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「タイパが悪すぎる」上司とケンカして半年で辞めた20代社員。本当に非効率で無駄な仕事だったのか?――大反響・上司に嫌気がさした人たち

日刊SPA! 2024年7月20日 15時45分

過去5万本の記事より反響の大きかった傑作選。今回は上司に嫌気がさし辞めちゃった人たちに注目する。果たしてどちらが悪いのだろうか……。(初公開2023年9月15日 記事は取材時の状況) *  *  *

 せっかく入社したにもかかわらず、すぐに辞めてしまう新入社員が後を絶たない。Z世代を中心に「タイムパフォーマンス」(以降、タイパ)という言葉がよく使われるようになった。かけた時間に対してどのくらいの効果があり、価値があったのかを指すものだ。

 新入社員などの若者たちは物事に対して「タイパがいい/悪い」という基準で判断しがちだが、さまざまな世代が働く会社組織においては悩ましい問題でもある……。

 今回は、タイパに関する上司の考え方に納得できず、退職してしまった新入社員のエピソードを紹介する。

◆【ケース1】有名大学出身の同期にライバル心を燃やしていたが…

 大手ハウスメーカーに勤務する田中とおるさん(仮名・20代)は、賃貸住宅の建築営業をしている。そこで出会った同期Aが「タイパが悪い」という理由で、入社半年で退職した。

「努力次第でインセンティブとしてわかりやすく給与に反映されることに魅力を感じ、トップセールスを夢見て入社しました。ただ、新入社員のなかには、理想と現実のギャップで退職していく人も多くいました」

 Aは誰とでも打ち解けられるタイプで、田中さんは嫉妬も含めて「負けたくはない」と思っていた。しかし、入社後の研修が進むにつれて、Aへの印象は大きく変化したそうだ。

◆「非効率で無駄な業務だ!」と上司とけんか

「1ヵ月が経った頃、Aはキレやすくプライドが高すぎて、まわりとうまくいかないということがわかってきました。たとえば、Aが確保している席とは知らずに他の人が着席しただけで怒鳴ったり、同期でスポーツを楽しんでいたときにミスをした仲間に暴力を振るったり……。どうやら、自分の理想通りにいかないと納得しない性格だったようです」

 嫌な予感がありつつも3ヵ月の研修期間が終わり、半年が経とうかという頃に同期から田中さんに連絡があった。その内容は「Aが会社を辞めた」というものだった。

「辞めた理由が『飛び込み営業や新規顧客を開拓するという業務が、非効率で無駄だから』でした。そのことを当時の上司に伝え、暴れまわった挙句に辞めたと聞きました」

◆地道な営業に意味はない?

 田中さんたちの仕事は、日常業務の約7割以上が営業活動となる。しかし現在は資材高騰や地価の上昇で、1棟1億円の建築物を建てたい人はいても、現実的に建てられる人を探すのは簡単ではないと話す。

「たしかに、得意先もない新入社員にとっては難易度が高いです。一方、上司や先輩は紹介などをうけて成約しているので、そのような姿を見ていると、汗水流して結果が出るのかもわからない地主を地道に訪問していくことに意味がもてず、耐えられなかったことは少し理解できます」

 業務効率を考えれば、Aの言い分は一理あるものの、改善策を提案するなど、もう少し上司にうまく伝えることができていれば、状況は変わっていたのかもしれない。

◆【ケース2】「タイパが良い」という理由で入社

 機械の修理エンジニアをしている鈴木健太さん(仮名・30代)は、新人教育担当を任されている。ある年、専門学校を卒業したばかりの男性新入社員が入社した。

「真面目で積極的にコミュニケーションをとる性格から、将来性やリーダー性を強く感じました。入社前は、整体師の仕事を選択するか葛藤があったとのことで、うちの会社を選んでくれてよかったというのが、正直な思いです」

 鈴木さんは、「今の仕事を選んだ決定打は何か」を聞いてみることにしたという。すると、いわゆるZ世代ならではの回答が返ってきた。

「彼いわく『整体師を志すには、一人前になるには時間がかかり過ぎる。“やりたい仕事”と“稼げる仕事”を天秤にかけたときに、今の仕事の方がタイパ良いんですよね』とのことでした。若い世代は達観しているなぁと、このときは感心したのですが……」

◆「新人のくせに生意気だ!」と上司が激高

 入社から3ヵ月ほど経った頃、彼が上司から叱責を受ける場面に遭遇した鈴木さん。変化を嫌う保守的な上司と、無駄や不必要なことを排除したい彼の意見が真っ向から衝突していたという。

「会社を根本から良くしたい」との正義感からくる行動だったのではないかと振り返るが、鈴木さんは新人教育担当として仲裁に入ることに……。

「上司は『新人のくせに生意気だ!』とすでに激高していました。穏便に済ませるためにいったんこの場は謝罪するように彼に言いました。しかし、彼の謝罪は簡単に取り繕う程度で、その態度に上司はさらにヒートアップ。上司をなだめることで精一杯でしたね」

 話し合う時間を設けた鈴木さんだったが、すでにフォローが遅かったようだ。

「彼が最後に残した『本当にタイパが悪い会社です』という言葉が印象的でした。結局、数日後に会社を去って行きました。もう少し早くフォローしてあげられたらよかったんですが……。私には『感謝している』と言ってくれたのが救いです。ただ、彼は今後、整体師になるためにイチからやり直すそうなのですが、タイパうんぬんの話でいうと、少し心配になっちゃいますね」

<取材・文/chimi86>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

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