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家の中を清潔にするだけでは不十分?ゴキブリの侵入を防ぐ秘訣を“フマキラー虫博士”に聞く

日刊SPA! 2024年7月5日 8時52分

 夏が近づくと、嫌でも思い出す黒や茶色のキモいヤツ、ゴキブリ。そして、数年前から世界中で大量発生し話題のスーパートコジラミは、名前を聞くだけで不快になる代表選手ともいえる。これからの時期に遭遇する可能性大の成虫ゴキブリ、そして殺虫剤も効かず、刺されたら激しいかゆみや湿疹に襲われるスーパートコジラミ。
 できれば、対策や駆除方法について知っておきたいという人も多いはず。そこで、殺虫剤でおなじみのフマキラー株式会社にて、開発本部基礎科学研究部部長・主席研究員を務め、新商品開発のため虫の飼育・研究をおこなう虫博士・佐々木智基先生に詳しく話を聞いた。

◆プロでも見分けが難しいゴキブリの幼虫

 ゴキブリは、家の中など室内に住み着いているイメージを持っている人も多いかもしれない。けれど佐々木先生によれば、「ゴキブリは本来、野外で生きる虫」であり、「生まれてからずっと室内で育つことはなく、室内と野外を行ったり来たりする」のだという。

「侵入経路は、玄関やエアコンの室外機のホース、室内と野外をつなぐ隙間や経年劣化による亀裂です。ちょうど6月終わりの今頃からが、おなじみの黒くて大きいゴキブリと遭遇する機会が増える時期です。これは成虫で、幼虫のゴキブリは春先にほかの虫たちと混じって室内で生息していることが多いのですが、同じサイズの虫も多く、見分けるのは非常に難しいです」

 そのため、見分けのつかない小さな虫ともども駆除する必要があるようだ。ただ、「ゴキブリに限らず、虫の生態系を壊さないためにも駆除するのは最小限にしたいもの。まずは、家など室内に入れない工夫をしてみてください」と、佐々木先生。

◆ゴキブリを室内に入れない工夫とは?

「ゴキブリを室内に入れないために、まずはエサを減らすこと。そのためにも食べ物はキッチンやテーブルへ置いたままにせず、冷蔵庫へ片付けるのがおすすめです。虫は基本的に15~30℃ぐらいが活発になるので、低温で動きが鈍くなる冷蔵庫を嫌います」

 残ったおかずは冷蔵庫へ入れ、調理時に出た調理器具や食器類はすぐに洗う。そして、髪の毛やフケ、お菓子のクズやホコリなど、ゴキブリのエサとなるものを減らすことが虫の進入を防ぐことにつながるようだ。つまり、隅々まで掃除して清潔に保つことがポイントとなる。

「ゴキブリなどの虫は茂みやマンホール、プランターなどを経由して家の中に入ってきます。そのため、虫が隠れる場所を作らないことも重要。家の中だけでなく、家の外まわりも清潔に保っておくことが大切です」

◆ゴキブリの駆除方法や実害

 ゴキブリが室内に侵入するのを防ぐには、エサを減らして清潔に保つほか、置き型タイプの殺虫剤が有効のようだ。フマキラー商品では、「ゴキファイタープロ(防除用医薬部外品)」が該当商品。こういった置き型殺虫剤を「屋外に置いたほうが効果的」と言う人もいるが、実際はどうなのか。

「玄関の外など屋外に置くと、『家に入ってくる前に殺せるから死骸を捨てる必要もなくてラク』という声もありますが、玄関の四隅など、室内に置くのがおすすめです」

 遭遇したときは、噴射式の殺虫剤や凍らせて動きを止めるようなタイプがおすすめだという。フマキラー商品では噴射ノズルがワンタッチで出てくるのが特徴の「ゴキファイタープロ ストロング(防除用医薬部外品)」、凍らせるタイプは「フマキラーゴキブリ超凍止ジェット」が該当する。

「噴射式の殺虫剤は薬剤が入っているのでよく効きますが、お子様やペットがいて薬剤が気になるという方には、凍らせるタイプもあります。ただ、凍らせるタイプは薬剤が入っていないため凍らせても動き出すことがあるので、しっかり直接当てるように噴射してください。ベタつきや床・壁の傷みが心配という方には、薬剤や油が入っていない凍らせるタイプがおすすめです」

◆ゴキブリで食中毒やアレルギーの恐れも

 さまざまな手段で徹底的に駆除されるゴキブリだが、実際にはどのような害があるのだろうか。見た目がグロテスクで動きも俊敏。また不衛生な印象から嫌われることも多いようだが、はっきりとした実害については判明していないようだ。

