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生活保護を受給する21歳男性。「親の顔は知らない」児童養護施設での暮らし、路上生活…語った“これまでの人生”

日刊SPA! 2024年7月25日 8時52分

若者の「見えない貧困」が広がっている。旧来型のネカフェを根城にするケースだけでなく、「限界シェアハウス」が増えたことで路上生活をせずともその日暮らしを続けていけるからだ。人手不足で就職市場は空前の売り手市場と言われているが、若い人材が引手数多な一方で、貧困から抜け出せない若者も多い。
そして、彼らの多くは“親ガチャ”を理由に世代を超えた負の連鎖を断ち切れずにいる……。そんな過酷な環境で暮らす若者を徹底取材。「忘れ去られた若者たち」にスポットを当てる。

◆21歳にして生活保護を受給

森翔太さん(仮名・21歳)
【現在の状況】生活保護受給
【主な収入源】生活保護費のみ
【現在の月収】約13万円

首都圏で8畳ワンルームのアパートに住む森翔太さん(仮名・21歳)は、若くして生活保護費13万円を受給している。

「生活保護は、ぶっちゃけラク。ここの家賃は5万2000円なので、だいたい月8万円弱で生活しています。仕事はもう1年くらいしてません」

森さんには、複雑な生い立ちがある。児童養護施設で育ったため親の顔は知らない。

「本当は大学に行きたかったんです。でも施設は18歳で出なきゃいけない。生活費と学費すべてを賄うのは現実的に厳しくて断念しました」

そう言って彼は視線を落とした。施設を出てからは職業訓練校に入学するも、半年で退学。その後は、飲食店や家具組み立てなどのアルバイトに精を出したという。

「一番働いていた2年前は、31日連勤で月収36万円のときもあったんです。人ってここまで落ちるんですね……」

◆ストレスからアイドルの推し活にハマり…

ストレス発散からハマったのがアイドルの推し活だ。のめり込んだことで、家賃はおろか、水道光熱費までも滞納し、1年前にアパートを無断退去。半年間の路上生活を余儀なくされたのち、生活保護に流れ着いた。

「最初は別の地域で受給してましたが、申請を手伝ってくれた業者が貧困ビジネスだったみたいで、利用料を引かれて月1万~2万円しか手元に残らなかった。当然、最初は不満に思っていましたが、一日中ネットを見て、3食出る生活に慣れるとどうでもよくなってきて……。そんな自分が怖くなって、直接契約できる賃貸を探し始めたんです」

だが、金銭管理は苦手なまま。月の後半には保護費は残っておらず、友達にカネを借りては、それを翌月返すという自転車操業状態にある。

「飛び癖があって、仕事も支払いも、行き詰まったら、『めんどい』『逃げたい』って思っちゃう。生活保護は働かなくても生きていける感覚がしみついちゃうから、僕の場合は裏目に出てますね。一度ラクするとそこから抜け出すのって難しい。さすがに1年先には就職していたいですが……」

貧困支援は万能ではない。

◆現代は日本人全体が孤立化している

「現代は日本人全体が孤立化しているように思います」

そう話すのは、生活困窮者やホームレスの支援活動を行うNPO法人「ほっとプラス」理事の藤田孝典氏。

「両親共働きの核家族化が進み、現在は家庭内で人との関わり方を学ぶ場面が減っています。それもあって人に頼る方法がわからない若者が増え、両親に頼れないならと家を飛び出すしかなくなってしまう。また、SNSが普及して人との交流がしやすくなったのも事実ですが、SNSはその特性上、交流する相手を自分で選べてしまうため必然的に閉鎖的になっていってしまうんです」

その後の行動も、現代的だと藤田氏は続ける。

「相談に来る方の内訳を見ると、路上で生活する若年層は約1割。残りの9割はネットカフェや友人宅など、寄宿先がある、いわば見えざるホームレスたちです」

◆路上で暮らす若者たちの実態

自身が路上生活を送る模様を綴った『ルポ路上生活』著者の、ルポライター・國友公司氏も「低収入の若者は増えているが、100%路上で暮らす人はわずか」と話す。

「シェアハウスの普及で安価に住居を得られるようになり、路上生活を免れている若者は多いはず。仮に一度路上生活をすることになったとしても初期費用が低く抑えられ、物件によっては光熱費込みのシェアハウスは、生活立て直しのしやすさの面でも一役買ってます。一方、路上で暮らす若者と話して感じたのは、著しく社会性が低い人が多い印象です。彼らに共通するのは、その日暮らせればいいという考え方。隙間バイトや炊き出しで食うには困らないので、寝床さえ確保できればなんとかやっていける時代になったことも見えざるホームレスが増える要因ではないでしょうか」

若年ホームレスはこれからも増えるのだろうか。

【ソーシャルワーカー 藤田孝典氏】
NPO法人「ほっとプラス」理事。ホームレスや生活困窮者支援活動に従事。大学で「現代日本の貧困問題と生活支援」を専門に授業も行う

【ルポライター 國友公司氏】
主にアンダーグラウンドな分野を取材し、発信している。著書に『ルポ西成』『ルポ路上生活』『ルポ歌舞伎町』などがある

取材・文/週刊SPA!編集部
 ※7月23日発売の週刊SPA!特集「[親ガチャ貧困]の実態」より

―[[親ガチャ貧困]の実態]―

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