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「朝晩ほとんど歯磨きをしなかった」40代男性に訪れた悲劇。歯科医師が教える“歯磨き”の重要性

日刊SPA! 2024年8月17日 15時52分

皆さんは全世界で最も蔓延している感染症は何だと思いますか? 実は様々な全身疾患を抑えて“歯周病”が最も蔓延している疾患だとギネスブックに認定されています。
歯周病はお口の中の症状のみに留まらず、糖尿病やメタボリックシンドロームなど、多くの全身疾患との関連がある恐ろしい疾患です。そして歯周病は治療によって急に完治できるものではなく、生活習慣病と同じように日々の生活や歯磨き、歯科医院での専門的な管理によって進行を抑えながら長く付き合っていかなければなりません。

今回は歯周病予防には最重要であるオーラルケアについて基本的なポイントを事例とともにまとめました。

◆歯間清掃は毎日行うもの

歯と歯の間はどんな歯ブラシを用いても清掃することができません。物詰まりが気になった時だけフロスや歯間ブラシを使用している患者さんも多いのですが、毎日行う必要があります。フロスも歯間ブラシも歯間両側の歯の表面をゴシゴシと磨くことがポイントです。

また、歯間清掃は歯磨きの前に行うことでより清掃効果が高まるもの。歯間清掃は歯磨きと一緒に習慣づけましょう。

◆治療した歯が多いほど歯磨きの難易度はあがるもの

生まれ持った天然の歯と違い、被せ物や詰め物などの治療跡のある歯では歯磨きの難易度は基本的にあがるものです。被せ物と歯の境目は磨き残しやすく、また被せ物の材質によっては歯垢(プラーク)が付きやすいものもあります。

たとえば、ブリッジ(歯の欠損を補い連なった被せ物)では通常のフロスが通らず、清掃が疎かになりやすいため、スーパーフロスや歯間ブラシを用いた丁寧な清掃の継続が重要です。

インプラントでは通常の歯周病と異なりインプラント周囲炎が生じる恐れがあります。このインプラント周囲炎も歯周病と同様にセルフケアの徹底が重要となりますが、一度罹ってしまうと歯周病よりも進行予防がより難しいです。

◆歯列不正がある(歯並びが悪い)部分は歯ブラシの毛先が当たりづらい

歯列不正のある部分では歯ブラシの毛先が当たりにくく多くの患者さんでプラークや歯石の沈着が見られます。歯ブラシを縦にして磨く、タフトブラシを用いるなどの工夫が必要です。

◆上の奥歯の表面は磨けていない人がとても多い

上の奥歯の表面は、お口を開けたまま磨こうとすると頬の圧が邪魔をして歯ブラシが届かないことが多いです。お口を閉じ気味にして歯ブラシをぐっと奥まで入れ、奥歯に歯ブラシが当たっているのを確認してゴシゴシと磨くのがポイント。

◆歯周病が進行しているほどプラークが付きやすく歯磨きがしづらい

歯周病により歯茎が下がると歯の根元部分にプラークや歯石が付着しやすくなります。歯石は歯磨きでは除去することができず、歯石にまた新たなプラークが付着しやすくなり、どんどん歯石が分厚くなってしまいます。

また、歯周病の進行により歯茎が下がることで歯の隙間も広くなり、清掃にコツが必要となってきます。歯周病は進行すればするほど自身でのケアの難易度が増すため歯科医院での専門的なアドバイスが必要となります。

◆歯磨きが歯周病の進行に大きく影響する

歯磨きはお口の中に繁殖した細菌を磨き落とす目的があります。

当院にいらっしゃった患者さんの中には、1年前と生活習慣が変化し、朝晩ほとんど歯磨きをしないままの男性がいました。

40代と若い年代ながら、この1年間で歯周病は顕著に進行しており、歯茎の炎症、歯の揺れがみられました。ご本人も歯周病とは無縁だと感じていたため動揺されていました。セルフケアを怠ると歯周病がたちまち進行してしまうというわかりやすい症例でした。

個人によって磨きにくい部分や磨き癖、そしてお口の状況は異なるものです。歯科医院での歯磨き指導は重要な歯周病治療の一つ。ぜひ一度、ご自身のお口の状態をしっかりと検診し、指導を受けてみてはいかがでしょうか。

<文/野尻真里>

【野尻真里】
一般診療と訪問診療を行いながら、予防歯科の啓発・普及に取り組んでいる歯科医師です。「一生涯、生まれ持った自分の歯で健康にかつ笑顔で暮らせる社会の実現」を目標にメディアで発信をしています。X(旧Twitter):@nojirimari

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