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「高速道路の渋滞」を引き起こすメカニズム。“迷惑な先頭車両”を観察し続けた結果…

日刊SPA! 2024年8月11日 15時52分

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

◆渋滞が起こるのは車輪が付いてるから
 腕時計投資家の斉藤由貴生です。そろそろお盆休みでありますが、高速道路は大渋滞を迎えようとしています。そういった渋滞が起こるのは、多くのクルマが道路を走ることが原因だといえます。しかしながら、『徒歩』の場合、多くの人が行き来しても、道路ほどひどい渋滞は発生しません。

 新宿駅は世界一人が多い駅でありますが、「新宿駅で渋滞しちゃったから遅れます!」なんてことにはならないでしょう。1日の乗降客数が約270万人というギネス記録を持つ駅でありながら、クルマの世界で発生する“渋滞”は起こらないわけです。

 もちろん、新宿駅は人が多いため、歩きにくいとか、乗り換えに多少時間がかかるということはあるでしょう。特に、山手線と埼京線のホームは離れているため、本来乗りたかった電車に乗れなかったということが起こる場合もあるかもしれません。しかし、それでも、山手線のホームから埼京線のホームまで「止まってしまう」ほど流れが悪くなるということがありません。

 ではなぜ、多くの人が行き来する新宿駅では渋滞が起きないのに、高速道路では渋滞が起こるのか。私の考えとしては、「車輪がついているか否か」が重要だと思います。

 年末年始やGW、お盆休みといった長期休暇の時期には、多くの人が高速道路を利用するため、道路はキャパオーバー状態になり大渋滞が発生するわけですが、実は、常日頃から「プチ渋滞」は起こっているといえます。

 圏央道など、1車線区間がある高速道路を走る際、私は「クルマが数台程度しかいないのに、なんでこんなに遅い速度にまで落ちてしまうのか」と思うことがあります。

◆1車線区間で起きた渋滞を解析

 ここで、先日遭遇した事例を紹介します。

 1車線区間にクルマが5台程度、私はその列の最後尾を走っていました。

 1車線区間の制限速度は70km/hなのですが、先頭には速度遅めで走っているトラックが存在。そのトラックの数台後ろを走るわたしは「遅いトラックがいるな」と思ってスピードメーターを見ると、65km/h程度といった状態でした。ただ、速度が一定だったため、それほど走りづらいというわけではなかったのです。

 そして下り坂に差し掛かった際、前のクルマが遅くなったことに気づきます。そして、私はアクセルから足を離すわけですが、アクセルオフだけでは足りず、前のクルマに追いついてしまい、結局ブレーキを踏むこととになるのです。そして、その時スピードメーターを見たら時速40km/hといった状態だったのです。

「車間距離を開けていないからいけない」という意見が出てきそうですが、私は「ノロノロ状態では、急に前のクルマが遅くなる確率が高い」と思っているため、車間距離は50mほど開けていました。それぐらい車間距離をあけると、後ろのクルマがかったるそうに感じるかもしれませんが、その時、私は最後尾だったため、遠慮なく車間距離をたくさんとっていたのです。

 そうであるにも関わらず、なぜ私が前のクルマに追いついて、結局ブレーキを踏むこととなったのか。その答えは、時速65km/hから40km/hまで落とされてしまうと、アクセルオフだけでは対応できないから、であります。

◆先頭車両の1台後ろの車に注目

 なぜ、時速65km/hから40km/h程度にまで減速していたかというと、そこはいわゆる「ザク」部分だったのです。つまり、下り坂から登り坂になる箇所なのですが、速度が急激に遅くなったクルマは登り坂にいて、最後尾を走る私は速度が出やすい下り坂にいたわけです。

 そして、興味深いのは、時速40km/hまで速度が落ちたとき、トラックとそのすぐ後ろを走るクルマとの車間距離がものすごく空いていたという点であります。つまり、トラックは遅いながらも一定速度で走っていた一方、そのすぐ後ろを走るクルマが遅くなってしまったのであります。

 その後も、1車線区間が続いていたため、何度も同じ現象が起きていたのですが、興味深く先頭車両を見ていた私は、やはり「トラックの後ろを走るクルマが遅くなっている」という現象を確認をすることができました。

 つまり、トラックは遅いながらも一定速度で走っていた一方、その後ろを走るクルマが一定速度で走らないため、渋滞の発生源になったのだと思います。

 ではなぜ、トラックの後ろを走るクルマが急激に速度が遅くなったのか。これは、私の推測でありますが、「前に遅いトラックがいる」と思って油断していたのだと思います。

「どうせ前が遅い」と思ってボケーっと走っていたら、登り坂に差し掛かったときに「トラックよりも遥かに遅い速度」になってしまったのでしょう。そして、そのクルマの後ろを走る数台の車両が、みなブレーキを踏まなくてはならない事態になったのであります。

 速度が安定しないクルマの後ろをアクセルオフだけで対応するのはストレスがたまりますし、65km/h⇒40km/hといった極端な減速をされるとアクセルオフでは対応できません。

◆“不安定な速度”が渋滞の原因に

 ちなみに、トラックや軽自動車は、アクセルオフをした際に強く減速する車種が多いですが、セルシオといった高級セダンなどは、減速感がかなり弱く、アクセルを離しても、「スーッと」クルマが進んでいく傾向があります。私が乗った経験では、同じメルセデス・ベンツでも、W204型Cクラスの7ATは減速感が強い一方、その1つ新しい型であるW205型Cクラスのディーゼル車の9ATは減速感がかなり弱かったということがあります。例えば、前方にW205型、後方にW204が走っていた場合、W205が多少遅くなってもW204はアクセルオフだけで対応できるでしょう。しかし、それが逆になった場合、W205はアクセルオフだけでは対応できず、ブレーキばかり踏むような運転となってしまうことだと思います。

 道に迷ったクルマが急に遅くなった際など、アクセルオフだけでは対応できないということがありますが、それが高速道路の登り坂といった部分で繰り返されているわけです。

 ですから、「遅くなったり速くなったりする」ということは、渋滞の原因にもなりますし、渋滞が起こらなかったとしても、後方を走るクルマにとって「とても迷惑な運転」だといえます。

『徒歩』の場合、前の人の歩く速度が安定しなくても、足は地についているため調整ができます。小学校のときの遠足を思い出すと、集団で歩くと疲れますが渋滞にはなりません。しかし、クルマには車輪がついており、その減速度合いは車種によって異なるわけです。

 だからこそ、クルマに乗る場合は「一定速度で走る」ということがとても重要。

 そういったことが多くの人に共有されれば、お盆のように多くのクルマが行き来するキャパ―オーバー状態になったとしても、もっと運転しやすい世の中になると思うのです。

【斉藤由貴生】
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

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