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美容室経営の知られざる裏側「従業員のトラブルに気をとられてハサミを握っている時間がない」

日刊SPA! 2024年7月12日 15時51分

街中にあふれる美容室だが、その裏側は意外と知られていない。
筆者(綾部まと)はメガバンクで8年間に渡り、法人営業を担当してきた。営業店の取引先に美容室チェーンがあり、経営者から内情を教えてもらってきた。そこで見えたのは、従業員のトラブルに多くの時間を割く姿だった。

今回は全国規模の美容室チェーンを経営するAさんの事例をご紹介する。全ての美容室がそうとは限らないことを頭に置きつつ、楽しみながら読んでいただきたい。

◆経営者の仕事は、アシスタントのメンタルケア

Aさんは「マネジメントよりも、スタッフのメンタルケアばかりしています」とぼやく。

「スタイリストとアシスタントがペアで、一人のお客さんを担当します。スタイリストが髪を切ったりカラー材を作ったりして、アシスタントはシャンプーブローをしたり飲み物を出したりすることが多いですね。それぞれの役割は違いますが、店にとってはどちらも欠かせません。彼らの仲が悪いと、良い接客ができないんです」

特に女性同士は仲違いをしやすく、常にどこかで誰かが悪口を言っているという。「あのスタイリストの言うことはもう聞きたくない」と、いきなり店に来なくなるアシスタントもいるそうだ。

「アシスタントは専門学校を出たばかりの若者が多く、会社勤めの経験がある子はほぼゼロです。だから休む時は連絡するとか、嫌なことがあっても我慢して出勤するとか、社会人としての常識が通用しない子が多いんですよね」

数日間休んだのち、そのまま休職してしまうアシスタントも少なくないらしい。そのためAさんはこまめにアシスタントをご飯に誘い「大丈夫?何か困っていることはない?」と、メンタルケアをしているとのこと。

「そうすると必ず、スタイリストの愚痴が出てきます。もう片方の話も聞くためにスタイリストもご飯に誘うことになります。もちろん奢っていますし、女性と二人だと変な噂が立っても困るから副店長や他の男性スタッフも巻き込むので、結構な出費ですよ」

◆②スタッフ同士の恋愛や不倫が多い

美容師は1日に何人もの接客をするので、お客さんと恋に発展するかと思いきや、意外にもそんなことはないのだという。

「もちろん魅力的なお客さんもいらっしゃいます。でも仕事モードに入っていると“客”としか見ていないので、恋愛対象ではなくなりますね」

たまに女性アシスタントが年配の男性客に誘われてご飯に行き、そのまま恋に発展することもあるらしい。しかし、あまり多くないのだという。「それよりも圧倒的に多いのは、スタッフ同士の不倫ですよ」とAさんはため息交じりに話してくれた。

「美容師は土日休みじゃないから、他の職業の人と休みが合わないんです。それにランチタイムも決まっておらず、お客さんが抜けたタイミングで食べます。夜も遅いし、若い子は閉店後に練習するからディナーも難しいですね」

一方で、美容室という閉鎖的な空間で夜遅くまで一緒にいると、どうしても男女の仲になってしまうスタッフが多いのだそうだ。

「美容師って芸術肌というか、感性で行動するというか……我慢をしたり、理性を働かせることが苦手な右脳タイプが多いんです。ちょっとしたきっかけで、やっぱり何かが起こるんですよね」

◆不倫の末に妊娠させてしまい……

「過去にある女性美容師から、急にやめると言われたことがありました。お客さんにも人気のベテランスタッフだったので、都内の他の店に移るのかと思いきや、故郷の東北に帰るとのことでした」

なんと彼女は妊娠していたのだという。相手は同じ美容室の男性スタッフで、妻子持ちだったようだ。

「表立って産むわけにいかないから、実家に帰ることにしたようです。彼女は『彼も店をやめて東北に来て、私と結婚して、一緒に店をやる約束になっている』と言っていたけど、そんな話は彼から一言も聞いていません」

彼に問いただしてみたところ「今の妻と別れるつもりはない」と言っていたらしい。彼女は実家で子どもを育てながら、現在も待ち続けているのだという……。

◆③裁判に気をとられてハサミを握っている時間がほとんどない

Aさんは「高級美容室はスタッフの年齢層が高いから、違うかもしれませんが……」と前置きをしてこう語った。

「美容師って病んでる子が多いんです。8割は病んでいると言ってもいい。病んでいる上に美意識が高いから、パパ活をしながら美容整形をする女の子もいます」

今や美容師は店の看板ではなく、個人のSNSで集客をする時代とのこと。彼らはスマホで写真を撮ることには慣れているため、自身のマッチングアプリやSNSのプロフ画像も感じが良い。そのため、パパ活において相手には困らないのだとか。

営業後にスタッフ同士で飲んでいる時に、ある若い女性美容師が「私、豊胸したんですよね」と言い出したのだという。

「彼女はパパ活で整形費用を稼いでいて、前から色々いじっていました。何かの施術に失敗して、片耳が聞こえなくなった程です。そこまでして綺麗になりたいのか、と呆れていたら、次は胸をいじったみたいですね」

彼女が自分から言い出したから、話題を振って欲しいのかと思い、別の男性美容師が「そうなんだ、どうだった?」と聞いたとのこと。すると後日、その女性美容師はAさんに「セクハラをされた!」と泣きついてきたのだという。

◆完全な言いがかりだが、和解金を支払って辞めてもらう

「僕もその場にいたからわかりましたが、あれはセクハラではありません。でも彼女はすぐに弁護士をつけて訴えてきました。パパに紹介してもらったのか、やり手の弁護士をつけてきましたよ」

Aさんは他にもいくつか裁判沙汰の従業員トラブルがあったため、当時は美容室にいる時間よりも弁護士と話したり、裁判所にいる時間の方が長かったとのこと。

「彼女の件は和解金を支払うことで手を打ちました。かなりの金額をふっかけられましたが、大人しく払いましたよ。これ以上は長引かせたくなかったし、彼女も退職金を払うことでやめてくれると言ったので」

一見華やかに見える業界だが、クリエイティブ気質の美容師たちを束ねるには、それなりの苦労もつきものなのかもしれない――。

<文/綾部まと>

【綾部まと】
ライター、作家。主に金融や恋愛について執筆。メガバンク法人営業・経済メディアで働いた経験から、金融女子の観点で記事を寄稿。趣味はサウナ。X(旧Twitter):@yel_ranunculus、note:@happymother

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