さまざまな事情を抱えた人たちが利用するラブホテル。一般的には、ドキドキ、ワクワクしながら、ときにはソワソワと向かう場所だ。
今回は、学生時代にラブホでアルバイトをしていた鈴木泰輔さん(仮名・20代)が従業員として体験した、2つの“忘れられないエピソード”を紹介する。
◆忘れ物? ピンク色のバッグの意外な中身
鈴木さんは「お客さんが部屋に置いていったピンク色のバッグを今でも鮮明に覚えています」と話し始めた。
「私は清掃がメインの業務でした。おそらく世間のみなさんは、汚物の処理をするというイメージが強いかもしれませんが、そんなことはありません。ビジネスホテルの清掃と大きく変わらないと思います」
ラブホにも繁忙期があり、鈴木さんは普段よりも忙しくなる“クリスマス”にシフトが入っていた。休憩利用も多いため、1日に何度も清掃をするそうだ。
「特に恋人との予定もなかった私は、シフトに入ることにしたんです。いつものように部屋に入ると、ベッドの上に鮮やかなピンク色のバッグが置かれていました」
忘れ物はよくあることだったため、鈴木さんは「どうせまた忘れ物だろう」と思いながらバッグを開けた。すると、予想外の“もの”が入っていたという。
◆客からのサプライズ「ちょっとしたプレゼントです」
「バッグの中には大量のロマンティックなアイテムが詰まっていました。超豪華なランジェリーセット、どう見てもペア用のローションやキャンドル、そして、手書きのメッセージカードがありました。『今日は特別な日だったんだな』と思いながらも、そのメッセージカードを見て驚きました」
そこには「ちょっとしたプレゼントです。ぜひ使ってください」と書かれていたそうだ。
どうやら、ラブホの利用客から意図的に用意しておいた“スタッフへのサプライズ”だった。オーナーに報告したが、客には返却せず、受け取ることになったという。
「ありがたいことに、私がもらうことになりました。このようなかたちでクリスマスプレゼントをもらえるなんて、テンションは上がりましたよ。でも、よくよく考えると、私生活が充実している知らない人から同情されているような敗北感が……」
一度そう思い込んでしまった鈴木さんは、一気にネガティブな気持ちになったのだとか。
「プレゼントの中身はどう考えてもカップル向けのものばかりです。彼女がいなかった男子学生がもらっても、使い道がないことは言うまでもありません」
ちなみに、もらったプレゼントは卒業後、引っ越しと同時に後輩に譲ったそうだ。
◆先輩スタッフは高校生を見抜くプロ
「スタッフの中でSさんという有名な先輩がいたんです」
Sさんは、“高校生を見抜くプロ”だったという。
風営法により18歳未満はラブホに立ち入り禁止と定められている。鈴木さんたちスタッフは、常にそのルールを厳守する必要があった。そのため、Sさんの役割は非常に重要だったようだ。
「未成年者を見抜く絶対的なスキルとして、Sさんの観察力はすごかったですね」
ある日、鈴木さんはSさんと同じシフトに入ることになった。そしてその日の夜、カジュアルな服装をした若い男女がフロントに現れたという。
「Sさんは2人を見て、“高校生かも”と感じたようで、身分証明書の提示を求めました。すると、不自然な表情を見せながら、ポケットから出したのは高校の生徒手帳だったんです。きっと、“高校生はラブホの利用を禁止されている”ことを知らなかったのでしょう。Sさんは、ていねいに説明して2人は去って行きました」
◆判断するコツは…
Sさんは、鈴木さんたちに高校生を判断するコツを教えてくれたそうだ。
「フロントで周囲を見回したり、緊張していたりしたら怪しい」
「カジュアルすぎる服装や、財布に入っているカード類が少ない」
基本的にスタッフと顔を合わせずにチェックインの手続きをするため、なかなか利用を阻止できないことも事実だと鈴木さんは言う。また、身分証明書を出さない人や、クレームを言う人もいるようだ。
「なので、Sさんのスキルでもっとも見習うべきところは、相手に恐れることなく、正義感を貫き通し、年齢確認をすることですね」
