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日本株「暴落こそ絶好のチャンス」。プロが暴落後に“実際に買った”7銘柄

日刊SPA! 2024年8月12日 8時55分

◆暴落は格好の仕込み時
 私が前回、日刊SPA!に投資に関する記事を書いたのは、8月5日月曜日の令和のブラックマンデーとそれを予感させる8月2日金曜日の2200円を超える暴落の間だった。
 暴落こそ、少額の個人投資家にとっては普段はなかなか手が出ない、超優良銘柄を手に入れられる絶好のチャンスだと考えるからだ。それに、前回の記事の繰り返しになるので、詳しくは触れないが、今回の下落は、巷で言われる、米国景気の先行き不安や、パウエル議長の月末の発言、もしくは、幾人かがいう植田ショックなどでは決して説明のつかない大幅な株価の下落なのである。何しろ1日木曜日から5日月曜日までの3営業日だけで日経平均は8700円も下げたのだ。

 私が記事を書いたのは8月2日の深夜、担当者に必ず4日中に記事をアップしてもらいたいと頼んでのことだった。というのも、時間外市場などで日本の株価はさらに大幅下落し、土日の間に月曜日の令和のブラックマンデーは十分に予測できたからだ。

 8月5日に4500円も下げたことでセリングクライマックスが来たことを確信した。翌日も4500円かそれ以上下がることは想像できなかったからだ。

 だから、手元にある現金を、当面の生活費を除いてすべて証券口座に振り込み、少額投資家の私は必死に5日は買いの指値を入れた。

 翌日から株価は原則として戻し始めた。しかし、ご存知ように市場は非常に荒れている。終値だけではなかなか見えてこないが、例えば、前日5日の4450円の暴落のあとに、3200円戻した6日火曜。その次の日の7日水曜日は終値では3万5000円台を回復。

 テレビのニュース番組では前日比414円高で2日連続上げて終わったなとどしているが、12日の中では前日3万4675円で終わった日経平均は、一時は936円も下げる局面があり、安値は3万3739円。場中で多くの人が今日も大きく下げるのかと再び損切りに走るものもいたほどだ。

 9日金曜日の日経平均は193円高の3万5025円だった。こうして、10年に一度あるかないかの大変動の1週間は終わった。そして、次に市場が開くのは13日の火曜日だ。

 令和のブラックマンデーの1週間は終わったが、個別銘柄を見てみると、まだ戻りきってない、もしくは、安値圏で留まっているものも少なくない。

 また、市場はまだ荒れ模様で13日からの週にも何があるかはわからない。今しばらく、株価は注意が必要なのだ。

◆日経平均は“恐怖指数”が高いまま

 私がそう確信する理由が、日経平均VI指数が異様に高いままであることだ。これは、言ってみれば恐怖指数のようなもので、VI=ボラティリティインデックスという名のとおり、株価が大きく動きそうかどうかを示している数字だ。この数値、通常は20を下回るところにあるもので、30を超えると市場が大きく動揺していると判断される。

 これが8月5日には70を超えていたのだ。その後、若干は下げたものの9日金曜日も45に張り付いている。まだ、株価の先行きに対する不安感はマグマのようにうごめき、投資家たちの心理を不安にさせているのだ。

 今回は私が8月5日に購入した銘柄で、いまだに戻りきってない、通常運転の市場では株価が高くて手が出しにくい超優良7銘柄を紹介したい。

 参考にしていただきながら、13日からの市場再開に備えたい。

◆暴落相場でプロが仕込んだ7銘柄

日本製鉄(5401)
産業の土台を支える鉄のメーカーとして幾多の荒波を越えて生き残ってきた日本を代表する製造業である。日本と中国の関係もあり、この50年、中国の製鉄業に貢献してきたが、2024年にはその関係を終了した。とてもいい決断である。そして、今、日本製鉄は世界を再び見据えて、アメリカの鉄鋼最大手、USスティールの買収を進めようとしている。現在は大統領選挙もあり沈滞しているが、その内容は相手側の経営陣だけでなく、互いがウィンウィンになるようなものとなっており、ここを梃子に欧米市場を席巻し再び世界の頂上を目指そうとしているのだ。

このような背景があるだけでなく、株価が上がる成長性をおおいに感じさせる銘柄である。さらに、その配当金は年160円、100株で1万6000円である。ところが、9日終値では3169円。つまり、配当利回りは5.05%もある。

