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“日本一寒い町”の夏の気温は?北海道でいちばん涼しい場所を求めて旅してみた

日刊SPA! 2024年7月28日 8時53分

―[シリーズ・駅]―

◆厳しすぎる暑さの日本列島
 毎年7月から8月にかけての今の時期は、1年でもっとも暑い季節。昨年、東京でこの2か月の間に気温35℃以上を観測した猛暑日は22日。その多くが7月下旬から8月上旬に集中している。

 今年は「昨年並みかそれ以上」と言われており、厳しすぎる暑さが当分続く見通し。そのため、週末や夏休みを利用して避暑地への旅行を計画している人も多いと思うが、この時期人気が高いのは北海道。本州以南に比べると夏場も涼しく、湿度も低いので過ごしやすいと言われているが、一方で道産子たちからは「北海道も十分暑いけど……」という悲鳴も聞かれる。

 筆者は昨年7月末から8月頭にかけての約1週間、JRの『北海道フリーパス』という特急乗り放題の周遊券を使って道内各地を訪問。暑さがピークに達する時期をあえて選び、行く先々で現地の気温をチェックしてみた。

◆十勝地方は本州と変わらぬ暑さ

 まずは札幌。夏らしい青空が広がり、駅前で気温を調べると11時56分の時点で31℃。実は、札幌駅から大通公園、さらにその先のすすきのまでは地下街が整備され、沿道のビルや商業施設には地下から直接出入りできる。

 東京や大阪に比べるとまだマシだが、屋外だとジッとしているだけで汗が流れてくる。そのせいか駅構内や地下街に比べると、地上は駅前も人がまばらだ。

 その札幌を離れ、次に向かったのは十勝平野の中央に位置する帯広。駅前にある温度計は、14時55分の時点でなんと34℃。北海道なので湿度が低いのはまだ救いだが、それにしても暑すぎる。

 帯広のある十勝地方は、夏場の気温が高い地域として道内では有名。本当は名物の豚丼を食べようと思ったが、あまりの暑さで食欲が湧かずパス。代わりに食べた地元の牛乳で作った濃厚ソフトクリームの冷たさが本当に気持ちよかった。

◆道産子は29.5℃で「暑すぎてうんざり」

 そのまま帯広で1泊した後は、北海道最東端の根室へ。駅ホームに設置されていた温度計は、13時52分時点で27℃。年間を通じて30℃以上の真夏日になることがほとんどないのは知っていたが、やはりこのくらいの気温だと過ごしやすい。沿岸部で常に海風が吹いているため、実際の気温以上に涼しく感じる。

 しかし、市内には宿泊施設が少なく満室で手配できず、ホテルを予約していた釧路へ移動。こちらも夏場の最高気温は30℃以下の日が多く、避暑を兼ねて長期滞在する人も少なくない。

 ただし、釧路駅到着後に駅前で温度計を見ると、16時13分時点で29.5℃。根室とはわずか2.5℃の違いだが、体感的にはそれ以上に暑く感じる。ホテルでチェックインの際、地元出身のフロントスタッフの方は「暑すぎてうんざりします」と苦笑い。道外の方は幾分過ごしやすい気がするが、涼を感じるには程遠い。暑さに不慣れな地元の方が参ってしまうのも仕方ない。

◆北海道なのに最高気温が36℃の町

 翌日は6時台の特急に乗るため、早朝にチェックアウト。気温は22.5℃でこのくらいだと外を歩いていてもまとわりつく暑さはない。

 帯広から25㎞ほど東にある池田駅で下車したが、ここも十勝平野なので朝8時14分の時点で28.5℃。後で調べてみると、池田町ではこの日の最高気温が36℃まで上がっており、もはや本州にいるのと大差ない状況だ。

 ちなみに有名観光地ではないこの駅で降りたのは、路線バスで陸別町に向かうため。この町は冬場になると全国最低気温を頻繁に記録する別名“日本一寒い町”。ここなら真夏の暑い季節でも涼しいかもしれないと思ったからだ。

◆“日本一寒い町”はまさかの気温32℃!

 ところが、池田駅前から2時間近くバスに揺られ、街の中心地にある『道の駅オーロラタウン93りくべつ』に到着すると、そんな淡い期待はあっさり裏切られる。建物前にある温度計は10時42分の段階で32℃を表示していたからだ。

 陸別町の場合、冬場の最低気温がマイナス20℃以下を記録するのは当たり前で、過去最低は非公式ながら78年2月に観測したマイナス38℃。寒暖差が70℃になることに驚きだが、日本一寒いのはあくまで冬場。内陸で標高が高いわけでもないので夏場は暑く、避暑地にはならないようだ。

 この日は再び帯広で泊まり、翌日は午後から仕事があったので札幌に一度戻ることに。途中にはスキーリゾートのトマムがあり、最寄りのトマム駅は標高537.13mの北海道最高所の駅。下車はしていないがたまたま筆者のiphoneに入れていた温度計アプリを見たところ、同駅停車中のトマムのある占冠村の気温は27℃(9時46分時点)。池田町とは約70㎞離れているが標高がある分、少し気温が低いようだ。

◆最北端の街、稚内はやっぱり涼しかった!

 そして、翌日は札幌駅7時30分発の特急『宗谷』で日本最北端の街、稚内へ。駅前に設置されたカントリーサインと一体型の温度計は27℃(12時44分時点)。日本最北端だからか真夏でもそこまで気温は上がらず、駅のすぐ近くが港なので海風が吹いて心地よい。

 折り返しの旭川行きの特急『サロベツ』に乗車したため、わずか17分の短い滞在だったことが悔やまれる。この日は夕方、旭川に到着してそのまま駅近くのホテルに宿泊。翌日、駅前で温度チェックをすると27℃(9時49分時点)。旭川は盆地のため、緯度の割には夏場も暑い。それでもこの日はまだ時間が早かったこともあり、まだそれほど気温が上昇していなかったようだ。

◆もっとも涼しかったのは4か所

 結果、訪れた場所で日中の気温がもっとも低かったのは、根室、トマム、稚内、旭川の27℃。天候や時間帯などさまざまな要因に影響されやすく、各地の観測所と温度計の誤差もあるだろう。絶対涼しいと言うつもりはないが、ひとつの目安にはなったはずだ。

 なお、余談だが今回訪れた場所以外で平均気温が低いのは、層雲峡や旭岳温泉、白金温泉、十勝川温泉など大雪山系の標高の高い場所にある温泉地。また、インバンド客で賑わうニセコもホテルやペンション、別荘が並ぶエリアは標高があるので過ごしやすい。

 さすがに今年のお盆休みには間に合わないかもしれないが、今後の旅行を立てるうえでの参考にしていただければ幸いだ。

<TEXT/高島昌俊>

【高島昌俊】
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。

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