「勝ち負けじゃない」「自分らしさを表現する」「ステージを楽しみたい」。
7月20日のブレイキン日本代表選手記者会見で、Shigekix(半井重幸)、Hiro10(大能寛飛)、Ayumi(福島あゆみ)、Ami(湯浅亜実)ら日本代表選手4人が登壇したが、選手たちが明かしたのは主にこの3つだった。
◆「一番楽しめたら、いい踊りや結果につながる」
一見すると、勝利へ思いやメダル獲得への意気込みと相容れないように捉えられるかもしれないが、それこそがブレイキンの魅力だ。もちろん、彼らの勝利への思いも意気込みも、他のオリンピック代表選手たちに劣らない。
記者会見に登壇した先人ダンサーであるKENZOが語った「たくさんの思いを多分背負っていると思うので、僕は(代表の)4人が最高のパフォーマンスをすることを祈っています」との言葉からも感じられるように、それぞれが大きなプレッシャーやオリンピックへの特別な思いを抱え、心身を削りながらこの日を迎えている。
6月に行われたオリンピック予選シリーズで、ようやく出場権を確定させたB-GirlのAmiやAyumiはともに「ここまでの長い道のりでも、自分の力を出し切った」「自分なりに全力を尽くしてチャレンジしてきた」「自分らしく全力で楽しむことを一番大切にしたい」と明かし、B-BoyのShigekixやHiro10も「一番楽しめたら、いい踊りや結果につながる」「自分の大好きなパフォーマンスをみせたい」と語った。
◆ブレイキンは自己表現で、勝ち負けじゃない
パリ五輪でのジャッジは、音楽性、技術、多様性、独創性、完成度の5つの要素を相対的に判断する。つまり、即興の音楽と融合しながら、対戦相手を凌ぐレベルや独自の技を多彩に繰り出し、唯一無二のパフォーマンスを総合的に創り上げた方が勝つ。
だから、すでにスキルや経験や感性を十分に備えた選手たちにとっては、「自分らしく」「楽しむ」ことがジャッジの要素を最大限に高め、勝つためのカギになるのだろう。
彼ら一人ひとりが表現者なので、ダンスを通じて伝えたいことが明白にあるのも、ブレイキンの特徴だ。ブレイキン界を代表するようにAmiは言う。
「ブレイキンは自己表現なので、すごく伝えたいことは勝ち負けじゃないっていうこと。オリンピックのステージに立つ人も、そうじゃない人も全員がそれぞれの思いを抱えています。私はそこにブレイキンの美しさがあると思うので、当日はステージに立つB-Boy16人、B-Girl16人※しか立てないけれど、32人全員で思いを伝えていけたらいいなと思います」
※B-Girlには難民選手団よりマニジャ・タラシャが追加された
◆Hiro10「大好きなブレイキンをみんなに見てもらいたい」
41歳ながら近年の主要イベントでタイトルを取り続けるなど、大舞台に向けて進化をしてきたAyumiも「その通りで、32人が全員違う表現をするのが一番の魅力。『ああ何かブレイキン見て、元気が出たかも』って見た人に感じてもらいたいので、みんなの踊りを楽しみにしてほしいなと思います」と明かしている。
一方、同じく6月のオリンピック予選シリーズで出場権を掴んだHiro10は、同い年で切磋琢磨してきたが出場に至らなかったISSIN(菱川一心)の思いも背負う、金メダルを獲ると公言したことで、スランプに陥ったと明かした。
「自分の言ったことに囚われて、練習がうまくいかず泣いて、コーチと相談した時期もありました。でも、何のためにブレイキンをしてるかを考え直したら、やっぱりパワームーブが楽しいからとか、シンプルに楽しいということだった。オリンピックがあってもなくても、僕のブレイキンライフには何も変わりはないし、ずっと続けていくもの。大好きなブレイキンをみんなに見てもらいたいという気持ちを一番の根本にして踊りたいと思います」
◆「恩返しをしたい」Shigekix選手
幼い頃から世界中のイベントでパフォーマンスを披露してきた日本のエース、Shigekixも勝ち負けを超越した思いを語る。
「ブレイキンは、多様性や個性を自由に表現することを見ている人に感じてもらえるのが大きな魅力。そういった側面に着目して楽しんでいただきたいなと。あとは、全員が全力を注ぎ込んで、その人それぞれのRoad to Parisを歩んだ先のステージがパリ。踊りから心を動かす何かを、素晴らしい瞬間を僕たちで生み出せたら最高だなと思っています。
また、僕たちブレイキンの人間がスポーツ競技の世界にかかわりはじめて、こんなにも盛り上がって、僕たちが受けたありがたい影響は計り知れない。だからこそ、オリンピックという場を通じて、スポーツの世界に革命を起こすではないですけれど、良い影響を与えて恩返ししたいという風に感じています」
オリンピック憲章では、国威発揚につながるとしてメダル獲得数を国別で競い合わないよう明示している。国を超えた選手同士の戦いなのだ。ブレイキンのメダル獲得の可能性はかなり高いが、それらとも真逆のメンタリティが根底にあるのは、スポーツの世界に革命的に良い影響を与える予感しかしない。
