若者の恋愛離れ」が叫ばれるようになって久しい今日この頃。20代男女と接する機会の多い筆者の肌感覚としても、たしかに恋人がいる若者の割合は減っていると感じます。

 しかし、だからといって“若者たちが恋愛をしたがっていない”わけではないのです。実際に20代男女から話を聞くと、よく出てくるのが「恋愛はしたい、いい人がいれば付き合いたい」というフレーズ。

「若者の恋愛離れ」が進んでいる現代においても、多くの若者は恋愛をしたいと思っている。……一見矛盾しているように感じるそこにこそ、根深い問題が潜んでいるのです。

◆経済的な理由や趣味にかけるお金を優先で「恋愛をする余裕がない」

「若者の恋愛離れ」の要因としてよく挙げられるのが、経済的な問題。

 日本全体がどんどん貧しくなっていき、給与がなかなか上がらないという時代に、恋人ができればファッションなどの身なりにお金がかかるし、デートのたびに飲食代やチケット代がかかるわけです。

 恋愛にはとにかくコストがかかりすぎるから積極的に恋人を作ろうとは思わない、という人の割合は少なくないはず。また、“推し活”などの趣味にもお金がかかるため、ますます恋愛にかけられる経済的な余力がなくなっているという20代もいるでしょう。

 こういった経済的な問題や、趣味を優先させるといった価値観の浸透で、「恋愛をしたいけどする余裕がない」という若者が増えているというのは、的を射た推論だと感じます。

 ただ筆者は、そのような原因はわかりやすい表層的なもので、“若者たちの内面の変化”と“世間の価値観の変化”により起こっている、もっとわかりにくい原因があると分析しているのです。

◆現代の若者が何より恐れる“失敗”

「若者の恋愛離れ」の原因のひとつとして考えられるのが、“若者たちの内面の変化”。いまの若者たちは失敗することを恐れる気持ちが根付いており、一昔前の若者たちへの教訓としてあった「当たって砕けろ」精神が薄れています。

 恋愛においては、もちろん好きな子にフラれることも“失敗”となりますが、所属するコミュニティで自分の恋愛絡みの話が広まって茶化されたり悪目立ちしたりすることも、いまの多くの若者にとっては“失敗”です。

 つまり、好きな子にフラれる失敗率や周囲から茶化されるリスクが低いのであれば、現代の若者たちももっと恋愛をするのでしょう。……が、そもそも恋愛とは失敗率が非常に高く、ひやかされるようなリスクも高いもの。

 極論で言えば、恋愛なんてたいていはうまくいかないものなのですが、いまの若者たちは成功がある程度保証されていなければトライできないので、結果的に恋愛ができなくなるという構造です。

◆モチベーションが低い分野で失敗したくない

 前項で解説した話にも関連していることですが、いまの若者たちは恋愛に対するモチベーションも低いのです。恋愛をしたいという欲求は、“ある”か“ない”かで二極化しているわけではなく、0~100までの数値で表すことができます。

 仮に、一昔前までの若者たちの恋愛欲が70~100程度だったとしましょう。それに対して、「恋愛はしたい、いい人がいれば付き合いたい」という程度の衝動しか持ち合わせていない現代の若者たちは、恋愛欲が30~50程度しかないのかもしれません。

 恋愛へのモチベが70~100といった高い数値があれば、失敗のリスクを覚悟してでもトライする人が多いでしょうが、モチベが半減していて30~50と低めの数値だと、「できれば恋愛したいけど、でも傷つきたくないからしない」という結論に至る人は多くなります。

 恋愛に対して昔ほど強い衝動がなければ、「恋愛したい(成功したい)」という感情はあれど、「失敗したくない」という感情のほうが圧倒的に上回ってしまうわけです。

◆恋愛至上主義時代のプレッシャーがなくなってきた

 そういった“若者たちの内面の変化”に、さらに“世間の価値観の変化”も加わっていることで、「若者の恋愛離れ」が加速しているように感じます。

 90年代に恋愛ドラマが全盛期を迎えたことなどがきっかけとなり、90年代から00年代にかけては、「恋愛はしていて当然」、「恋人は絶対にいたほうがいい」といった空気感が、当然のように蔓延していました。

 昨今は価値観の多様性が重んじられ、恋愛なんてしてもしなくても個人の自由という考えが一般的ですが、当時は恋愛至上主義のような価値観が“正義”とされていたのです。

 さらに恋愛至上主義はエスカレート。ともすれば「好きな人がいないのはおかしい」、「恋人がいるほうが偉い(優れている)」、「童貞・処女でいるのはよくない(劣っている)」といった、過剰&異常な“正義”がまかりとおっていたこともありました。

 とはいえ、そういった“正義”が働いていたからこそ、昔は恋愛に興味がない人や異性が苦手な人でも、「恋愛しなくちゃ!」、「恋人を作らなくちゃ!」、「童貞・処女を捨てなくちゃ!」といった“圧”を感じており、ほとんどの人が恋愛に駆り立てられていたのです。

 価値観の多様化によって、「恋愛はしない」というスタンスも尊重されるようになり、いまは恋愛至上主義時代の“正義”によるプレッシャーや強要もなくなっている。それが「若者の恋愛離れ」を後押ししているのではないでしょうか。

<文/堺屋大地>

【堺屋大地】
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。現在は『現代ビジネス』、『文春オンライン』、『smartFLASH』などにコラムを寄稿。LINE公式サービス『トークCARE』では、カウンセラーとして年間で約1500件の相談を受けている。X(旧Twitter):@SakaiyaDaichi

―[ゼロ恋愛 〜経験値ゼロから学ぶ恋愛講座〜/堺屋大地]―

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