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高速道路で「後ろにピッタリ」あおり運転してきた“ガラの悪い”スポーツカーが警察に捕まるまで

日刊SPA! 2024年8月23日 8時54分

 ニュースなどで頻繁に取り上げられる「あおり運転」。被害者の精神的苦痛は深刻であり、トラウマにもなりかねない。
 自動車損害保険を扱うチューリッヒ保険は今年、『2024年あおり運転実態調査』を実施。あおり運転をされたことがあるドライバーは72.5%であった。昨年の53.5%よりも大幅に上昇し、この半年間でも24.1%と多くのドライバーがあおり運転に遭遇していることがわかった。

 今回は、あおり運転に遭遇し、怖い思いをした2人のエピソードを紹介する。

◆猛スピードで迫ってくるスポーツカー

 高木祐大さん(仮名・40代)は、家族そろって妻の実家へ帰省する際に、あおり運転に遭遇した。

「高速道路の追い越し車線を走っていました。速度は100キロくらい出していたと思います」

 しばらくすると、後方からかなりのスピードでスポーツカーが迫ってきた。車はカスタマイズされ、“ガラが悪い”と思ったという。あっという間に追いつかれたため、高木さんはウインカーを点滅させ、走行車線に移動したのだが……。

「スポーツカーに抜いてもらおうと考えたのですが、私の車を抜かすどころか、走行車線に移動し、後ろにピタッとくっついてきたんです」

 このとき、スポーツカーの後方には車は見当たらなかったという。どうやら、高木さんの車に接近するために車線変更をしたようだ。

◆小バカにするような態度

「後ろにぴったりつかれるのは怖いし嫌だったので、私はアクセルを踏み込み、引き離そうとしました。しかし、スポーツカーもさらにスピードを上げ、間をあけることなくついてきたんです。『走行車線にはほかの車は走ってないのに、なぜ私の車についてくるのだろう?』と思いました」

 高木さんは、「明らかに私たちに苦痛を与え、自分の快楽のためにあおっているとしか思えなかった」と、その瞬間を振り返る。

「非常に悪質なあおり運転は、4~5分ほど続き、その間恐怖と怒りで頭がいっぱいでした」

 そして、ついにスポーツカーは追い越し車線に戻り、高木さんの車を追い抜いていったのだが……。

「運転手はまるで小バカにするような目で私を一瞥し、走り去って行きました。追いかけたい気持ちがありましたが、嫁や子どもが乗っていたのでムチャな運転はやめました。やるせなくて、腹立たしい気持ちだけが残りましたよ」

◆獲物を追いかけるように猛追する覆面パトカー

 そんな気持ちを抱えたまま走っていると、後方から猛スピードで疾走する車が見えたという。その車は白のクラウンで、パトランプが付けられていた。

「覆面パトカーだ!」

 まるで獲物を追いかける猛獣のように、スポーツカーを猛追していったそうだ。

「スポーツカーは、覆面パトカーによって高速道路の側道に止められていました。おそらく、スピード違反で捕まったのでしょう。もしかしたら、私へのあおり運転を見ていたのかもしれませんね」

 交通ルールを守らずに、人に恐怖を与えるあおり運転の運転手を成敗した警察官が、“カッコいいヒーロー”に見えたと、高木さんは身をもって感じた。

 高木さんは「警察に今でも感謝しています。これからも道路の安全のために頑張ってください」と締めくくった。

◆愛車のドラッグスターを運転中に…

 大学の講義が終わり帰宅する際にあおり運転に遭遇した加藤直之さん(仮名・20代)。

「愛用のバイク(ドラッグスター)に乗って、いつもの道を運転していたのですが……」

 国道でそこそこの交通量はあったが、問題なく車は流れていたという。しかし突然、バックミラーに映る1台の車が気になり始めたそうだ。

「その車は、明らかに私のバイクに接近してきて、間隔が極端に狭いことに気づきました。ただの偶然かと思い、前方の車との距離を保つためにスピードを調整していたんです」

 あおり運転の車は、まったく距離を取ろうとせず、さらに近づいてきたという。加藤さんは不安が募り、できるだけ速やかに道を譲ろうとした。しかし、加藤さんを追い越すどころか、動きに合わせて減速し、まるで加藤さんを狙っているかのようにピッタリと後ろについたままだったと、当時の恐怖を振り返る。

「冷静さを保つことができませんでした。バイクは車に比べてはるかに無防備なので、何か起こったときには大きな事故につながります」

◆激しい心臓の鼓動にヘルメットの中は冷や汗

 加藤さんは、次の信号で停車し、「なんとかあおり運転の車を追い払おう」と考えていた。信号が青に変わり、再びバイクを走らせた瞬間……。

「突然、右側から猛スピードで追い抜き、私のすぐ前にむりやり割り込んできました。私はバランスを崩しそうになりながらも、なんとかバイクをコントロールして衝撃を避けるために急ブレーキをかけました」

 車は加藤さんの目の前で急停車した。加藤さんはギリギリで衝突を回避。ヘルメットの中では冷や汗が流れ、心臓が激しく動いていたという。

 しばらくして、車は加速し道路の先へ消えていったのだとか。

「私はその場で呆然としつつ、心の落ち着きを戻そうとしましたが、あの瞬間の恐怖と無力感は今でも鮮明に覚えています」

 そして、運が悪いことに次の交差点では、警察による交通違反の取り締まりをしていたという。案の定、あおり運転の車は警察から停止を求められていたそうだ。

「バックミラー越しにその光景を確認すると、恐怖は一瞬で消え、なんとも言えない“スカッ”とした気持ちになりました」

 その後、加藤さんは安全運転を心がけながら、無事に自宅までたどり着くことができたんだとか。

<取材・文/chimi86>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

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