「いろいろなところを歩き回るためO157、サルモネラなどの菌を媒介して食中毒を引き起こす原因になったり、ゴキブリの排泄物がアレルギー反応を起こしたりするといわれています」

 まだはっきりとはわかっていないにしても、食中毒やアレルギーの可能性があるのであれば、できるだけ取り除いておきたいという人も多いはず。まずは室内のエサを減らして家の外まわりの草抜きなどをし、ゴキブリの進入を防ぐことからはじめてみたいものだ。

◆増えるまで気づかないスーパートコジラミの恐怖

 数年前から日本国内でも観測され話題となっている“スーパートコジラミ”、どこかで連れ帰れば最後、室内で増えれば清掃業者を呼ぶしかないともいわれている。そこで、トコジラミの厄介な部分とともに、習性を利用した持ち帰らない工夫や駆除方法について聞いてみた。

「スーパートコジラミとは、もともといたトコジラミという種類が、薬剤に対する抵抗性を獲得したものです。侵入経路は海外になりますが、日本にいたトコジラミも絶滅したわけではありません。ほとんど見かけなくなり、かなり稀になりましたが現存しています。薬剤に対する抵抗性を獲得したトコジラミは、すでに国内でも繁殖しています。厄介なのが、家に連れ帰っていても、かなり増えるまで気づかないことです」

 かなり増えるまで気づかない理由は、日本人がこれまで、トコジラミに刺されていないことが理由だという。「トコジラミが血を吸うときに痒みが出るのですが、はじめてだとかゆくなりません。2~3回吸血されてはじめて、かゆくなる」のだという。

「かゆみはアレルギー反応によるもので、これまでトコジラミに刺されたことがない日本人はかゆみを感じるまでに時間がかかります。そのため、気づいたときにはトコジラミが相当繁殖しているという状態になるのです。布団やベッドマットの繊維に入り込んでいる場合は駆除が難しく、すべて処分して買い替えることになるでしょう。こうなるとすごく大変なので、自宅に連れ帰ってこない工夫や連れ帰ってきている可能性を考えて対処することが重要です」

◆トコジラミを持ち帰らず早期駆除する方法

 自宅で増えれば清掃業者を呼ぶ必要性もあるといわれるトコジラミ。かなり厄介な存在に感じるが、夜行性であることやベッドまわりに集まるといった習性を利用することで持ち帰ることを簡単に防ぎ、早期駆除ができるという。

「旅行先のホテルでは、ベッドまわりに荷物を置かないことです。トコジラミは夜行性なので、昼間は隠れています。夜になると血を吸いに現れるのですが、ベッドまわりに荷物を置いておくと、誤って荷物のなかに紛れ込んでしまう可能性があるのです」

 そのため、「トコジラミがベッドまわりに集まること、夜行性であるという習性を利用し、ホテルに着いたら荷物を浴室へ置き、朝まで電気を点けておきます。こうしておくと、荷物に紛れ込むリスクをかなり減らすことができるでしょう」とのこと。

「万が一のことを考え、帰宅後すぐに暗い浴室へ荷物を持って行くようにします。そのまましばらく置いておくと、夜行性のトコジラミが荷物から出てくるので、見つけたらすぐ、しっかりと殺虫剤で駆除するといいでしょう。このとき有効なのは、トコジラミに適用のある殺虫剤です」

◆旅行に持って行った衣類はすべて洗濯を

 数が増えると清掃業者にお願いするなど大事になりそうなトコジラミだが、こういった簡単な方法で持ち帰りを防いだり早期駆除ができたりするなら、やらない手はないだろう。

「浴室にしばらく荷物を置いてもトコジラミが出てこないときでも、旅行に持って行った衣類は念のためすべて洗濯しておくと安心です」

 夜は電気を点けたまま眠るという方法も有効なようだが、睡眠の質などを考えるとおすすめはできないようだ。旅行するときは丸洗いできるカバンを準備し、帰宅後は旅行に持って行った衣類とともに、すぐに洗濯したいものだ。

<TEXT/山内良子>

【佐々木智基】
フマキラー株式会社にて開発本部基礎科学研究部部長・主席研究員を務め、虫の飼育・研究をおこなう虫博士で、2019年以降は蚊・ゴキブリ・ダニ・アリ・外来種問題を担当。また、虫や植物をテーマとしたキッズ向けサイト「フマキッズこども研究所」内でも“虫はかせ”として活躍し、「虫や植物とふれあうコンテスト」では審査員も務めている

【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意

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