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“非の打ち所がない”20代男性の背筋がゾクっとする正体。「マンションの扉を開けて出てきたのは…」

日刊SPA! 2024年7月26日 15時52分

 もともと赤の他人の男女がくっつけば、自分とは異なった価値観やルールに困惑することも多々あるものだ。都内に住む佐藤美紀さん(仮名・27歳)も、受け入れ難いルールに悩まされた一人だ。
◆マッチングアプリで出会った“非の打ち所がない”男性

 佐藤さんは大学を卒業後、数年間恋人ができなかったこともあり、出会いを求めてマッチングアプリに手を伸ばした。何人かの男性とメッセージのやり取りをしているなか、真面目で親切、なおかつルックスも学歴も申し分ないの男性と仲良くなった。

「私が使っていたマッチングアプリって、基本的に軽い人が多くて。すぐに『会おう』とか言ってきたり、最寄駅を聞いてきたり。彼は、そういうのがまったくなかったんです。とても丁寧な人だな、というのが第一印象です」

 その男性とは毎日メッセージを送り合う仲になり、時間を作って電話もするようになる。相手の年齢は自分より二つ年上で、趣味や性格、価値観なども似ている。真面目で実直な内面に惹かれ、ますます興味を持つようになっていく。

◆こんな“優良物件”がなぜマッチングアプリを?

 自然と会う流れになり、メッセージのやり取りを始めて二週間後に食事に行った。会って幻滅するということはなかった。背が高く、モデルのような整った顔立ち、社交的で話が上手い。それでいて誰もが知っている企業に勤めている。「これは俗にいう“優良物件”というやつだ。こんな人がどうしてマッチングアプリをやっているんだろう」と佐藤さんは疑問に思った。

「本当に素敵な人で。街ですれ違ったら目で追ってしまうぐらい。でも彼女はいないと言うので、どこかダメなところがあるのかなって必死に探しました。先のことも考えていたので」

 刹那的な付き合いではなく、結婚を視野に入れた関係を考えていた。二度目のデートのときにさりげなく相手にそう伝えると、男性もまた同じ考えであることを知った。

 そしてその日に彼からの告白があり、二人は付き合った。お祝いでシャンパンを飲み、少し酔ったところで彼の住む港区のマンションに来ないかと誘われる。

「断れなかったですね。“港区のマンション”って響きがよすぎて。それにその日に付き合っていたので、男女の関係になるのも嫌じゃなかったんです」

◆扉を開けた途端、酔いが一気に冷めることに

 金曜日の夜ということもあり、二人はコンビニでお酒を買い込んだ。彼に内緒でコンタクトレンズの保存液もこっそり買った。手を繋ぎエレベーターを上がり、部屋のドアの前まで来た。しかし扉を開けた途端、酔いが一気に冷めることになる。

「彼がドアを開けたら、部屋の電気が付いてるんですよ。おかしいな、ってそのとき思ったんですけど、彼の癖なのかなって。それで彼が、ただいま、って言ったんですね。ちょっと理解ができなくて。すごく混乱しました」

 部屋の奥から、「おかえりー」という女性の声がした。背筋がゾクっとした。その声が彼の母親であることを理解すると、玄関の前で立ちすくんでしまい、靴を脱ぐことを躊躇った。

◆付き合って1時間後に母親と会うなんて…

「はじめまして」と、彼の母親に挨拶されるも、引きつった作り笑顔しか返せなかった。たまたま来ていたのか、それとも一緒に住んでいるのか。聞きたいことは山ほどあるが、彼には何も聞けない。靴を脱ぎ、会釈をして、「おじゃまします」と言って部屋の中に入るしかなかった。

「その日のことはほとんど覚えていないんですよ。彼のお母さんと彼が何か話をしていたのを愛想笑いしながら頷いていただけで、全然聞いてはなかったですね。苦痛でした。付き合って1時間後に母親と会うなんて想像できませんよ」

 佐藤さんは母親が帰っていくのを見守ったが、そんな素振りを一切見せることなく時間が過ぎ、気づけば終電の時間が迫っていた。三人で一夜を過ごすことが恐ろしく、逃げるようにしてその場を去った。腹立たしい気持ちのまま自宅へ帰り、彼に騙された気がして泣いてしまったという。

「最悪な気持ちでした。家にお母さんがいるって、一言あってもよかったと思うんです。でもそういうのもまったくなくて」

 別れることも考えたが、それ以外に悪いところは一つもない。たまたま母親が来ていただけの可能性もある。そう自分に言い聞かせ、彼とのメッセージや電話は普通に続けた。

◆「二人で会えないの?」と聞いてみるものの…

 翌週末も彼のマンションへ行った。金曜日の午後七時過ぎに彼のマンションのドアを開けると、そこにはまたも母親がいたのだ。

「その日も三人で料理を囲んで食事をしたんです。それなりに楽しいんですけど、そういうのを望んでるわけじゃないんですよ。二人でいちゃいちゃもできないわけじゃないですか。それで、その日に聞いたんです。一緒に住んでるの? って。そしたら、お母さんはわざわざ車で三十分以上もかけて来てるんです。私が家に来るときは彼が母親に連絡するルールがあるようで」

 佐藤さんは続ける。

「文句というか、二人で会えないの? って伝えました。今は三人がいい、というのが彼の回答です。納得はできませんでしたけど、関係が壊れる方が怖くて」

◆一年経って「結構楽しくなってきた」

 その後付き合って一年ほど経つが、今もなお彼のマンションへ行くときは母親がいるという。自分の身に喩えたらノイローゼになりそうな気もするが、その辺は大丈夫なのか。

「それが結構楽しくなってきて。ごはんも作ってくれるし、嫌味も言ってこないんです。娘みたいに可愛がってくれるんですよ。誕生日にブランドのバッグもくれたり。だから、もうこのままでもいいかな、って気持ちになっています」

 しかし、男女の儀式のようなものはどうなっているのか。

「それは、まあ。こっそりしています。お母さんが家に来るのが遅れてるときとか、買い物に出てるときとかに様子を見計らって。ロマンティックではないですけど、初めてのときもそんな感じでした」

 佐藤さんは明るい表情でそう語る。

 常識やルールというものは、それまでの人生においての思い込みなのかもしれない。彼らが幸せならば、他人からどうこう言われる筋合いもないのだろう。

<TEXT/山田ぱんつ>

―[奇妙な男女関係]―

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