<取材・文/資産もとお>
―[ラブホの珍エピソード]―
今回は、学生時代にラブホでアルバイトをしていた鈴木泰輔さん(仮名・20代)が従業員として体験した、2つの“忘れられないエピソード”を紹介する。
◆忘れ物? ピンク色のバッグの意外な中身
鈴木さんは「お客さんが部屋に置いていったピンク色のバッグを今でも鮮明に覚えています」と話し始めた。
「私は清掃がメインの業務でした。おそらく世間のみなさんは、汚物の処理をするというイメージが強いかもしれませんが、そんなことはありません。ビジネスホテルの清掃と大きく変わらないと思います」
ラブホにも繁忙期があり、鈴木さんは普段よりも忙しくなる“クリスマス”にシフトが入っていた。休憩利用も多いため、1日に何度も清掃をするそうだ。
「特に恋人との予定もなかった私は、シフトに入ることにしたんです。いつものように部屋に入ると、ベッドの上に鮮やかなピンク色のバッグが置かれていました」
忘れ物はよくあることだったため、鈴木さんは「どうせまた忘れ物だろう」と思いながらバッグを開けた。すると、予想外の“もの”が入っていたという。
◆客からのサプライズ「ちょっとしたプレゼントです」
「バッグの中には大量のロマンティックなアイテムが詰まっていました。超豪華なランジェリーセット、どう見てもペア用のローションやキャンドル、そして、手書きのメッセージカードがありました。『今日は特別な日だったんだな』と思いながらも、そのメッセージカードを見て驚きました」
そこには「ちょっとしたプレゼントです。ぜひ使ってください」と書かれていたそうだ。
どうやら、ラブホの利用客から意図的に用意しておいた“スタッフへのサプライズ”だった。オーナーに報告したが、客には返却せず、受け取ることになったという。
「ありがたいことに、私がもらうことになりました。このようなかたちでクリスマスプレゼントをもらえるなんて、テンションは上がりましたよ。でも、よくよく考えると、私生活が充実している知らない人から同情されているような敗北感が……」
一度そう思い込んでしまった鈴木さんは、一気にネガティブな気持ちになったのだとか。
「プレゼントの中身はどう考えてもカップル向けのものばかりです。彼女がいなかった男子学生がもらっても、使い道がないことは言うまでもありません」
ちなみに、もらったプレゼントは卒業後、引っ越しと同時に後輩に譲ったそうだ。
◆先輩スタッフは高校生を見抜くプロ
「スタッフの中でSさんという有名な先輩がいたんです」
Sさんは、“高校生を見抜くプロ”だったという。
風営法により18歳未満はラブホに立ち入り禁止と定められている。鈴木さんたちスタッフは、常にそのルールを厳守する必要があった。そのため、Sさんの役割は非常に重要だったようだ。
「未成年者を見抜く絶対的なスキルとして、Sさんの観察力はすごかったですね」
ある日、鈴木さんはSさんと同じシフトに入ることになった。そしてその日の夜、カジュアルな服装をした若い男女がフロントに現れたという。
「Sさんは2人を見て、“高校生かも”と感じたようで、身分証明書の提示を求めました。すると、不自然な表情を見せながら、ポケットから出したのは高校の生徒手帳だったんです。きっと、“高校生はラブホの利用を禁止されている”ことを知らなかったのでしょう。Sさんは、ていねいに説明して2人は去って行きました」
◆判断するコツは…
Sさんは、鈴木さんたちに高校生を判断するコツを教えてくれたそうだ。
「フロントで周囲を見回したり、緊張していたりしたら怪しい」
「カジュアルすぎる服装や、財布に入っているカード類が少ない」
基本的にスタッフと顔を合わせずにチェックインの手続きをするため、なかなか利用を阻止できないことも事実だと鈴木さんは言う。また、身分証明書を出さない人や、クレームを言う人もいるようだ。
「なので、Sさんのスキルでもっとも見習うべきところは、相手に恐れることなく、正義感を貫き通し、年齢確認をすることですね」
<取材・文/資産もとお>
―[ラブホの珍エピソード]―