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「武勇伝」「高級時計」にNO。妹尾ユウカが熱弁するオジサンの「負け顔戦略」

日刊SPA! 2024年7月3日 15時51分

◆世は「イケオジ」ブーム?
「私、イケオジが好き」

若い女性が発するこんな言葉に、淡い期待を抱いた経験がある中年男性は少なくないはず。昨今よく耳にする、この「イケオジ」という言葉はインターネットから生まれたとされており、「イケてるオジさん」の略称として使われている。

ただ単に年齢を重ねているだけではなく、人生経験の豊富さや色気を感じさせる、ひと昔前で言うところの”ダンディー”的な雰囲気を持った男性を指す言葉だ。一般的に年代は40代から60代の男性に使われることが多く、いわゆるミドルエイジが当てはまる。

現在、26歳である私の周りにも、そんなイケオジ好きを本気で公言する女の子は実在する。例としてよく挙げられる男性芸能人は、竹野内豊、反町隆史、西島秀俊、木村拓哉といった、先ほどのイケオジの解説に準じた、納得のラインナップとなっている。

しかし、私よりもさらに若く、主に2000年代生まれの女の子たちにとってのイケオジラインナップは大きく異なる。彼女たちにとってのイケオジは小栗旬、向井理、綾野剛、瑛太、市原隼人。正直、同じ20代の私ですら耳を疑う名前が並んでいるが、もう彼らのほとんどが40歳を越えている為、イケオジの一般的な定義からズレてはいない。

今後、こういった「イケオジ」に対する認識の齟齬はさらに加速し、中年男性たちの淡い期待が粉々にされる日もそう遠くはなさそうだ。

◆嫌われないオジサンになるために何が必要なのか

それでは今後、日本のオジサン達は誰をロールモデルとして生きるべきなのか。「若い女の子からモテるオジサンに!」とは言わずとも、嫌われないオジサンになるために何が必要なのか。周囲の女の子たちに意見を募ってみたところ、1つの大事なキーワードが浮かび上がってきた。

それは「負け顔が出来るかどうか」である。例えば、女の子を前にするとつい昔話や自慢話をしてしまうオジサンが結構いるが、あれは”モテ”から逆行する行為であり、絶対に避けるべきオジムーブである。

信じられないかもしれないが、自らを何者でもないただのオジサンであるとし、女の子の話をにこやかによく聞き、おもしろ失敗エピソードを語る。そんなオジサンに今の若い女の子は好感を持つ。会社内での立場の高さの下駄を履いたまま女の子に接し、昔話や自慢話でアピールをするオジサンが多いからこそ、それらを全くしないことが今や良いアピールになる。「いくらの時計を持っているか」「どんなことを成し遂げたか」を語るよりも、負け顔ができるということが一番の余裕に映るのだ。

つい先日、20代前半の女友達2人と40代のサラリーマンの男友達と飲んだ時のこと。中盤で腕時計の話題になった。彼の腕には20代の時に奮発して購入した数百万円のロレックスがついていたのだが、彼はその時計に関して聞かれると、

「これ新入社員の時に貯金ゼロになるのにノリで買って、いい時計してるけど貯金ゼロっていうボケみたいなことをしてたんだけど、30代になるといい時計を持ってる人なんてたくさんいるから、今じゃただの貯金ゼロの人なんだよね」

と笑いながら話し、女の子たちから好感を得ていた。その後も、車について話を振られた際には、

「去年、付き合っていた彼女に『いい歳して車もないの?』と言われたので、好きな芸人さんが乗っていた車と同じ車を購入したんだけど、納車まで1年かかって彼女には3ヶ月でフラれたから、いい歳して乗せる人がいない車が届いただけ」

と話し、勤め先について褒められた際も「こんな会社にいるのに仕事できないから、後輩にコネ入社かと噂されたことあるよ」と軽く流す、負け顔の手本を見せてくれた。その結果、やはり20代前半の女の子たちの方から「また飲みたいです」と連絡先を聞かれていた。

◆新しい「イケオジ」のあるべき姿とは

ちなみに、これもオジサンが間違えてしまいがちなことなのだが、女の子に嫌われないためにオジサンであることを隠そうとするのはやめた方がいい。若者のカルチャーに興味関心がないオジサンになることは良くないが、若者ぶったオジサンになることはもっと良くない。

カラオケでは、サザンオールスターズ、WANDS、ウルフルズを歌ってくれて構わない。むしろ、Official髭男dismや米津玄師などを歌われた方がなんだか余計にオジサンに見える。上手く伝わるか分からないが「スーツを着ているとオジサンってバレてしまうから、学生服を着てみた結果、余計にオジサンであることが浮き彫りになった」みたいな姿に見える。

きっと、これまでの時代、男は大なり小なりそういった無理や背伸びをした振る舞いが持て囃され、必要とされてきたのだろう。負け顔をすることは本当に負けることを意味してきたのかもしれない。けれど、新しいイケオジのあるべき姿は、等身大もしくはそれ以下に見せられる男であることのような気がする。

決して、これは「プライドを捨てろ」ということではなく、くだらないことで見栄を張ったり、成し遂げたことをひけらかさずともいられる余裕を持てということである。そうなることができれば、本当は話したくて仕方ない自慢話も「この人こんな感じだけど本当はすごいんですよ」と後輩や同僚が代わりに語ってくれるであろう。目下の同性からもウケがいいはずの負け顔戦略。シフトしてみてはいかがだろうか。

文/妹尾ユウカ

【妹尾ユウカ】
1997年生まれ。コラムニストとして、「日刊SPA!」「AERA dot.」など多数のWEBメディア・雑誌で執筆。Abema TV「ラブキャッチャー」では副音声、ドラマ「女盛り考察記」は脚本を担当。著書に「今夜、軽率に抱かれてみたくなりました 恋愛強者になれる“女の直感ルール”」がある。

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