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中高年の”コネ入社”は地獄への入り口?入社後に「給料3割カット」「クズ幹部の尻ぬぐい」など悲惨な目に遭うことも

日刊SPA! 2024年7月7日 8時52分

人生100年時代。「人生最後の職場を探そう」と、シニア転職に挑む50、60代が増えている。しかし、支援の現場ではシニア転職の成功事例だけでなく、失敗事例も目にする。シニア専門転職支援会社「シニアジョブ」代表の中島康恵氏が、今回はコネ入社の実体について解説する。
シニアの転職は依然として厳しく、頼れるのであればコネでもなんでも使いたい。しかし、批判的な声の多いコネ入社をしても大丈夫なのか? そんなコネ入社のメリット・デメリットや、悲惨な末路を迎えた実例を含めて、コネ入社の実情に迫る。

◆転職でコネは使うべき?

「親ガチャ」という言葉が浸透して久しく、また、以前よりも「二世議員」など親の権力や経済の基盤を世襲することへの目が厳しくなっているように思う。

では、「コネ入社」はどうだろうか。「縁故採用」とも呼ばれるが、親族や友人といったもともと持っていた縁を活用して会社に入る方法である。「コネ入社」についてもおおむね批判的な目が多いようだ。

しかし、最近では似た印象の「リファラル採用」も活発になっているが、そこまでの批判は見受けられない。この違いはどこにあるのだろうか。

また、中途採用やシニアになってからの転職・再就職では、コネを使いたい人も増える。人生が長くなると人脈形成が進み、一方で通常ルートでの転職・再就職の難易度が上がるためだ。採用する企業側も特定のスキルセットやマインドの人材を求めるなかで、縁をたどった採用を行う場合がある。

一般の目線では悪い見え方の多い「コネ入社」について今回は、メリット・デメリットや実際にコネで就職して悲惨な結果となった中高年の事例を挙げながら考えてみたい。

◆コネ入社とリファラル採用の違いとは?

そもそも「コネ入社」(縁故採用)と「リファラル採用」とはどう違うのだろうか。

「コネ入社」でも「リファラル採用」でも、どちらも社内のメンバーの縁やつてをたどって、社外の人材にアプローチする点は同じだ。2つのもっとも大きな違いは、つながりのある人材がどのステップまで進めるのかにある。

「コネ入社」は、基本的に入社が前提だ。会社側も人材側もよほど大きな問題がなければ、話が進んだ段階でもう入社が決まっている。通常の求人応募と同じような試験などの選考がない場合も多い。

一方、「リファラル採用」は、あくまでも母集団形成を目的としている。つまり、社員とのつながりを持った人材であっても「採用説明会の参加」などがいったんのゴールで、そこから先、正式に応募をするかしないかは人材側で自由に決めることができる。応募に進んだ場合でも、通常の求人応募と同様の選考があることが多い。

人材側からみた「コネ入社」のメリットは、なんといっても特別扱い・特別ルートである点だ。倍率や難易度が高い会社であれば、通常の応募よりも楽で確実に入社でき、内定までも早い。一方、デメリットは入社後に辞めにくく、選考中や内定の辞退もしにくい点だ。

もし、無理に辞めてしまった場合、つながりのある家族などにも迷惑がかかるかもしれない。また、能力以上の期待や、向いていない仕事を任されてしまうこともある。コネの噂から他の社員との溝が広がることもある。

企業側が「コネ入社」を進めるメリットは、素性の確かな人材を得られることや、辞めにくいこと、経営陣の血縁者などであれば、利害や価値観などが経営陣と近い人材を得られることにある。反対にデメリットには、他の社員との不公平感が士気に影響することや、選考を経ずに入社させてしまうことで、本来求める水準の能力や適性がない人材を入れてしまう可能性が挙げられる。

