Infoseek 楽天

大量発生のカメムシ、夏と秋では「対策が違う」。“フマキラー虫博士”に聞く害虫対策

日刊SPA! 2024年7月6日 8時52分

 梅雨に入り、虫との闘いが本格的なスタートを切ったという人も多いはず。梅雨以降はとくに気になるダニ、嫌なニオイが特徴のカメムシ、そしてBBQやキャンプなどアウトドアが楽しい季節だからこそ気をつけたい虫も少なくない。
 前回の記事ではゴキブリやスーパートコジラミの実害や対策について詳しく話を聞いたが、後編の記事では、それ以外の虫の対策や駆除方法について、殺虫剤でおなじみのフマキラー株式会社にて、開発本部基礎科学研究部部長・主席研究員を務め、新商品開発のため虫の飼育・研究をおこなう虫博士・佐々木智基先生に詳しく話を聞いた。

◆季節によって使い分けたいカメムシ対策

 2024年も地域によっては大量発生し、農作物に深刻な被害をもたらしたカメムシ。強烈で刺激性のある不快なニオイを出すため、「家に入れたくない」という人も多いようだ。大量発生する種類のカメムシは時期的に減少しそうだが、ほかの種類は出現の可能性がある。

「カメムシは、灯りに寄ってくるという習性があります。そこで、家の周囲にある外灯を消したり、窓から光が漏れないよう遮光カーテンをピッチリと閉めたりして、夜のうちに灯りをシャットアウトしておくことが進入を防ぐ対策になります」

 昼間の洗濯物にカメムシが付着したまま取り込んでしまった話はよく聞くが、「これは夜の灯りに吸い寄せられたカメムシが、そのまま温かくなった洗濯物にしがみついてしまった状態です」とのこと。そのため、こういった現象も夜の灯り対策をすれば減らせるという。

◆大量発生する種類はこれからの季節で…

「カメムシは種類が多く、大量発生する種類はこの時期ぐらいからグンと減ります。ただ、ほかの種類もたくさんいるので、ゼロになるというわけではありません。山間部にある住宅では遮光カーテンをピッチリと閉めたり、光の強い外灯を消したりすると効果的です」

 ただし、越冬のため室内に入ってくる秋のカメムシは対策が異なるようだ。秋は灯りに寄ってくるのではなく、玄関や隙間から侵入する。そのため、窓のサッシや玄関をきちんと閉め、隙間を作らないことが対策となるようだ。網戸の損傷具合もチェックしておきたい。

「また、ほかの虫と同様、自宅まわりにある雑草を抜いて隠れ場所をなくすと、進入を防ぐことにつながります。遭遇した場合は、殺虫剤や凍らせて殺すタイプの商品が有効で、当社フマキラー商品だと、『カダン カメムシバリア』や『凍殺ジェット』が該当します」

「『カダン カメムシバリア』は薬剤が入っているので、お子様やペットがいる家庭では薬剤の入っていない『凍殺ジェット』のほうが安心して使っていただけるでしょう。凍らせるタイプのほうは長めに噴射していただく必要はありますが、使用後にベタつきも残らず洗濯物に直接スプレーできます」

◆楽しい旅行中に増えるダニの恐怖と対策法

 春前ぐらいからは、とくに話題にのぼることも多いダニ。梅雨に入った今頃は、湿気や高温を好むダニにとって最適の季節といえる。今後は3連休や夏休みなどが続いて人間にとっても楽しい時期となるが、長めの宿泊旅行前は気をつけたほうがよさそうだ。

「最近の住宅は気密性が高く、ダニが好きな高温多湿になりやすいので注意が必要です。旅行などでしばらく家を空けるときは要注意。目安として3日以上家を空けるときは、隅々まで掃除し、寝具を干したり洗濯したりして清潔にしてから出かけるのがおすすめです」

 そうすることで、「ダニのエサを減らすことができ、増殖を防ぐことにつながる」と佐々木先生。逆に掃除をしないまま出かけてしまうと、締め切って高温多湿になった環境のうえにエサを置いていくことになり、ダニを増やしてしまうため気をつけたい。

◆「ダニよけ」をしても駆除はできない?