今のような荒れ模様の市場の中で、これから年末、2025年に向けて、上がれば売却し売却益。上がらなければ高い配当でインカムゲインを享受する。この二頭立ての付き合い方ができるのだ。

気をつけなくていけないのは、魅力的だからと、日本製鉄ばかりを自分のポートフォリオの中心に据えてしまうことだ。例えば、総額50万円以下の投資であれば100株以上を買うようなことはないだろうが、100万円の予算で300株も買ってしまうのは日本製鉄に未来をすべて委ねることになるので、良くない。

神戸製鋼(5406)
日本製鉄だけにポートフォリオを集中させたくないこともあるが、決して鉄鋼業だけでない神戸製鋼は発電事業まで手がける手広い業務内容が魅力の会社の一つである。鉄鋼業がメインの日本製鉄と被るようで微妙にずれるところが、リスク分散にも打ってつけなのだ。

今年の最高値は3月の2186円。私が本格的に株式投資を始めたのは2023年の春であり、その時の投資方針は、潰れない優良会社で時価総額は5000億以上の巨大会社、そして、株価が上がらなくても持ち続ける価値がある、高配当の銘柄。

そこに見事に合致し投資を始め、驚くほどに上がったので利確し、8月5日まで数か月に渡り、私のポートフォリオから姿を消していた。もしも、1800円を下回るようなことがあれば、また投資をしたいとは思っていた。というのも、配当金は年90円。配当利回りが5%を超えるからだ。8月5日に株価は大きく下落。私のポートフォリオに戻ってきた。買ったのは8月5日だが、9日もほぼ同じ水準で売買されており、終値は1629円。そう、配当利回りは5.52%にもなるのである。

ホンダ(7267)
まずはホンダのこの1年余りの株価の推移をチャートで確認してもらいたい。2023年から株価はどんどん切り上げ、2000円近くしていた期間も短くない。トヨタと並んで日本の自動車産業の中核を担う素晴らしい企業である。

それは、低迷する日産、三菱自動車と共同でEVにおける協業を行おうとする懐の深さからも感じられる。その信頼性は、街を歩いていればホンダの自動車に乗ってる人がどれだけ多いかでもよくわかる。

さらに二輪車は世界トップの企業なのである。そのホンダが今回の株価暴走の流れ、激しく揺らぐ為替の中で翻弄されている。9日の株価は1420円と大きく落ち込んだままだ。これは、週足のチャートを見てもらえばわかるが昨年末の安値圏である。

高い期待があるため業績に対して厳しい見解もあるが、8月7日に発表された第一四半期の決算報告では、9%増益で決着。進捗率は39%にも達している。悪いわけではない。

これは、今後、為替などの外部環境がネガティブに働いたとしても、ホンダが株主の期待を裏切らない利益を2025年3月期も達成してくれそうだということを表している。

そして、ホンダは株主還元姿勢に対して積極的であり、今後1年の株主配当は1株あたり68円なので、なんと利回り4.79%にも達している。

ホンダも株価が上がればキャピタルゲイン、上がらなければインカムゲインを楽しむことができる。

トヨタ(7203)
トヨタについてあまり多くを語る必要はないだろう。日本企業がこれから受容しなければならない金利上昇局面の中でトヨタは決して揺らぐことはない。トヨタの所有する金融資産90兆円のうち、現金やそれに準ずるものだけで9兆円も持っているからだ。金利が上がっていくことはこれらから新たな利益を生み出すことも意味している。べらぼうにすごい会社なのである。

株式市場では、現在トヨタが抱える、世界的な景気失速への不安、為替水準の見直し、そして、認証問題などから、3月末に3891円にもなった株価は大きく下落している。

9日の終値は2447円、高値から4割近くも下げているのである。が、これは果たしてトヨタの企業価値への正当な評価であろうか? 私はそうは考えない。今まで高くて少量しか持てなかった同社の株を買い増しした。トヨタの配当は75円。あのトヨタの配当利回りが3%を超える水準まで上がっていることも買った理由だ。

◆保険へ投資するときの第一チョイス

MS&AD(8725)
今年初めから投資家のハートを鷲掴みにしてきた生損保株の代表格。多くの人が保険へ投資するとき第一チョイスにする銘柄でもある。

傘下に三井住友海上、相生ニッセイ同和を持つ。日本国内だけでなくアジアや欧米でも事業を大きく展開している。昨年来の人気で株価が上昇しすぎ、新たな株主にとってハードルが上がることを避ける意味合いもあったのだろう。2024年3月末に3分割された。

