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今年の「伝説の新馬戦」の勝馬は? 衝撃のデビューを飾った注目の2歳馬たち

日刊SPA! 2024年7月6日 8時30分

 新馬戦が始まって1か月が経ちました。かつてはクラシックを担う主役級のデビューは10~12月あたりが多かったですが、近年は育成技術の発展に伴い、早い時期にデビューして賞金を稼ぎ、ゆとりあるローテーションでクラシックに挑むケースが増えました。
 特に今年はすでに新馬戦の時計、ラップから来年のクラシック候補が続々と誕生しています。今回の記事では来年のクラシック路線を先取りすべく、現時点の注目2歳馬5頭をご紹介しましょう。

◆世代最初の新馬戦を勝利!/ダノンフェアレディ

 この世代最初の新馬戦となった6月1日の京都5R。例年、芝1600mで行われるため素質馬の出走も多く、レッドリヴェールやケイアイノーテックといった後のG1馬も誕生しています。

 そして今年、世代一番星を飾ったのがダノンフェアレディでした。しかも、そのレース内容が強烈で、1枠から先手を奪うとスピードの違いで快調に飛ばし、直線では迫るショウナンザナドゥを半馬身振り切って勝利しました。

 勝ちタイムはこの時期の2歳馬としては驚異の1分33秒8。なんと2歳戦の芝1600mで勝ちタイム1分33秒9以下かつレースの上がり2ハロン22.5秒以下だったレースの勝ち馬は過去に8頭。該当馬はG1 6勝のグランアレグリアを筆頭にサリオスや今年の牝馬クラシック勝ち馬ステレンボッシュ、チェルヴィニアといった名馬ばかりですから、ダノンフェアレディも牝馬クラシック路線の主役を担う存在と見て間違いないでしょう。

◆伝説の新馬戦再び!?/ミリオンローズ

 3回東京2日目の牝馬限定戦で行われる新馬戦と言えば、昨年ボンドガールやチェルヴィニアが出走して「伝説の新馬戦」と話題を集めました。今年も戦前から調教や血統から話題を集めた馬が多数出走し、戦前から伝説の新馬戦再び!?と思わせる顔ぶれ。

 そんな注目の一戦を制したのがミリオンローズでした。1600mながら道中は12.9秒のラップが刻まれるなど非常に落ち着いた流れで、新馬戦らしい直線のトップスピード勝負に。上がり2ハロンは11.0秒、10.9秒の究極の瞬発力勝負となりました。

 2歳戦の芝1600m以上の新馬戦で、レースの上がり2ハロンが21.9秒以下となったのは歴代でも51件しかありません。該当レースの勝ち馬にはリバティアイランドやワグネリアン、オルフェーヴルといったG1馬をはじめ19頭がその後に重賞を勝利しています。3頭に1頭以上の確率で重賞ウイナーが誕生しているだけに、非凡な瞬発力を見せたミリオンローズは今後も注目でしょう。

◆成功が確約されたダービー最有力候補/クロワデュノール

 今年のオークス馬チェルヴィニアの弟アルレッキーノが出走する事で戦前から話題を集めていた一戦。単勝オッズも1.7倍と圧倒的な支持を獲得していましたが、レース後に我々が受けた衝撃はこの馬によるものではありませんでした。その馬の名はクロワデュノール。

 アルレッキーノ自体も2着ですからその素質は疑いようがなかったわけですが、そのアルレッキーノをまさに子ども扱い。レースの5ハロン目から11秒台が続く持続力が問われたレース展開で、レースの上がり4ハロンは45.4秒が記録されました。これを2番手から楽な手応えで抜け出し、自身の上がり3ハロンはメンバー最速の33.8秒。

 これはレース後、すぐにSNSなどでも話題となりました。というのも、東京競馬場で行われた2歳戦の芝1800mで勝ちタイム1分46秒9以下+レースの上がり4ハロン45.9秒以下で勝利した馬は過去に2頭しかいません。そして、その2頭というのが無敗の三冠馬コントレイルとG1 6勝の世界最強馬イクイノックス。この時点で成功が確約されたと言っても過言ではないパフォーマンスであり、来年の日本ダービー最有力候補が誕生した瞬間でした。

◆クロノジェネシスに続くバゴ産駒の大物誕生/トータルクラリティ

 凱旋門賞などフランスで活躍したバゴ。産駒にはクロノジェネシスを筆頭に息の長い末脚を武器とする馬が多い反面、ヨーロッパ系の種牡馬であるため日本ではスピード不足の産駒も目立ちます。しかし今回取り上げるトータルクラリティはクロノジェネシス級の逸材だと期待しています。

 新馬戦は良血馬ラトラースが出走した事もあり2番人気に甘んじましたが、レースではそのライバルを見る形で進め、上がり1ハロン10.9秒の加速ラップを差し切りました。自身の上がり3ハロンは33.9秒を記録しており、キズナ産駒のラトラースをも上回るスピード性能を示しています。

 なお、2歳新馬戦の芝1600m以上でレースの上がり1ハロン10.9秒以下+自身の上がり3ハロン33.9秒以下で逃げずに勝利した馬は過去に10頭しか該当していません。その中にはリバティアイランドなど10頭中4頭がG1で馬券内に好走しており、10頭中7頭が重賞で馬券内と活躍しています。バゴ産駒としては異質のスピード性能を示した点はクロノジェネシスにも通ずるものがあり、大物誕生の予感です。

◆評判に違わぬ話題のキング/エリキング

 宝塚記念当日の新馬戦は関西の素質馬が集まる一戦。2017年のダノンプレミアムや2020年ダノンザキッドなどが後にG1で活躍しています。今年も評判馬が多く参戦してきましたが、制したのはエリキング。ウマ娘でおなじみの藤田晋オーナーがセレクトセールにて2億1,000万円で落札した話題の素質馬です。

 スタートこそ出遅れましたが、中団でレースを進めると4コーナーでは3番手まで押し上げる競馬。手応え十分に直線に突入すると、加速ラップを差し切っています。上がり3ハロンもメンバー最速タイを記録しており、2着サラコスティに1馬身半差をつける完勝でした。

 当日は降りしきる雨の中、重馬場で開催。そのため時計的には決して特筆すべきものはありませんが、ラップを見ると素質の片鱗を感じさせます。京都競馬場芝1800mで行われた2歳新馬戦において、レースの上がり1ハロン11.4秒以下+上がり3ハロン1位+2着と0.2秒差以上で勝利した馬は過去に17頭しか該当しません。

 その中からアドマイヤグルーヴ、ヴァーミリアン、キズナ、エピファネイア、マカヒキ、ジュエラー、ラヴズオンリーユーがG1を勝利しています。エリキングも話題に違わぬ活躍が期待できるでしょう。

 今回は特筆すべき5頭の注目馬を挙げましたが、冒頭にも書いた通り今年は例年以上にこの時期から高いパフォーマンスを見せている馬が多い印象です。来年のクラシック路線は牡馬、牝馬共にレベルの高いレースになるのではないかと個人的には感じています。これらの素質馬が今後のレースでどのような成長を見せるか、そして今後の新馬戦でこれらの馬を脅かす素質馬が出現するかどうかにも注目ですね!

文/安井涼太

【安井涼太】
各種メディアで活躍中の競馬予想家。新刊『安井式上がりXハロン攻略法(秀和システム)』が11月15日に発売された。『競走馬の適性を5つに分けて激走を見抜く! 脚質ギアファイブ(ガイドワークス)』『超穴馬の激走を見抜く! 追走力必勝法(秀和システム)』、『安井式ラップキャラ(ベストセラーズ)』など多数の書籍を執筆。

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