◆誘った人がダメ人間、入社を断ったら恫喝

「コネ入社」のメリット・デメリットを整理したが、デメリットどころかコネ入社した結果、散々な目にあった例を紹介しよう。私たちが支援したシニア求職者や、当社の社員の実体験をもとにまとめてみた。

例えば、昔から個人的に付き合いのあった人物に誘われて、その人物が幹部として働く会社に転職したという人がいた。

だが、誘ってきた幹部がとんでもない口だけのダメ人間だったことが、同じ職場になって初めてわかった。仕事は部下に任せきり。社長や他の幹部には適当なことを言いながら、業務時間中もスマホでゲームをしているだけだった。

当然、そんな幹部のコネで入社した人も、幹部の同類だと思われて他の社員からの風当たりはものすごかったとか。さらに、その人自身も仕事しない幹部の尻拭いに奔走させられる毎日。適当な嘘ばかり言う幹部のせいで、社長や他の幹部、部下の間に挟まれたコネ入社の人は窮地に立たされ、結局は辞めざるを得なくなったという。

コネ入社して悲惨な目に遭った話だけでなく、コネ入社を断って悲惨な目に遭った人もいる。

以前から取引のある会社から、数名の中堅や幹部社員によって誘われていた人は、そのうち、そこの社長からも勧誘のLINEが届くようになる。もともと付き合いがあったので無碍にできずにいたが、仕事内容や労働条件にまったく触れない勧誘に不信感を覚え、ある日、勇気を出してちゃんと断ったそうだ。

すると、それまで熱心に勧誘していた社長も社員も態度が急変。「せっかく誘った社長の顔に泥を塗った」「これまでどおりの活動がこの業界でできると思うな」「許されるとは思わないけど、とりあえず社長に土下座したら」など、強い言葉で恫喝されたという。幸い実力行使まではされることなく、徐々に沈静化して何も言ってこなくなり、別な会社に転職したことで完全に関係も切れたらしい。

最後に紹介するのは、コネで幹部として転職した人の例だ。幹部待遇としては当初に提示された給与は少なかったそうだが、希望条件を伝えると気前よく高い給与を払ってくれたという。

だが、それも長くは続かなかった。次々と降ってくる無理難題。当然、仕事内容も事前の話とは違い、法律に抵触するようなクビ切りをさせられたことも。十分に対応しきれずにいると、ある日その人は社長に呼び出され、過去に遡って給料を3割カットされたそうだ。コネ入社なので無理を言っても従うと社長は思っていたのかもしれない。

◆コネを生かせるのは転職だけじゃない

通常の求人応募に対して、ズルのような印象があって批判的な見方をされやすいコネ入社は、求職者と求人企業双方にメリット・デメリットがあり、大きなリスクを抱えやすいことが、悲惨な結末を迎えた事例からわかる。

そもそも通常の選考ルートとは別の「裏口」のように用意されたアンダーグラウンドな手法のため、通常よりもさらにコンプライアンスが守られにくいのかもしれない。

もちろん、コネ入社や何らかのつながりを頼った就職のすべてが悪いわけではない。しかし、批判の対象になりやすい時代となり、普通の採用よりもさらに闇を抱えやすいことは覚えておくべきだろう。

人脈などのつながりの生かし方は、コネ入社だけでなく、通常の転職のあとや独立起業など、令和の現在、かなり多様になっている。シニアの方やシニアに近づいている方も、闇雲に人脈を頼った就職を目指すのではなく、人脈も含めた自身の強みを棚卸しして、60歳の方なら10年後の70歳でも活躍できるようなプランを冷静に計画するべきだろう。

【中島康恵】
50代以上のシニアに特化した転職支援を提供する「シニアジョブ」代表取締役。大学在学中に仲間を募り、シニアジョブの前身となる会社を設立。2014年8月、シニアジョブ設立。当初はIT会社を設立したが、シニア転職の難しさを目の当たりにし、シニアの支援をライフワークとすることを誓う。シニアの転職・キャリアプラン、シニア採用等のテーマで連載・寄稿中

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