「とくに、布団やカーペットはダニが好むので、念入りに掃除機や粘着ローラーをあて、日光に干すのがいいですね。また、ダニはぬいぐるみも好みます。丸洗いしてから干すのが好ましいですが傷む恐れがあるので、天気がいい日は日光に当てるようにすると効果的です。太陽にあてても、『日陰になる部分には効果がないのでは?』という意見もありますが、なかまでしっかり温かくなるので問題ありません」

 また、ダニを駆除するとき、 “ダニよけ商品”は使い方に注意が必要となるようだ。「ダニよけでは、殺虫できません。ダニを寄せつけないようにするだけなので、『そのダニはどこへ行くんですか?』ということになります」と佐々木先生は語る。

 まずはダニを殺虫して数を減らし、ベッドまわりなど気になる部分に“ダニよけ商品”を使うことが望ましいようだ。ただ、ダニよけ商品は殺虫成分不使用で植物を利用したものが多いため、ダニよけ商品だけを使ったほうが安心だと思っている人が多いかもしれない。

「確かに殺虫剤をベッドやカーペットに直接噴射するのは気が進まないという方も、いらっしゃるかもしれませんね。弊社商品の話にはなってしまうのですが、ダニを駆除する殺虫剤『ダニフマキラー(防除用医薬部外品)』には、しらみとりシャンプーにも入っているフェノトリンという成分が入っています。食塩も大量に食べ過ぎると中毒を起こして死んでしまいますが、それと同じぐらいの毒性です。そのため、過剰な心配は必要ありません。安心して使っていただけます」

◆アウトドアを楽しむときに気をつけたい虫は?

 湿気の多い毎日にうんざりしつつも、7月に入れば3連休、そしてお盆を含む夏休みが目前だから頑張れるという人も多いのではないだろうか。宿泊旅行はもちろん、BBQやデイキャンプなどアウトドアも楽しい季節。ただ、虫の存在が“ムシ”できないのが野外の悩みだ。

「海や川、森林にある渓流など水辺で見かける“ヌカカ”という体長1~2mmの小さな虫は、刺されるとかなりかゆいので気をつけてください。また、川や清流付近で見かける“ブユ”はハエの仲間なので、皮膚を噛み切って吸血するため痛みや腫れが伴います」

 ヌカカは網戸を通り抜けるほど小さく、服の中に入り込んで吸血するため“スケベ虫”や“エッチ虫”とも呼ばれる小さな虫。ブユは、“ブヨ”や“ブト” とも呼ばれている。小さな虫だからと近づかないように注意しておきたい。

「また、カラフルな虫は毒を持っていることが多いので、近づかないこと。あの美しさは『毒を持っていますよ』というアピールです。また、野外にはヤマビルやヘビもいますので、肌を露出しないことが基本。長袖・長ズボンで行動することが虫よけ対策になります」

◆日焼け止めクリームとの併用はアリ?

 ただ、この季節は暑い。夏本番ともなれば、なおさら。極力は長袖・長ズボンで過ごすにしても、ときには袖ぐらいは捲りたいかもしれない。肌の露出はおすすめしないと先生は言うが、どうしてもの場合は、肌に塗ったりスプレーしたりする虫よけ商品が効果的なのだとか。

「肌に塗ったりスプレーしたりするタイプの商品を使うとき、『日焼け止めを塗る前に虫よけを使うのか、日焼け止めを塗ってから虫よけを使うのかがわからない』という声も耳にします。両方を使う場合は、日焼け止めを塗ってから虫よけ商品を使ってください。日焼け止めは、太陽から肌を守るためにコーティングする働きがあるため、先に虫よけ商品を使ってしまうと、虫よけ成分もいっしょに閉じ込められて効果を発揮できません」

 ここまで、虫の駆除方法や対策についてたくさん教えてくれた佐々木先生だが、「なかには、害虫なんてすべて殺してしまえばいいという方もいますが、虫の生態系を壊さないためにも駆除は最小限にとどめ、虫と共存する社会を目指したい」という考えが根底にあるようだ。

◆「害虫」も生態系を支えている存在

「なかには、『フマキラーという社名には“キラー”という言葉が入っているから、虫を殺すための会社だろ?』と言われることもありますが、決してそうではありません。たとえ害虫でも、すべて殺してしまえば生態系が崩れてしまいます」

 ダニやゴキブリなど、見た目がグロテスクで害を与えてくる虫も少なくないため、絶滅すればいいと思うこともあるかもしれない。けれど、私たちの地球や未来を守るためには過剰に虫を怖がらず、まずはエサを減らすための掃除や対策を徹底し、不要な殺虫は控えたいものだ。

<TEXT/山内良子>

【佐々木智基】
フマキラー株式会社にて開発本部基礎科学研究部部長・主席研究員を務め、虫の飼育・研究をおこなう虫博士で、2019年以降は蚊・ゴキブリ・ダニ・アリ・外来種問題を担当。また、虫や植物をテーマとしたキッズ向けサイト「フマキッズこども研究所」内でも“虫はかせ”として活躍し、「虫や植物とふれあうコンテスト」では審査員も務めている

【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意

この記事の関連ニュース