それでも、今年の株式市場での大テーマである政策保有銘柄の売却でも常に注目の的になり、3月以降も投資家からの支持は圧倒的で、確実に株価は上がっていった。

もちろん私も所有していたが、あまりにも株価が上がったので売却し利確したほどだ。その後も上がり続けていたので利確が早すぎたと後悔していたのだが、今回の株価の暴走には逆らえず一気に2600円近くまで下がった。

令和のブラックマンデーである8月5日に最初に買ったのがこの銘柄だ。その理由は明らか。先述の背景に加えて、保険料の上昇からさらなる利益増大も見込める。

8月9日、市場が閉まったあとに明らかになった決算発表では、4-6期の経常利益は驚異の96%増益となったのだ。この銘柄の人気の一つが、これまでも、そして、きっとこれからも続くであろう高い株主還元姿勢である。

配当金は増配に次ぐ増配で、現在は145円。8月9日の終値の3013円で考えると、4.81%。それが、5日の暴落時には5%を上回っていたのだ。少額の投資資金しか持ち合わせない私が必死に買っていたのもうなずいていただけるだろう。今年の夏は3500円も超えていた銘柄が、まだ3000円あたりに留まっている。

三菱商事(8058)
2024年は新NISAで株式市場は新たな個人投資家を数多く迎え賑わってきたが、2023年も活況だった。その一因は、春先のある世界的な投資家の発言からだった。誰もが知ってるウォーレンバフェット氏が放った、日本株への再評価、それも商社株への評価だった。

すでに高い株価で私は怖くて手が出せなかった。しかし、その後も株価は切り上がり、投資家の信認が高いことを証明していた。

それが、今回の株価暴走に巻き込まれた。巻き込まれただけでなく、週末まで低迷圏に留まっているのである。誰もが商社株を買うのなら、トップ企業である三菱商事にビットしたい。しかし、その株価に怖気付くので、出遅れ株はないか、比較して割安の銘柄はないかと周辺になびいていくのである。だが、このタイミングであれば、少額予算の個人投資家にも手がどとく、9日の株価は2791円。1月4日に年初来安値の2231円だった株価は5月2日に年初来高値の3775円。そこから考えると2791円という株価がどれだけ買いやすいかおわかりいただけるだろう。

コマツ(6301)
長期投資のつもりで購入し、順調に株価もあげ続けていた。しかし、だからこそ含み益が莫大で、桜の咲く前頃にすべて利確した銘柄だった。

説明の必要もないほど、日本だけでなく世界の産業と生活にとって必要不可欠な建設機械で世界第2位。日本を代表するトップメーカーであり、株式投資をするものなら、誰もがあげる優良銘柄でもある。というのも、優良銘柄であるもののコマツの株価は世界の景気に左右されることも事実だからだ。ポストコロナの世界経済は、日本ではあまり感じないが、欧米は中央銀行が幾度も利上げをしなくてはならないほど過熱したのだ。

しかし、春先にはそこにピークを感じ、高いうちに欲張らずに利確するのが私の流儀と売却したのだ。景気が悪くなれば、また買うチャンスもあるだろうと思っていたのだ。

売却したのは4500円ほどの頃で、ずいぶん利益が出たなあと思っていたのだが、友人で投資を長年するものからバカにされた。保有し続けるべきだったよと。そして、株価はまだ上がり7月には5100円も上回った。それが、令和のブラックマンデーで一気に下落し、年初来安値の3324円まで下げる。底値ではないものの、当然、私は買い戻した。

9日の終値は3867円。前日から104円も上げてしまった。底値からは回復しているものの、この銘柄の魅力である配当利回りを知ったら、買いたくなる人も多いのではないだろうか? 年間の配当金は167円。4.32%もの配当利回りで、この超優良銘柄が手に入るからだ。

※株式投資はご自分の判断と責任に基づいておこなってください。

<文/佐藤治彦>

【佐藤治彦】
経済評論家、ジャーナリスト。1961年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、東京大学社会情報研究所教育部修了。JPモルガン、チェースマンハッタン銀行ではデリバティブを担当。その後、企業コンサルタント、放送作家などを経て現職。著書に『つみたてよりも個別株! 新NISAこの10銘柄を買いなさい!』、『年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』、『しあわせとお金の距離について』、『安心・安全・確実な投資の教科書』など多数 twitter:@SatoHaruhiko

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