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山手線で妊娠中に気づいた“妊婦キーホルダー”の現実「席を譲ってくれる人は“ほぼ皆無”」

日刊SPA! 2024年7月20日 15時52分

 2023年7月末に未婚のまま出産し、シングルマザーとなったド底辺グラドル兼ライターの筆者(吉沢さりぃ)。皆様は「マタニティマーク(以降、妊婦キーホルダー)」をご存知だろうか。もしかすると、未婚の男性は存在すら知らないかもしれない。
 妊婦が交通機関を利用する際など、周囲に配慮を促すものだが、都内で生活している筆者の体感としてはほとんど効力が感じられなかった。おそらく、妊婦キーホルダーは「意識しないと見えない」。今回は、これをより多くの人に知ってもらいたく、なかなか厳しい現実を綴りたい。

◆「妊婦キーホルダー」をつけていても席を譲ってくれる人は“ほぼ皆無”

 息子氏は現在11ヶ月。毎日びっくりするほどよく食べ、大人の睡眠を妨害するほどのボリュームでイビキをかいて熟睡している。

 生まれた時はぜんぜん似ていなかったのに、今では整形する前の筆者とソックリ。美形……という感じには程遠いが、とても愛おしい。「もう1歳なんて早いなぁ」と写真フォルダを見返すことも増えた。息子氏の写真だけでなく、妊婦時代の自撮りもたくさん出てきて「こんなデカイお腹して動き回っていたんだ」と、懐かしんだりしている。

 そんな思い出に浸りながら、「妊婦キーホルダー」をつけていたことを思い出したのだ。

 妊婦キーホルダーを最初につけたときは「まさか私がこのキーホルダーをつける日が来るなんて!」と少し感動した。

 が、つけて2、3日過ごして「別につけても意味がないのね」と感じた。というのも、本当にびっくりするくらいに誰も電車やバスで席を譲ってくれないのだ。

 私がキーホルダーをつけるようになったのは妊娠6ヶ月の頃。通っていた産院に体重管理を強いられていたので、そこまで体重の増加はなく、昔から私を知っている人は「え? 妊娠したん?」という反応だったし、おそらく初見の人からは「ただの小太りの妙齢」といった姿だったと思う。

 ただ、見た目があまり変わらないといっても電車移動はキツく、「1分でもいいから座りたい」という切なる思いから妊婦キーホルダーを必ずつけていた。

 小さなショルダーバッグを斜めがけにし、そこにキーホルダーをつけていたので、自分的には「ここまでわかりやすくしていたら、みんな席を譲らざるを得ないだろうな(笑)」と思っていたのだが、電車で席を譲ってくれた人はほぼ皆無。ゼロではないが、皆無と書きたくなるほど少ない状況だった。

◆山手線の優先席の付近で「もしかして見えてない?」

 絶対安静と言われて2ヶ月引きこもり、絶対安静が解除された妊娠8ヶ月頃には誰がどう見ても妊婦! という仕上がりで山手線に乗る機会があった。

 新宿から乗った品川行きの山手線は、程よく混み合っていたが「THE・妊婦体型の私には関係ないやろ」と。優先席を譲ってもらう気満々で、とりあえず付近に立った。

 しかし……。誰も席から立ち上がる様子はなく、代々木に到着。「見えてなかったのかな?」と、ショルダーバッグにつけているキーホルダーを「これでもか!」と見えるように位置にズラした。そんな努力も虚しく原宿に到着。

「多分もう無理だろう」と諦めて、入り口付近の手すりを持って立つことにした。すると、「ポンポン」といきなり肩を叩かれた。なんだろ?と振り向くと。美男美女の外国人カップルだった。

 彼女がジェスチャーで開いた席に座るように手招きしてくれた。どうやら彼が座っていた席を譲ってくれたようだ。彼女から「ベイビー?」と微笑まれ、私がうなずくとニッコリ。本当に彼女は天使のようだった。渋谷で降りてしまったが、すごく嬉しくて胸が熱くなった。

