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市原隼人「怒りが僕の原動力」“理由なき反抗”を続けてきたデビュー25年の現在地

日刊SPA! 2024年7月21日 8時52分

 映画デビュー作であり、主演を務めた『リリイ・シュシュのすべて』(2001)から、一線での活躍を続ける市原隼人さん(37歳)。
 ドラマ『WATER BOYS2』『ROOKIES』といった作品でも人気を博してきましたが、2019年からスタートし、ドラマも劇場版も大好評を博している『おいしい給食』シリーズの主演で魅せた、これまでのイメージを覆す全力演技でさらに支持層を拡大。

 放送・配信中である最新主演作のクライムサスペンスドラマ『WOWOW×テレビ東京共同製作連続ドラマ ダブルチート 偽りの警官 Season2』では、巨大詐欺組織を喰らう詐欺師の田胡悠人を演じて、また新たな一面を披露しています。

 そんなコメディからシリアスまでどんな作品の真ん中にも立てる演技力と求心力に、改めて評価が高まる市原さんを“奮い立たせる”思いとは? 壁にぶちあたって停滞している人へ熱いメッセージももらいました。

◆自分が変わればすべてが変わる

――30代、さらにギアがあがった印象ですが、自分を奮い立たせる言葉のようなものはありますか?

市原隼人(以下、市原):僕は、自分自身を楽しませられるのは自分しかいないと思っています。なので、なにかをやらずに後悔するより、自分を使って、行動をおこして後悔するほうが納得できる。結局、自分で選択してきた道ですから。そこで自分を生かすも殺すも、楽しむのも楽しまないのも自分次第。

「いい環境になればいいな、いい仕事がくればいいな、いい人と付き合いができればいいな」ではなく、いい環境に、いい仕事に、いい人付き合いに、自分がしなければいけない。自分が変わればすべてが変わる。そうした“思い”を常に持っていることで、救われる部分が僕にはあります。

――かなり強い“思い”ですが、市原さんは、それで「救われる」んですね。

市原:押し付けは苦になるので、決して押し付けたくはないと思っています。僕の場合は、どう見られるかを気にするのではなく、自分がどう在りたいかを大切にするようになって変わりました。若い頃には背伸びをしたり、強がって思ってもいないことを口にしてしまったりして、それが自分の足かせになったこともありました。ですが、自分がどう在りたいかを軸にしてから変わりました。

◆自分自身の可能性をつぶさない

――停滞したまま、楽しめずにいる人もいます。

市原:幸せの定義というのは人それぞれだと思います。おそらくみなさま、これまでにいろいろな壁にぶち当たったり、苦手なことを経験されたりしたと思うんです。でもそこで全てを遠避けるのではなく、いつかそれを克服して、自分のものにできるかもしれない、壁を乗り越えられるかもしれないという“可能性”だけは残していただけたら、その方が僕は良いではないかと思います。

 その人が、自分自身の可能性をつぶさないこと。それが人生を楽しむためのひとつの大きな手段だと思います。可能性さえ捨てなければ、たとえ目標にたどり着かなくても、そのプロセスのなかで、また新たな喜びを発見できるかもしれません。おこがましいですけれど、僕も同じ思いで、日々壁にぶち当たって、毎日心を折られるなかで、可能性だけはつぶさずにいたいなと思っています。

◆最新ドラマを前に、孤独感でいっぱい

――クライムサスペンス『ダブルチート 偽りの警官 Season2』がスタートしました。4月期にテレビ東京で放送された向井理さん主演のSeason1から、WOWOWにバトンタッチして、市原さん演じる田胡悠人を新たな主人公に展開していきます。1からの物語を受けての2の主演というスタイルへの挑戦はいかがですか?

市原:とても難しかったです。Season1で構築された組の空気感や雰囲気だったり、シーズンを通じて作品として何を伝えたいのかを考えたりしています。本当の正義とは何なのかという大きなテーマが見える、難しい作品です。撮影に入る前に各プロデューサーや監督陣と一緒に色々と話し合うなかで、ヒューマン的な部分がより前に出る作品になってきました。

――作品のテイストが、Season1とはまた違います。

市原:Season1では地上波ならではの面白さを提供されていたと思うので、我々は我々でWOWOWでしかなし得ない掘り下げ方をしていきたいと要望いたしました。しっかりとすべてのスタッフ、役者のことを信じて寄り添ってくださる監督陣なので、そこに迷いはありませんが、これから田胡として、どんな心情にたどり着くのか、どこまで入っていけるのか。正直、自分としては孤独感でいっぱいです。

◆主人公に寄り添ううち、涙が出たり声が出なくなったり

――孤独感、ですか。

市原:常に心に影を持った田胡悠人の気持ちに寄り添う、その一択しかないのですが、脚本には描かれていないのに、もどしたくなってしまったり、涙が止まらなくなったり、声が出なくなったりしています。

――内へ内へと入っていくキツイ作業のようですが、視聴者にとっては、田胡はかなりなぞに包まれた人物です。

市原:そうなんです。主役ですが、人を巻き込んでいく役でもありません。誰かに何かを訴えかけるというよりも、お客様に何かを拾っていただき感じていただく作品になっていると思います。クライムサスペンスとしてのテンポ感も楽しんでいただきつつ、田胡がなぜ詐欺師になったのかを最終回まで追いかけていただけたらと思います。ものすごく生々しい人間の姿を見ていただけるんじゃないかと。僕としては、苦悩して悩んでいる様を、そのまま田胡に投影できればいいなと思っています。

◆デビューから25年、さらに25年後の自分に

――最後に、CMデビューから今年で25年目です。さらに今から25年後の自分にメッセージをお願いします。

市原:25年後というと、60歳も過ぎてますよね。「今のオレは頑張ってるよ。60歳過ぎたオレも、理由なき反抗はしてくれているよね」でしょうか。何かに対する漠然とした“怒り”といったものが、僕の原動力でもあるんです。決して自分が正しいとは思いませんが、この25年間、悔し涙も飲みながら、理不尽で矛盾した出来事にも向き合いながら、なんとか這いつくばってやってきました。そうした“怒り”を力に、これからもお芝居でいろんな人の心を動かすことができたらいいなと思っています。

<取材・文・撮影:望月ふみ ヘアメイク:大森裕行 (VANITES)>

【望月ふみ】
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi

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