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「うちの孫、ことばの発達が遅いかも…」と感じたときに、祖父母が心掛けるべきこと

日刊SPA! 2024年8月8日 8時50分

 祖父母が子育て世帯を積極的にサポートする「孫育て」。共働きも多い親世代からすれば、祖父母が積極的に子育てに参加してくれるのはありがたい反面、時代ごとの常識の違いや子育て方針の違いから軋轢が生まれることも少なくない。
 祖父母が上手に孫育てに関わる上では、常識のアップデートは不可欠だ。そこで、脳科学者の黒川伊保子氏の著書『孫のトリセツ』から、「子どものことばの発達」についての新常識や、上手に孫育てに関わるための心得の一部を紹介する。

(以下、同書より一部編集のうえ抜粋)

◆子どものことばの発達が遅くても、気にしなくていい

 そういえば、母親たちは、ことばの発達を気にするよね。我が家のおよめちゃんも、孫が1歳半くらいのころ、「友だちの子は、この子より1か月小さいのに、もう2語文しゃべるんだよ。ことばが遅くない?」と、かなり悩んでいた。

 ことばの発話には個人差がある。

 2歳を過ぎてもことばを発しない場合で、話しかけてもまったく反応しない(遊びに夢中な時には誰だって反応しない。それ以外のいつでもってこと)、大人と目を合わさない、手をつなぐのを異様に嫌がるなどのコミュニケーションに問題がある場合は、発達障害などの対応策が必要になるけれど、

「あやせば笑う」「抱けば落ち着く」などのコミュニケーションが成立しているのならば、ほかのお子さんと比べて語彙力の少なさに胸を痛めるのは早計だと思う。

「ことばの発達が遅い?」と感じたら、祖父母が心がけるべきは、スキンシップを伴うコミュニケーションだ。絵本は、そのいいツールになる。遠く離れていて、自らそれができなかったら、ぜひ一緒に暮らす人たちに助言してあげてほしい。

◆赤ちゃんたちはどうやって言葉を学んでいくのか

 ことばの始まりそもそも、ことばの存在に、赤ちゃんはどうやって気づくのだろうか。水の音や風の音は、音節に区切ったりしないのに。

 実は、「目の前の人の筋肉運動」を脳に映し取ることによって、ことばの単位を身に着けるのである。つまり、音声を分解する能力は、音から始まるのじゃない。「発音体感」の受け渡しによって、行われるのである。

 これを可能にしているのが、ミラーニューロンだ。

 ミラーニューロンは、目の前の人の表情や所作を、そのまま神経系にまるっと移し取っていく脳細胞。赤ちゃんは、目の前の人の口角周辺の筋肉の動きや、横隔膜の動き、息の流れ具合をミラーニューロンで受け止めて神経系に伝達することでことばを獲得していく。

 ことばの獲得を早めたかったら、ミラーニューロンを刺激してやればいい。

 ミラーニューロンを活性化するには、抱き上げて、笑いかけたり、話しかけたり、歌ったりして、大人の全身の動きを、子どもの五感に訴えかけること。私たちの世代にとっては、とてもとても、普通のことだ。

 ただ、今、親たちがスマホの画面をのぞいている時間がけっこう長くて、核家族だと、昔みたいに、手が空いた家族が、かわるがわる赤ちゃんをからかっているような家庭は少なくなっている。

◆絵本の読み聞かせが、コミュニケーション力を高める

 ことばとコミュニケーションは、人生の基盤となる大事な大事な能力である。この発達をおおいに促すのにお勧めなのが絵本。ぜひ、絵本を読んであげてほしい。

 ミラーニューロンを刺激するのは、「ふわふわ」「ぎゅっ」「ぱちん」のような擬音語・擬態語や「いないいない」「バイバイ」「わんわん」のような繰り返しことばが印象的な、語感を楽しめる絵本。

 それを、親子で繰り返し発音して遊ぶのが最高の英才教育になる。心配しなくても世の中の「0〜2歳向け」の絵本は、ほぼ、そういう構成になっている。

◆絵本は言葉の発達を促し本好きへと誘う

 我が家の2歳男児は、今、はたらく車のイラストに、ドドド、グイーン、ザクザクなんていう擬態語が添えられた絵本に夢中。

 絵本から離れて、はたらく車のミニカーを手にして、その擬態語を繰り返すのも楽しいらしい。そして、絵本にないミニカーを手にしたときは、擬態語を自作するのだが、これが秀逸。

 先のとがったコンクリート破砕機のアームを布団に突き刺しながら、スンスンと言うのだけど、いやまさに布団に刺さる手触りは、スンスンっていう感じなのだもの。体感を擬態語に変える能力、高し。

 私の会社は、ネーミング(商品やブランドの名づけ)のコンサルティングをする会社なので、語感のセンスはめちゃくちゃ大事。彼の才能はかなり嬉しい。きっと絵本効果です。

 というわけで、ことばの発達が気になったら、「この子どうなの?」なんて親を問いたださないで、絵本をたくさん読んであげよう。そばにいなかったら、絵本を送ってあげよう。絵本は、ことばの発達を促すとともに、子どもたちを本好きに誘う魔法でもある。

文/黒川伊保子 構成/週刊SPA!編集部

【黒川伊保子】
(株)感性リサーチ代表取締役社長。1959年生まれ、奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピューターメーカーでAI(人工知能)開発に従事、2003年現職。『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』がベストセラーに。近著に『息子のトリセツ』『母のトリセツ』

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