◆「もう他人に期待するのはやめよう」と思った

 また別の日、今度は恵比寿から新宿に行こうと山手線に乗ったときだった。

 18時30分ぐらいでサラリーマンの帰宅の時間帯と重なって混んでいた。この頃はもう臨月だったが、無理をしない程度に働いていた。

 すでに妊婦キーホルダーをつけていても席を譲ってもらえないことを知っていた筆者だったが、この日は本当に疲れていて「まじで座りたい!」と、混み合っている車内でなんとか優先席の前に立った。

 50代と思しきマダム2人。「あぁ、よかった、この2人は譲ってくれるだろう」と。

「いつでも座りまっせ!」と意気込んでいた筆者だったが、マダムたちの討論会は途切れないまま原宿に着いた。マダムとは何度か目があったし、妊婦キーホルダーも見ていたはずだが、譲ってくれなかった。それどころか「人間は結局、思いやりが大事なのよ」などと語っていたので愕然とした。

 こんな目の前に妊娠後期の妊婦がいるのに、ガン無視して思いやりについて話すって、正気か?

 心の中でマダムと呼んでいたが、代々木に着く頃には彼女たちのことを「非思いやりオバはん」と名づけ、あまりの疲労から「もう日本は終わりだな」と思った。非思いやりオバはんとの出会いにより「もう他人に期待するのはやめよう」と、妊婦キーホルダーはつけているものの、基本的には席は譲ってもらえないと考えるようになった。

◆譲ってくれる人は救世主

 さらに別の日、半ば諦めながらも再びちょい混みの山手線に乗ったときのこと。

 普通席の前の手すりを持ち、あまりの眠さに目を閉じていた筆者だったが、少し離れた席に座っていた大学生らしき男性が「気がつかなくてすみません!座ってください!」と立ち上がってくれたのだ。そこそこ混んでいる車内で、距離のあるところから「どうぞ!」と声をかけるのは、なかなか勇気がいることだと思って感心した。目的の駅まですぐそこだったが、ありがたく座らせてもらった。身重のからだとしては、1分だけでも座れたらラクさがぜんぜん違う。まさに救世主。

 この譲ってくれた彼は顔もイケメンで「顔のいい人は性格もいいのね……」と感じたと同時に、生まれてくる我が子も男の子だとわかっていたので「こういう子になって欲しい(顔も含め)」と心から思った。

 それからも何回か電車に乗ったが、譲ってくれるのは外見のいい日本人か、外国人ばかりだった。中には「妊婦が外出るんじゃねえよ!」と小声で言ってくるオヤジまでいて「日本はもう終わりだ……」と再度思った。

◆自分が妊娠するまで気がつかなかった

 最近、世間では「少子化、少子化……」とよくいうが筆者の範囲では、むしろ「妊婦めっちゃ多くない?」と感じるようになった。

 なぜだろう?と考えたが、妊婦が増えたというよりも、「自分が妊娠したから気がつくようになった」ということなんだと思う。

 自分が妊婦キーホルダーをつけた経験から、街中で同じように大変な思いをしている妊婦に対して敏感になった。でも、「私は妊娠する前にちゃんと妊婦に席を譲れていたか?」と自分自身に問うと、ハッキリ「YES」とは言えない。

 妊婦の中には「運動を兼ねて逆に電車では立ちたい」という元気なママもいるかもしれないが、筆者はとにかく!とにかく!座りたかった! ので、出産以降は妊婦キーホルダーを見たら譲るようにしている。

 自分も疲れていて立ちたくない、譲っても断られたら嫌だ、譲るのに勇気がいる距離……など、明らかに妊婦体型ではない場合は「まだ大丈夫じゃないかな?」と思ったりもするが、顔色がいくら良くても、いくらお腹が出ていなくてもじつはしんどかったりする。

 優先席付近の妊婦には問答無用で席を譲って欲しいと思うし、妊婦キーホルダーに周りがもっと敏感になって欲しいな、と思う。

<文/吉沢さりぃ>

【吉沢さりぃ】
ライター兼底辺グラドルの二足のわらじ。著書に『最底辺グラドルの胸のうち』(イースト・プレス)、『現役底辺グラドルが暴露する グラビアアイドルのぶっちゃけ話』、『現役グラドルがカラダを張って体験してきました』(ともに彩図社)などがある。趣味は飲酒、箱根駅伝、少女漫画。X(旧Twitter):@sally_y0720

―[ド底辺グラドル兼ライター、未婚の母になる]―

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