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ホテルで“自分がこぼした尿”を掃除させる70代男性の末路。娘から「人としておかしい」と罵倒され…

日刊SPA! 2024年7月16日 8時53分

 客という立場を利用して横暴な振る舞いを行うカスタマーハラスメント。社会的にそのような行動は控えるべきだという風潮が広がっているが、いまだに悩まされる人は後を断たない。
 ホテルスタッフとして勤務する井村宏輝さん(仮名・32歳)もその1人だ。多くのカスハラ客と接してきた井村さんによれば、この手の客には一定の傾向があるという。

◆ぱっと見、まともそうな人物が…

「カスハラ的な振る舞いをするのは50代以上の男性が多いんですが、この仕事をある程度やっていると、接してすぐにその手のお客さんか見分けられるようになりました。ただ、なかには“隠れカスハラ客”とでも呼んだ方が良いような人もいます。その最悪の例がこのお客さんだったかもしれません」

 井村さんがいう最悪の隠れカスハラ客は、一見そうとは思えない容姿だったそうだ。

「細身でジャケットにハット姿でいかにも紳士という感じの70代男性。明るい人柄でホテルのスタッフにも敬語で話をするので、最初はとてもそういう人物には思えませんでした」

◆スタッフが掃除する姿をニヤニヤと…

 特にスタッフから嫌われる行動の1つが、スタッフたちが「召集」と呼ぶ行為だった。

「『バスルームのドアの建て付けがおかしいから見てほしい』と呼び出されて部屋に行くと、『コーヒーをこぼしたから掃除してほしい』と追加で頼んでくるんです。それで掃除をするんですが、もうどうやってもこれ以上は落ちないというぐらいに拭いているのに、『まだ汚い』と過剰な清掃を要求されて……。清掃スタッフを呼ぶと言っても解放してくれず、結局何時間も老人に命令されるがままに床を掃除し続けることになるんです」

 なぜ老人はそんな要求をするのか。

「潔癖症というわけではないんです。どうも、自分の命令でスタッフが苦労する様子を見ているのが好きらしくて……。自分は椅子に座って、命令しながらニヤニヤと見てくるんです。要求もだんだんとひどくなって、バスルームが汚れていると言われて濡れた床を拭き掃除したところ、明らかに尿の臭いで、吐き気が止まらなかったというケースもありました」

◆辞めていったスタッフが何人も…

 老人のカスハラ行為は他にもある。

「ルームサービスをよく頼むんですが、転んだふりをして熱いスープを浴びせかけられたスタッフもいます。熱さに取り乱しているスタッフを見て、老人は楽しそうに笑っていたらしく、あれは絶対にわざとだったと言っていました。他にも、『なぜあなたがホテルスタッフに向いてないかを説明する』と言われて、1時間以上こんこんと説明されたスタッフもいます。そんな人物が多いときは週に3日や4日も泊まりにくるので、耐えられなくなって辞めていったスタッフが何人もいました」

 ひどい所業だが、出禁にすることもできなかった。

「旅館やホテルに関する法律で、宿泊を申し出た客を断ることはできない決まりがあるので、自主的に利用をやめてもらうしかないんです。支配人はスタッフの離職を食い止めたいので、『もう来ないでいただきたい』と老人に伝えましたが鼻で笑われたらしく、頭を抱えていました」
 
◆娘の前で懇願してみると、意外な展開に

 そんな窮地の中、チャンスが訪れる。

「毎年、老人は娘の誕生日にホテルのレストランを利用していたので、支配人はこの日に勝負に出たんです。食事を終えて帰ろうとする2人を呼び止め、老人が何をしてきたかを詳細に説明し、『もう当ホテルは利用しないでほしい』と土下座する勢いで懇願したんです」

 これに老人の娘が激怒した。

「『なんでそんなことをするの?』『人としておかしいと思わない?』と父親である老人を罵倒し、『だからお母さんに逃げられたんだよ』『もう2度とここに来ないと約束して』と相当な剣幕でした。老人は叱られた小学生みたいにうつむいて『ごめん、ごめん』と繰り返していました」

 老人は利用しないことを渋々承諾し、その後、2度とホテルには現れなくなったという。

<TEXT/和泉太郎>

【和泉太郎】
込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め

―[話の通じないおっさんの末路]―

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