取材・文/松山ようこ
7月20日のブレイキン日本代表選手記者会見で、Shigekix(半井重幸)、Hiro10(大能寛飛)、Ayumi(福島あゆみ)、Ami(湯浅亜実)ら日本代表選手4人が登壇したが、選手たちが明かしたのは主にこの3つだった。
◆「一番楽しめたら、いい踊りや結果につながる」
一見すると、勝利へ思いやメダル獲得への意気込みと相容れないように捉えられるかもしれないが、それこそがブレイキンの魅力だ。もちろん、彼らの勝利への思いも意気込みも、他のオリンピック代表選手たちに劣らない。
記者会見に登壇した先人ダンサーであるKENZOが語った「たくさんの思いを多分背負っていると思うので、僕は(代表の)4人が最高のパフォーマンスをすることを祈っています」との言葉からも感じられるように、それぞれが大きなプレッシャーやオリンピックへの特別な思いを抱え、心身を削りながらこの日を迎えている。
6月に行われたオリンピック予選シリーズで、ようやく出場権を確定させたB-GirlのAmiやAyumiはともに「ここまでの長い道のりでも、自分の力を出し切った」「自分なりに全力を尽くしてチャレンジしてきた」「自分らしく全力で楽しむことを一番大切にしたい」と明かし、B-BoyのShigekixやHiro10も「一番楽しめたら、いい踊りや結果につながる」「自分の大好きなパフォーマンスをみせたい」と語った。
◆ブレイキンは自己表現で、勝ち負けじゃない
パリ五輪でのジャッジは、音楽性、技術、多様性、独創性、完成度の5つの要素を相対的に判断する。つまり、即興の音楽と融合しながら、対戦相手を凌ぐレベルや独自の技を多彩に繰り出し、唯一無二のパフォーマンスを総合的に創り上げた方が勝つ。
だから、すでにスキルや経験や感性を十分に備えた選手たちにとっては、「自分らしく」「楽しむ」ことがジャッジの要素を最大限に高め、勝つためのカギになるのだろう。
彼ら一人ひとりが表現者なので、ダンスを通じて伝えたいことが明白にあるのも、ブレイキンの特徴だ。ブレイキン界を代表するようにAmiは言う。
「ブレイキンは自己表現なので、すごく伝えたいことは勝ち負けじゃないっていうこと。オリンピックのステージに立つ人も、そうじゃない人も全員がそれぞれの思いを抱えています。私はそこにブレイキンの美しさがあると思うので、当日はステージに立つB-Boy16人、B-Girl16人※しか立てないけれど、32人全員で思いを伝えていけたらいいなと思います」
※B-Girlには難民選手団よりマニジャ・タラシャが追加された
◆Hiro10「大好きなブレイキンをみんなに見てもらいたい」
41歳ながら近年の主要イベントでタイトルを取り続けるなど、大舞台に向けて進化をしてきたAyumiも「その通りで、32人が全員違う表現をするのが一番の魅力。『ああ何かブレイキン見て、元気が出たかも』って見た人に感じてもらいたいので、みんなの踊りを楽しみにしてほしいなと思います」と明かしている。
一方、同じく6月のオリンピック予選シリーズで出場権を掴んだHiro10は、同い年で切磋琢磨してきたが出場に至らなかったISSIN(菱川一心)の思いも背負う、金メダルを獲ると公言したことで、スランプに陥ったと明かした。
「自分の言ったことに囚われて、練習がうまくいかず泣いて、コーチと相談した時期もありました。でも、何のためにブレイキンをしてるかを考え直したら、やっぱりパワームーブが楽しいからとか、シンプルに楽しいということだった。オリンピックがあってもなくても、僕のブレイキンライフには何も変わりはないし、ずっと続けていくもの。大好きなブレイキンをみんなに見てもらいたいという気持ちを一番の根本にして踊りたいと思います」
◆「恩返しをしたい」Shigekix選手
幼い頃から世界中のイベントでパフォーマンスを披露してきた日本のエース、Shigekixも勝ち負けを超越した思いを語る。
「ブレイキンは、多様性や個性を自由に表現することを見ている人に感じてもらえるのが大きな魅力。そういった側面に着目して楽しんでいただきたいなと。あとは、全員が全力を注ぎ込んで、その人それぞれのRoad to Parisを歩んだ先のステージがパリ。踊りから心を動かす何かを、素晴らしい瞬間を僕たちで生み出せたら最高だなと思っています。
また、僕たちブレイキンの人間がスポーツ競技の世界にかかわりはじめて、こんなにも盛り上がって、僕たちが受けたありがたい影響は計り知れない。だからこそ、オリンピックという場を通じて、スポーツの世界に革命を起こすではないですけれど、良い影響を与えて恩返ししたいという風に感じています」
オリンピック憲章では、国威発揚につながるとしてメダル獲得数を国別で競い合わないよう明示している。国を超えた選手同士の戦いなのだ。ブレイキンのメダル獲得の可能性はかなり高いが、それらとも真逆のメンタリティが根底にあるのは、スポーツの世界に革命的に良い影響を与える予感しかしない。
取材・文/松山ようこ